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「お約束」な少女漫画  作者: 相田 渚
第二章 動き始めた物語
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約束の証3

大きさを揃えた淡い桃色と白い布を市松に縫い合わせ一枚の長方形の布になったところで、茉莉花は裁縫箱から明るいブラウンの糸を引っ張り出した。


このまま袋の形になるように縫い進めようかと思ったけど、せっかくだから隅に刺繍を入れよう。

本来ならチャコペンできちんと目印を書いてから刺繍けど、宮本茉莉花は器用だし、このままいけるでしょ。


鼻歌を歌ってしまいそうになるのを押さえながら、茉莉花は針を進めていく。

毎朝凝ったお弁当を作る時にも言えることだが、こうしたちまちました作業をしていると茉莉花は心がわくっと動いている。

宮本茉莉花の顔では、表面的に大きく出ることはないが。


部活でも早く裁縫やらないかな。

料理ももちろん楽しいんだけど、毎回それだけっていうのも…。顧問の先生や部長次第だから仕方ないと言えば仕方ないけれど。


ブラウンの糸を使った刺繍部分が終わり、赤い糸を針に通す。

赤い糸を使う部分はほんの少しのため、数十針縫うだけで終わった。


刺繍が完成すると、縫いどまりの部分を除いて、中表にした記事の四辺の端をちくちくと縫っていく。大きい巾着ならミシンが必要だろうが、今回は小さいので手縫いで十分だろう。


生地をひっくり返し、紐口を作った茉莉花は裁縫箱から赤の細いリボンを取り出した。

細いリボンをしゅるしゅると二本紐口に通し、両サイドで二本纏めて結ぶ。


完成だ。


「はい、どうぞ」


小さな巾着袋を速水に手渡す。


白と淡い桃色の市松模様。隅にはブラウンのくまの姿がちょこんと刺繍されている。くまのおなかの部分には赤いローマ字のK。

赤いリボンをきゅっとしぼると巾着の上部がひらひらと花ビラのように集まる。


「…頼んでねぇって」


そう言いながらも、速水は受け取った巾着に指輪を入れ、きゅっとリボンを引っ張った。


口調が荒く、眉間に皺を寄せ、髪は染めていないもののピアスやアクセサリーをしている。

百瀬が来るまでは授業もさぼり気味だったし、今も百瀬以外のことは眼中にない。


それでも彼は頼みもしていない物を受け取り、使用してくれる。

いや、そもそも返事も聞かずに縫い始めた茉莉花のことを、完成するまで待っていた。


入学式や桜の木の下といい、わかりにくい優しさだ。

品行方正になって、しかめっ面をなくして、口調を柔らかくしたらその優しさも伝わりやすいだろうに。


「ついでにそのキーホルダーも一緒によろしくね」

「はぁ?なんで俺が。お前が拾ったんだろ」

「宮本茉莉花よ。私、持ち主知らないもの。速水君さっき知っているような素振りだったじゃない」


持ち主どころか、それにまつわるエピソードだって知っているが、ここは速水に届けてもらうべきだろう。

それにいつまでも百瀬をうじうじと見ている姿が視界に移っているのも気が散る。ただでさえ、その百瀬に観察されているというのに。


茉莉花の言葉に肯定も否定もせず、速水は鞄にキーホルダーを入れた。

その姿を見ながら、ふと彼が百瀬の騒動でざわざわしていたホームルーム前後の教室にいなかったことを思い出した。


「あ、それと授業さぼっちゃだめよ。今日の体育、さぼったでしょう」

「…体育には、いねぇし」

「え?」


ぼそりと呟かれた速水の言葉を聞き返すと、なんでもないと一蹴されてしまった。


いない、というのはまさか百瀬のことだろうか。


…本当に設定からブレない男だ。


体育の時間から放課後までさぼっていた彼は、百瀬が顔面にボールを受けて倒れたことを知らないのだろう。

知っていたら、茉莉花のことを待たずにさっさと帰っていたに違いない。


「…まぁ、体育も他の教科も、単位落とさない程度にほどほどにね」


あんまりにも速水が体育をさぼり続けると、学級委員である王崎や茉莉花に矛先が向きそうである。

漫画でよくある展開だ。


茉莉花の言葉に返事をせず、鞄を掴んだ速水は教室のドアに向かった。


「また明日」


がんばってそのキーホルダーをきっかけに、ヒロインと再会するんだぞ!


茉莉花は速水の背中に向かって念じた。

裁縫部分、例に漏れず適当です。

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