とある世界で少年は友人の身を案じる
――不味いことになった。
浩一は、一瞬前まで幼なじみの立っていた空間を眺め、嘆息した。
ホタルのように見えていた光はもう全て消えている。あれはホタルではない。活性化した魔法力だ。恐らく「向こうの世界」の誰かが、或いは、翔太自身が発動した魔法式に使われたのだ。
しかし、どう考えてもおかしい。浩一は不審に思う。
河原にあった魔法力は微々たる量でしかなかった。だからこそ、あまり警戒していなかったのだ。にも関わらず、その「魔法式」は発動した。間違いない、翔太は「向こうの世界」へ飛ばされたのだ。
「どうしたの? あれ、翔ちゃんは?」
いつまでも二人が来ないのに、不審に思ったのであろう、梨衣子が戻ってくる。
「浩ちゃん……浩一?」
浩一をあだ名ではなく名前で呼ぶ梨衣子。このモードになると一切誤魔化しは効かなくなるんだったな。
さて、この察しのいい幼馴染みにはどう説明しようか。
翔太が異世界に行った、なんて、荒唐無稽な話を。
「ねえ、どうしたの」
「梨衣子。笑わないで、真剣に聞いてくれる?」
緊急事態だ。今の翔太が「向こうの世界」に行ったとして、何ができる?
……無理だろう。おそらく、まともに魔法も使えないに違いない。当然だ。今の今まで、地球で普通に生まれ育ったんだから。魔法や異世界の事は全く知らないままで、今まで生きてきたのだ。
「何?」
浩一はじっと見つめてくる梨衣子の目を真っ直ぐに見返して、言った。
「翔太を助けに行くよ」
梨衣子は案の定、目をパチクリさせる。
「翔太を? え、なんで」
「とりあえず、説明は後でちゃんとするから」
梨衣子の腕を掴む。そのまま歩き出す。
「えっ!? ちょっと浩一、どこに行くの!?」
リーコには悪いがとりあえず場所を変える必要がある。そしてなるべく早く状況を把握し「向こう」へ行って翔太に会わなければ。でなければ、恐らく。
彼が「今の状態」のまま向こうへ行ったのであれば。
そしてそのまま魔法を使えば――もしかすると。
命に関わる状態に陥るかもしれないのだから。




