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Wizard Beat!  作者: Rod
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2/2

銀の城 1モノクロボーイズ-2

 2

 ガキーン!

 耳を突き刺すような鋭い音が宿に響いた。

 毛布から伸びた手が、振り下ろされた鉄パイプをしっかりとつかみ、その塊は打撃を免れていた。不意にがばっと毛布が起き上がり、鉄パイプを放り投げた。

 さして抵抗もしなかった鈴の手の中から、パイプはするりと抜け、宿の壁を直撃する。鈍い音を立てて壁が崩れた。宿屋の主人からまた聞くに堪えない悲鳴があがり、目も当てられないほど顔がゆがむ。

 「Good morning咲紅さん!豊かな生活と爽快な目覚めを提供するウェイクアップデリバリーです!」

 「鈴―!」

咲紅と呼ばれた塊が、怒りのどす黒いオーラをむき出しにして立ち上がった。鈴と同じぐらいの年であろう若い顔立ちで、全身黒い装束だった。頭からつま先まで白で覆われた鈴とは対照的だ。

爽やかな笑顔を崩さない鈴を指差し、咲紅は大声で吼えた。

「どこが豊かな生活だ、どこが爽快な目覚めだよ!鉄パイプでたたき起こされかけることのどこが爽快なのか、全世界の人類が納得するように説明しろ!」

「…いやだなぁ咲紅。頭悪いね。自分で考えなよそれぐらい」

鈴がふいっと視線をそらして言う。

「きちんと目を見て言え!絶対今良いこと思いつかなかったんだろ!面倒くさかったんだろ、考えるの」

「―いやぁ、空が青いな。痛快だな」

「そこまであからさまにはぐらかされると、こっちも痛快なんですけど」

咲紅はあきらめたようにため息をつき、部屋の中を見回した。

「…」

数秒たって、咲紅の顔が大きく歪む。

「…どうなってるんだこれ」

「咲紅が壊した」

「そんなわけあるか!」

即答する鈴に、咲紅が怒鳴る。

「どこの世界に寝たまま扉破壊する奴がいるって言うんだよ。絶対おまえだろうが!」

咲紅は、下を向いて怒りに全身を震わせたまま、宿屋に話しかける。

「で?なんでこいつはこんなにしたんですか。正当な理由でも?」

「…あ、あんたに用が…無理やり、と、突破しようと」

「鈴おまえー!」

宿屋の主人の言いたいことを理解した咲紅の、どす黒いオーラに、さらに深みが増した。目がぎらぎら輝きだす。

「これだけの修理費、どうやって払うつもりだったんだ、おい。よくこんなに遠慮なく壊してくれたな」

「いやぁ、それほどでも」

「ほめてるわけないだろうが!」

咲紅は叫んだ。鈴が面倒くさそうに手をひらひらと振る。

「いいじゃない。少し羽目を外すことなんて誰にでもあるさ」

「おまえの場合、羽目板外したんじゃなくてむしろ壊したからな。羽目板ぶっ壊したからな!」

 鈴は「訳が分からない」と言って、顔をしかめる。

「はいはい、分かったよ。払いますよ、払いますって。―咲紅が!」

「殴るぞおまえ!」

 鈴はお手上げだ、とでもいうように首をすくめた。両手を肩の高さまで上げる大げさなジェスチャー付だ。

「まあ、とにかく、さっさとお金払うとか元通りにするとかしないと。課題の結果報告書、郵送するの間に合わないよ。こっちの世界は、あっちの世界と、いつもより距離が遠いんだ。だから来たんだった、そういえば」

咲紅は、部屋の窓から見える、広場の時計に目をやった。心なしかあせったように言う。

「…金払うっておまえ、所持金あるのか?」

「ない」

けろりと即答する鈴に、咲紅の冷たい視線が突き刺さる。半ばあきらめたように、咲紅が尋ねた。

「…おれが修理するのか」

「当然!」

鈴が空に突き上げたこぶしを開き、いつの間にか握っていたチョークを咲紅に放る。咲紅は、いらだった表情で、仕方なさそうにそれを受け取った。ぼろぼろになった部屋の床に、おもむろに線を書いていく。

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