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転生ストライカー 氏真 ~The Renaissance striker Uzizane~  作者: みなも
第1章 目覚め ~県予選編~

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第9話【蹂躙のトライアングル】

【あらすじ】

地獄の三保合宿を越え、規格外の大型GK・八重洲ジョンという新たな「門番」を手に入れた新生インパルス清水FC・ジュニア。彼らは、早川家が主催する招待制大会「ミツウロコ・エリート・カップ」の開幕戦に臨む。対戦相手は、関東の雄にして「堅守速攻」の代名詞・鹿島アテナFCジュニア。ジョンの圧倒的なロングフィード、基哉の冷徹な戦術眼、そして極限の体幹を手に入れた氏真の「雅」が交差する時、ピッチを蹂躙する新たな戦術「三連星トライアングル」が火を噴く。


1. 激突! ミツウロコ・エリート・カップ

三保での過酷な合宿から一ヶ月。


インパルス清水FC・ジュニアは、早川家がメーンスポンサーを務める招待制の全国規模大会「ミツウロコ・エリート・カップ」の開幕戦に出場していた。大会レギュレーションは前後半各20分、8人制、交代自由という小学生の公式戦基準だ。


対戦相手は、関東の雄にして「堅守速攻」の代名詞、鹿島アテナFCジュニア。九歳ながら、大人顔負けの激しい球際デュエルと、規律あるディフェンスラインを誇る難敵である。


「……ほう。鹿島の童たち、その佇まいに微塵の隙もなし。さながら、東国を鎮める精鋭、鬼佐竹の軍勢を彷彿とさせるではないか。叔父さん、彼らの『気』はとても重く、そして硬いね」


九歳の吉良氏真は、ピッチ中央で優雅に肩を回した。


合宿で鍛え抜いた「超絶体幹」と「柔軟性」は、彼の立ち居振る舞いをさらに浮世離れさせたものにしていた。ただ立っているだけで、風が氏真を避けて流れるような、不思議な存在感。


吉良コーチは、ベンチ前で腕を組み、選手たちに鋭い声を飛ばす。


「いいか! 鹿島の守備は固いぞ。安易な横パスは即座に刈り取られると思え。フォーメーションは【3-3-1】。ジョン、お前のキックが今日の生命線だ。基哉、セカンドボールの回収を頼むぞ。氏真、焦らずに『その時』を待て!」


「了解だよ、叔父さん!」


アンカーの松平基哉が、不敵な笑みを浮かべる。その背後、インパルスのゴールマウスには、蒼い眼の巨神・八重洲ジョンが仁王立ちしていた。


2. 蒼い門番の「大筒」

ピーッ! 前半開始のホイッスル。


試合開始早々、鹿島は得意の「堅守速攻」を仕掛けてきた。インパルスのパスミスを突いてサイドを切り裂き、鋭いクロスが中央へ。鹿島の屈強なフォワードが、ドンピシャのタイミングで強烈なヘディングシュートを放つ。


誰もが一点を覚悟したその瞬間――。


バシォォォン!


空気を切り裂くような破裂音が響いた。ジョンが片手でボールを叩き落としたのだ。しかも、ただ止めるのではない。その160センチを超える巨体からは想像もつかないしなやかさで、落ちたボールを即座に拾い上げる。


「……ヘッ。蚊が止まったかと思ったぜ。……おい、雅野郎! 飛ぶ準備はできてるか!」


ジョンが右足を大きく振り抜く。


それはただのパントキックではない。地を這う大筒の砲弾、あるいは雷撃。ボールは低い弾道のまま、鹿島のミッドフィールドを瞬時に飛び越し、ハーフウェイライン付近にいる基哉の元へ一直線に伸びる。あまりのスピードに、鹿島の前線はプレスバックすらできない。


>> 連携戦術発動:【三連星の胎動トライアングル・ゲート

○ 発動条件: ジョンのキャッチングから3秒以内の高速フィード。

○ 効果: 攻撃の初動速度が 200% 上昇。相手守備陣のトランジション(攻守の切り替え)を無力化する。


「……受け取ったぞ。……さあ、戦場のタクトを振るわせてもらおう」


基哉は、その凄まじい威力のボールを、右足のインサイドで完全に勢いを殺し、「ピタリ」と足元に収めた。合宿で氏真と共に励んだ地獄の柔軟トレーニングが、基哉のトラップ技術をも異次元のものに昇華させていた。


3. 忍耐の演出家レジスタ、雅の舞

基哉にボールが渡った瞬間、鹿島の守備陣が慌ててプレスに寄る。だが、基哉は一歩も動かない。首を振る動作ルックアップすら最小限に、彼は氏真の「気」が最も高まる位置を、前世の軍略家としての直感と、緻密な戦術眼で感じ取っていた。


「舞、データ確認は?」


ベンチ裏では、舞がタブレットを高速でスワイプしている。


「了解! ウジ様の現在の心拍数、最適化完了! 相手のディフェンスラインのギャップ、右ハーフスペースに3メートルの空き! パスコースの成功確率、99.8%!」


愛は静かに扇子を開き、微笑んだ。


「氏真様。……今ですわ。空に、美しき虹をお架けなさい」


基哉の右足から放たれたボール。それは、ジョンの直線的なキックとは対照的な、高く、ゆっくりとした優しい放物線を描き、鹿島のディフェンスラインの背後へ落ちる。


そこには、鹿島のセンターバック二人にマークされながらも、ふわりと抜け出した氏真がいた。


「……ふむ。囲い込まれておるな。……だが、地上に道がないのなら、空を飛べば良いだけの話よ」


4. 必殺戦術:【フェニックス・ドライブ】

氏真は、ボールの落下地点に入ろうとするディフェンダーに対し、体をぶつけるのではなく、極めて滑らかなステップで「間合い」を外した。そして、合宿で極めた【超絶体幹】を爆発させ、しなやかなバネのように跳躍した。


「なっ……何だあの跳躍力は!? まるで重力がないみたいだぞ!」


鹿島の選手たちが驚愕する中、氏真は最高到達点で基哉のパスを迎え入れた。


>> 究極スキル発動:【極・雅技:鳳凰の羽休め(ほうおうのはねやすめ)】

○ 効果: 空中でのボールコントロールを完全に掌握。着地まで敵の干渉を一切受け付けない絶対的空間を作り出す。


空中でボールが氏真の足の甲に柔らかく吸い付く。氏は着地するまでの短い滞空時間の中で、ゴールマウスの位置とキーパーの重心を冷静に【スキャニング】した。


「……キーパーくん。鞠は、右上の角に棲みたいと言っておるよ」


着地と同時。氏はボールを地面に落とさず、身体を鋭く捻りながら極限の柔軟性を活かしたダイレクトボレーを放った。


ジョンからの超長距離フィード、基哉の経由、そして氏真の空中トラップからの一撃。ピッチを縦に一瞬で貫く、息の合った超高速カウンター。


【新生インパルス必殺奥義:フェニックス・ドライブ】


ゴォォォォォル!!


ボールは鹿島キーパーの指先をかすめることすら許さず、ゴール右上の隅、ポストの内側を綺麗に叩いてネットを揺らした。前半10分、清水先制。


5. 蹂躙の始まりと、新たな標的

静まり返るスタジアム。そして、その直後に沸き起こる、ジュニア世代の試合とは思えないほどの狂騒。


「……見たか、基哉。俺のフィード、悪くなかっただろ?」


「……フン、60点だな。僕のパスが完璧だったから決まったようなものだ」


ジョンと基哉が、不敵な笑みを交わして拳を合わせる。


「あはは! 二人ともありがとう。……ねえ、これだよ。予が求めていたのは、この『調和』なんだ」


氏真はオレンジ色のユニフォームを揺らしながら、二人のもとへ駆け寄った。雅な天才、冷徹な策士、そして蒼い眼の巨神。この「三連星トライアングル」が揃った瞬間、インパルス・ジュニアはもはや単なる地域クラブではなく、ピッチを蹂躙する「鳳凰の軍勢」へと変貌を遂げたのだ。


交代自由のルールを活かし、吉良コーチが絶妙なタイミングでフレッシュな選手を送り込み、鹿島の体力を削っていく。「よし! 前線のプレスを緩めるな! 鹿島の速攻を根元から絶て!」と的確なコーチングが飛ぶ。


その後も清水の勢いは止まらなかった。後半12分、再びジョンからのフィードを受けた氏真が、今度は鮮やかなダブルタッチでキーパーを抜き去り、無人のゴールへ2点目を流し込む。


さらに後半終了間際。氏真がペナルティエリア内でディフェンダー3人を引きつけ、ヒールで絶妙なバックパス。そこに走り込んでいた基哉が、冷静にゴール左下へとグラウンダーのシュートを突き刺し、3点目を奪取した。


ピーッ、ピピッ、ピーーーッ!!


3 - 0。インパルス清水FC・ジュニアの圧勝である。


ベンチでは、愛と舞が満足げに頷いていた。彼女たちの目的はただの大会優勝ではない。氏真を世界一のストライカーへ導くための、壮大な「裏ミッション」は順調に進行していた。


「……素晴らしいですわ。ですが、これでもまだ完成ではありません。……舞、例の件は?」


「順調だよ、ねーさま。この調子で勝ち進めば、最高のデータが取れるはず」


氏真は、歓喜に沸くチームメイトの中心で、大きく深呼吸をした。駿河の海から吹く風が心地よい。


「……さあ、みんな! 次の『天下』を獲りに行こう!」


氏真の明るい声が、スタジアムの空に響き渡る。敗北を糧に、最強の牙を手に入れた鳳凰の進撃。「三連星」による蹂躙劇は、まだ始まったばかりだった。


【次回予告】

圧倒的な力で初戦を突破したインパルス清水FC・ジュニア。続く準々決勝の相手は、神奈川の強豪「FC横浜リヴァイア・ジュニア」! 海の覇者を名乗る彼らの堅牢なディフェンスラインに対し、氏真の「雅」は通用するのか!?

第10話:【蒼海の防壁と、鳳凰の閃き】。次なる天下へのパスを回せ!


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