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【書き出しコンテスト受賞作/未書籍化】色彩能力者の錬金術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第3章 千面道化襲来

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第94話 闇の住人

 本校舎第二倉庫。

 その裏で、ロアは待ち人を待っていた。

 一方、俺とアランはロアの目を盗んで倉庫の中に侵入。錬金術に使う器具を重ね、それを足場に高い所にある窓からロアの様子を覗き見ていた。


「よしよし、ここからなら良く見えるぞ」


 と俺が言うと、


「ほう。これは絶好の覗き場だな」

「のわっ!?」


 横からアラン以外の声が聞こえ、俺はつい叫び声を上げる。それに反応してロアが窓を見上げる素振りをしたので、俺は一旦頭を引っ込めた。


 横を見ると、いつの間にかアランじゃない眼鏡――ベルモンドとそばかすの好青年フォックスがいた。ロアの幼馴染2人だ。


「ベルモンド、フォックス。お前らいつの間に……」

「こんなビックイベントを逃すわけが無かろう」


 カチャ。とベルモンドは眼鏡を掛け直す。

 ベルモンドという男を一言で言い表すなら『変態』だ。コイツにそれ以上の説明はいらない。


「まさかあのロアに告白するような奴がいるとはね」


 フォックスは「くくっ!」と笑う。

 フォックスは明るくて、いつも飄々としている。なんというか、自然体な奴だ。


「どこで嗅ぎつけたの?」

「さっきの貴様らとロアの会話を盗み聞きさせてもらった」

「まったく水臭いよなロアも。幼馴染の俺達じゃなくてそちらさんに相談するなんてさ」

「我らが親友の恋路を茶化すものか」


 にひひ。とフォックスとベルモンドは笑い声を重ねる。……そういうとこだぞ。


「さてはて、ロアに告白する物好きの顔を見ようか」

「楽しみだなぁ」

「お前らいいのか? 幼馴染にボーイフレンドができても。特にベルモンド。ロアはお前の大好きな美少女じゃないか」

「む? アイツが美少女……? 目が腐っているのではないか?」

「美少女ではないよな。胸がデカいだけ」


 俺とアランは目を合わせる。


「……俺がおかしいのか? ロアって、普通に整った顔してるよな?」

「……うん。やっぱりアレじゃない。幼馴染は盲目ってやつ?」

「……そんなことわざないだろ」

「俺の今のイチオシはヴィクトリア先生だ。あとフラムとヴィヴィだな」

「ウチのファクトリーの奴ばっかりじゃねぇか」

「スプーシーも悪くない……あわよくば全員と付き合いたい」

「悪いなお二人さん。俺の親友、マジで気持ち悪いんだ」

「いいよもう。慣れてきた」


 俺達は全員で倉庫裏を覗く。

 待ち合わせ時間が近づいてくる。


「……来たぞ」


 倉庫裏に新たな人影が現れた。


「え……」


 現れた人物を見て、ロアとこの場に居る全員が驚いた。


「すまない。待たせたかな」


 現れたのは――ヴィヴィだ。


「ぐはっ!」


 ベルモンドが鼻血を吹いて後ろに倒れた。ベルモンドは高台から床へと落下する。


「ベルモンドーーーっ!!」


 フォックスは高台を降り、ベルモンドを腕に抱く。


「……よ、予想外だった……まさか相手がヴィヴィだったとは……なにか、いけない扉が……俺の中で開いてしまったようだ……女子同士の恋……至極よろし」

「死ぬなベルモンド! ベルモンドーーーーーっ!!!」


 後ろのアホ二人はさておき、俺とアランはヴィヴィとロアの会話に集中する。

 微かに開いた窓の隙間から、声が聞こえる。


「え、えぇ!? ヴィヴィヴィヴィ、ヴィヴィちゃん!? あ、えっと……」

「? どうしたんだい? 目が泳いでいるよ」

「いやぁ、そのぉ……ヴィヴィちゃんかぁ。えっと、どうしよう……ヴィヴィちゃんなら、あ、アリか……?」


 ヴィヴィがロアに恋愛感情? 

 ……ありえないな。そもそもアイツに恋は似合わない。


「これ」


 ヴィヴィはポケットからヘアピンを出し、ロアに渡す。

 羽を模した白いヘアピンだ。ヴィヴィはヘアピンを渡した後、前髪を触り出した。


「え……? なんで、ヘアピン?」

「ほら、君……この前誕生日だったそうじゃないか」

「う、うん。2日前ね」


 そういえば一部の女子に誕生日プレゼントを貰っていたな。

 ところで、今の話を聞いてなぜかベルモンドとフォックスが汗をダラダラと流し始めたのだが。


「お前らまさか……」

「わ、忘れていたぁ!」

「最近、ロアが俺達に冷たいのはそういう理由だったのかぁ!」

「そりゃ、君達に恋愛相談なんてしないよね。幼馴染で親友の誕生日を忘れるとか、最低だ」


 ロアはヴィヴィのプレゼントに喜び、満面の笑みを浮かべる。


「友達の誕生日にはプレゼントを渡すと聞いていたのでね」

「ありがとヴィヴィちゃん! 嬉しい、ほんっとうに嬉しい! どこかの誰かさん達はすっかり忘れてたのに!」

「「ぐはっ!!」」


 お前らは反省しろよ。


「あれ? もしかしてここに呼んだのって、誕生プレゼントを渡すためだけ?」

「そうだよ」

「プレゼントなら教室で渡してくれればよかったのに~」

「そ、それは……」


 ヴィヴィはブドウ糖スティックを咥え、ロアから目を逸らした。


「友達にプレゼントを渡すというのが初めてで……みんなの前で渡すのは気恥ずかしかった。だから、わざわざ呼び出した。申し訳ない」

「いいよ……いいんだよヴィヴィちゃん!」


 ロアはヴィヴィに抱き着き、頬ずりする。


「結婚しようヴィヴィちゃん! 一生幸せにするよーっ!」

「それは断る」


 ロアは早速ヘアピンを付け、ヴィヴィと談笑しながらその場を去った。


「アラン、今日見たことは忘れような。この現場を見ていたことがヴィヴィに知れたら、嫌味ラッシュを喰らうぞ」

「あはは。そうだね」

「さてベルモンド君。我々には急務ができたわけだが」

「ロアの誕生日プレゼントだな。アイツは単純だからな。そこらの花でも摘んで束ねれば満足するだろう」

「いいや、アイツは花より肉だ。そこらの獣を狩って解体してやれば満足するさ」

「一応忠告してやるが、ちゃんとしっかり考えた方がいいぞお前ら」


 肩透かしの内容だったけど別にいいか。ヴィヴィの意外な一面が見られたしな。

 俺とアランはファクトリーハウスに戻る。


「なにしてんのよアンタら……!」


 店の前に、阿修羅が立っていた。


「アンタらね……ただでさえ売り上げが下がっているってのに……!」


 ルチアだ。 ぶちぎれているルチアだ。

 その後、1時間の正座を強いられた俺達だった。



 ---



 深い深い地下深く。

 そこに魔物達が住む都市があった。

 地下都市『ダストフォール』。

 メドゥーサ、ドラゴンといった怪物が混在する。

 都市の中心にある城『ティアバンク』の謁見の間にて、仮面の男が玉座に座っていた。


 謁見の間に、1人の男が入ってくる。温和そうな20歳ほどの男だ。


「ファウスト卿。ただいま戻りました」

「来たか。千面道化(せんめんどうけ)よ」


 千面道化と呼ばれた男は1人の男を抱えている。

 口と手足を縛られたその男はランティス錬金学校の教員の1人――ウツロギ=グリーンペイ。イロハが所属するジャック組の植物錬金学担当の教師である。


「その者は誰だ?」

「植物錬金学の担当教員です。ランティス郊外で植物採取をしているところを見つけたので、サクッと攫ってきました」

「ふむ、その者の面を借りるのか」

「はい」


 千面道化は右手に描いた合成陣をウツロギの顔に当てる。瞬間、白い炎がウツロギと千面道化を燃やしだした。


「んーっ! んーっ!?」


 ウツロギは取り乱すが、右手からは逃れられない。


「心配はいりませんよ、ウツロギさん。僕とあなたはこれから溶け合うです。溶けて解けて融けて……一緒になるんですよ。悲しいことじゃありません。あなたは僕の(はら)で生き続ける」


 千面道化とウツロギは白い焔と化し、混ざり合う。

 白い炎は結集し――ウツロギの肉体となった。


「ふーっ。この人の体重いですねー。運動不足だなぁ」


 肉体はウツロギだ。だが、中身は違う。


融合錬成(ゆうごうれんせい)。合成陣で触れた相手の体と(みずか)らの体を分解し、自分の肉体と相手の肉体を練り合わせ、再構築する必殺の錬金術……これほど複雑な錬金術を一瞬で成すとは、さすがは我が四大傑作(しだいけっさく)の1人だな」

「今さら褒められてもうれしくないですよ」

「その姿ならば、ランティスに忍び込めるだろう」

「ええ。僕の変装がバレたことはありません。というか、変装と言うより変身? 変体? 合体? まぁなんでもいいか」

「では頼んだぞ、千面道化よ。来たる混沌のために……」

「わかってますよ。姫様に会うのは久しぶりだ。楽しみだなぁ」

「くれぐれも油断はするな。ランティスは才能の宝庫、お前の正体を見破れる者も居るかもしれない」

「だから大丈夫ですって。この体はウツロギそのものですから。それに記憶中枢も取り込んでいるので、この男の記憶もちゃんとあります。演技も完璧にこなせますよ」

「ふっ、そうだったな」


 ウツロギの器を得た千面道化は部屋を出て行く。

 1人部屋に残された仮面の男は窓から空を見上げる。


 地下都市ダストフォールの天井には鎖に繋がれた紫の太陽がある。太陽から(はっ)せられる紫の光がダストフォールを照らしている。


 ファウストは太陽を見上げ、口角を上げる。


「ヴィヴィ……お前ならば必ず、彼女の器になれる」


 ファウストは卵に手を伸ばす。


「また君と夢を交わそう……ニコラス」

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