第91話 群青
ゴシックパーティの後日。
俺は寝不足の頭を振りつつ、ある女子生徒の家の前に立っていた。手には紙袋を持って。
「は? アンタなにしてるの?」
待ち人来たり。
「お前に渡したい物があってな。学校で渡すのは躊躇われるし」
俺は金髪の女子生徒、ルチアに紙袋を見せる。
「ほら。持ってけ」
「何よコレ」
ルチアは紙袋を受け取り、中を見る。
「!?」
ルチアは中に入ってる物を見て驚いたのか、焦点が定まらない様子。
「アンタ、これ……」
「いや、余計なお世話だってわかってるんだけどな」
俺がルチアに渡した物、それは、群青のドレスだ。
「昨日お前から貰ったドレスを、虹の筆で塗色した。細かい作業が必要で結構大変だったぞ。徹夜でやる羽目に……」
ルチアは、紙袋で顔を隠した。
「……アンタ、ホントに変よ……! なんで、なんでこんなことできるの……!」
声が震えている。怒っているのかな……。
「か、からかっているわけじゃないんだ。気に障ったなら謝る。けどさ、お前には……きっと、青いドレスも似合うと思ったから……色彩能力者の勘ってやつだ」
ポタポタと、ルチアの足下に水滴が落ちる。俺はそれを見て見ぬふりし、目を逸らした。
「…………ありがとう」
絞り出すような声で、ルチアはそう言った。
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昼休みになって、俺達オーロラファクトリーはルチアの指示の下、前に俺とルチアが焼き芋を食べたあの廃校舎の裏に集まっていた。
ルチア手製の焼き芋を食べるためである。
「できたわよ」
ルチアは焼き芋を掘り起こし、皆に配っていく。
「驚いたね。ルチアにこんな特技があったとは」
焼き芋を食べたアランは飾り気ない称賛を口にした。
「焼き芋づくりに関しては誰にも負けないわよ」
ヴィヴィは焼き芋の熱さに苦戦しながらも、焼き芋を齧る。ヴィヴィは笑みを零した。
「……甘い。美味しい……」
ヴィヴィの感想を聞いて嬉しかったのか、ルチアの頬が赤くなる。
「ふん! 当然よ」
1番美味しそうに焼き芋を頬張ったのはフラムだ。フラムはリスのように頬袋をいっぱいにさせている。
「やっぱり、ルチアさんの焼き芋はつよつよです……!」
最後にルチアは俺にトングで挟んだ焼き芋を差し出してきた。
今朝のことがあって恥ずかしいのか、俺と目を合わせない。
「ん」
「サンキュ」
俺は焼き芋を受け取る。あまりの熱さに両手でキャッチボールさせ、息で冷ました後で焼き芋を割る。
湯気が立ち昇るホクホクの実。俺は湯気ごと芋にかじりつく。口に広がる自然な甘味に、思わず頬が緩む。
「……」
ルチアはちらりちらりと俺の様子を伺っている。
「美味いな。コレ、店で出しても売れるんじゃないか」
俺が言うと、ルチアは俺から顔を背けた。
ヴィヴィは指を鳴らし、
「いいかもね。焼き芋の香りで客を釣るというのはアリだ」
「でもルチアさん以外作れませんよ。こんな美味しい焼き芋」
べた褒めする団員。
こんな時、ルチアなら胸を張って威張りそうなものだが、今日のルチアは静かだった。背中を丸め、俯いて芋を食べている。
下から顔を覗いてみると、ルチアは芋を口に含みながら、笑みが堪えられない様子だった。
俺は少し寒い空を見上げ、芋を齧る。
「美味い」
心の底からそう口にした。
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