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【書き出しコンテスト受賞作/未書籍化】色彩能力者の錬金術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第2章 クラスリーダー総選挙

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第74話 救いの糸

「ニコラス……!? ……あのニコラス=フラメルですか……!?」


 ニコラス=フラメル。伝説の錬金術師と呼ばれている存在。

 なんだってルチアの体にニコラスが入っているのかはわからない。問題は……どうもコイツが善人には思えないことだ。


「アンタが入っているその体、俺の友達なんだ。解放してやってくれないか」

「ならぬな。特になんの素養も感じないが、精神の波長は合う。大切な私の依り代だ。もっとも、貴様の体を寄越すというなら話は別だ。貴様も、隣の娘も面白いモノを持っている。特に娘の方……貴様のマナがあれば、無知無能なる現界の人間も一掃できよう」


 相手は手ぶら。俺とフラムは武器を持ってる。これならやれる。


「フラム! 俺が前に出る。援護頼むぞ!」

「はい!」


 俺はクリスタルエッジを握って前へ。

 加減しつつ剣を振るう。ルチア……否、ニコラスは一歩下がって回避する。


「凄い錬金術師だがなんだか知らないが、陣も窯も無しじゃ何もできないだろ」

「ほう。どうやら私が居ない間に錬金術はかなり退化したようだな」


 ニコラスは指を鳴らす。すると、ニコラスのすぐそばに合成陣が出来上がった。

 宙に、光の線で出来た合成陣が浮かんでいる。あの光は……、


「マナか!?」

「ほれ、陣が出来たぞ? これでなんでもできるな」


 合成陣が白く燃える。同時に、この地下空間全体の大気があの合成陣に引き寄せられる。


「……マナスティックを使わないで合成陣を起動させた……!? めちゃくちゃだなオイ!」

「で、ですが、いくら合成陣を起動させた所で、素材が無ければなにも――」

「愚かだな。風、炎、水。これらは大気中の物質を使い合成することが可能だ。見せてやる……これが、愚者共が『魔法』と見違え、恐れた技術だ!!! ――風錬成【フーパ】!!!」


 車にでも撥ねられたと、錯覚するほどの衝撃が走った。

 ルチアから急速に遠ざかり、気付いた時には壁に叩きつけられていた。


「うっ――がぁ!?」


 背中が灼けるように痛い……!


「あ、ありえねぇ……オードリー先生のフーパとは、段違いの威力だ……」


 地面に落ちる。全身がビリビリする。手に持っていたクリスタルエッジを、手から滑り落とす。

 歯を食いしばり、片膝をついて体を起こす。


「はぁ……! はぁ……! フラムは――」


 フラムは地に伏したままだ。俺は慌てて近寄り、脈と呼吸を確認する。


「呼吸はしてる……脈もある」


 気絶しているだけだ。

 やばい……やばいやばいやばい!!! 逃げようにも、上に帰るには10m超の穴を上がらないとダメだ。凹凸の無い壁を、10mも登るなんて――


「おーい。イロハくんやーい。そこにいるのかい?」


 穴の先からヴィヴィの声が響いてきた。


「最高だお前……!」


 あまりの嬉しさに叫びそうになった。

 まさに、この絶望的状況に垂らされた1本の糸。

 俺は穴の下に行く。上を覗くと、こっちを見下ろすヴィヴィとアランの姿があった。


「ヴィヴィ! 緊急事態だ! ルチアがニコラスに乗っ取られて俺達を殺しにかかってる!」

「なんだってぇ!? ……って、そんなこと信じられるか!」

「信じなくていい! いいから! ロープを錬成してこっちに垂らしてくれ! アラン! お前はこっちに――」


 人影が黒いモヤも使わず、壁を蹴り飛ばしながら加速して俺の傍に着地した。


「やぁ。どうしたんだいイロハ君」

「お前は本当に人間か……」


 両腕義手の眼鏡男、アラン。

 アランは正面に立っているルチアを見ると、静かに頬に汗を這わせた。


「アレは……ルチアさんじゃないね」

「わかるか」

「うん。佇まいが違う」

「クックック……次から次へと良い素材が降って湧いてくるものだ。どれにするか悩むなぁ」


 舌で唇をなぞり、品定めするニコラス。

 俺はフラムの方を指さす。


「フラムは攻撃を喰らって気絶してる。フラムを回収して脱出するぞ」

「敵の武器は?」

「アイツは突風を巻き起こす。発動までの時間は約6秒」

「OK。6秒以上隙を与えなければいいんだね」


 アランは前方へダッシュする。ニコラスは合成陣を宙に描くも、アランの接近を受けて合成陣を消し、アランと格闘戦を繰り広げる。


「ほう。やるな」

「……腕力はルチア君基準なんだね」


 体力はルチアと同じ。それでも、アランと互角に渡り合っている。

 ルチアのあの細い体でアランと互角なんだ。体術も相当だな。

 俺はアランがニコラスを引き付けている内にフラムを回収し、背負う。


 上の穴からロープが垂らされる。


「イロハ君! アラン君! ロープにつかまれ!」

「アラン!!」


 アランは、ニコラスに右腕を掴まれていた。


「いいドライブモデルだ。だが」


 ニコラスはアランの右腕にマナの合成陣を刻み、合成術を発動する。

 アランの右腕が、錆びていく。


「空気中の水分と酸素を合成してやれば、金属などいくらでも崩せる」

「そうかい。ならくれてやる」


 アランは右腕を射出した。


「なんだと……!?」


 初めて動揺を見せるニコラス。ニコラスは射出された義手に腹を殴られ、吹っ飛んだ。アランはその隙にこっちにくる。


 俺とアランはロープを掴む。


「ヴィヴィ! OKだ!」


 ロープが自動で上がっていく。

 ようやく地下から地上へ。元の教室に戻ってこられた。ヴィヴィは合成で作ったであろうロープの巻き取り機の傍にいた。レバーは人力で回したのだろう、ヴィヴィは疲労困憊だ。


「話は後だ。ここを出るぞ」

「わかっているが……やれやれ、少しは休ませてほしいものだ」


 突風が穴から噴き出してくる。その風に乗って、ニコラスは現れた。


「ルチア君……か?」

「アラン! フラムとヴィヴィを頼む!」


 俺はフラムをアランに渡し、ニコラスにタックルした。

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