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【書き出しコンテスト受賞作/未書籍化】色彩能力者の錬金術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第2章 クラスリーダー総選挙

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第52話 三つ子当てゲーム

 三つ子、ダイスリー三姉妹は結んだ髪を解き、服装を合わせていく。


「ゲームの詳細を教えてもらってもいいかな?」

「簡単だよ。イチたち3人が教室に入って出てくる。あなたたちはそれぞれ誰が誰だか当てるだけ! チャンスは3回!」


 ヴィヴィは得意げに笑う。


「いいだろう。面白そうだ」


 ヴィヴィは優れた嗅覚を持つ。すでに3人それぞれの匂いを覚えたのだろう。自信がありそうだ。

 見た目で見分けるのは常人には不可能だろう。髪型を揃えてしまえばもう見分けがつかない。まるでクローンのようだ。しかし、


「ルチアは3回中1回見抜いたから、ヴィヴィたちは2回見抜けたら勝ちね!」


 きっと、ルチアが見切った1回は運だろうな。


「ルチア君と同じで、1回しか見抜けなかった場合は?」

「それは先着優先ってことで、ルチアの勝ち!」


 イチ以外の2人もそれで異論ないらしく、イチの言う通りに教室に入っていく。


「いけそうかヴィヴィ」

「ああ。彼女たちの匂いは覚えた」


 教室から3姉妹が姿を現す。

 3姉妹は喋らず、ジッと待つ。表情、立ち姿、全て一致している。


「僕にさっぱりだ」

「ジブンも全然です……」


 アランとフラムは早々にリタイア宣言。

 一方、ヴィヴィは、


「やってくれたね……」


 ヴィヴィは苦い顔をしている。


「どうした?」

「服の匂い、つけていた香水の香り、それらが全て変化している。恐らく、服を交換し、さらに多種類の香水を振りかけたんだ。覚えていた匂いが一切消えている」

「無理そうか?」

「……アタリはついているが、確率は80%ほどだ」

「十分だ――と言いたいが、生憎俺は100%なんで俺に出張らせてもらうぜ」


 俺は左から順に指をさしていく。


「左から順にツヴァイ、トロワ、イチ。だろ」


 俺が言い当てると、3人それぞれ驚いた顔をする。


「すっごーい! どうしてわかったの!?」

「色が違う。目の色はともかく、髪や肌の色は同じ遺伝子でも生活習慣で差は出る。例えばイチは他の2人より外で行動することが多いのか、肌の色が少しだけ茶に近い。トロワは他2人より髪に気を使っているのか、髪の色が鮮やかだ。ツヴァイは唇のツヤが2人よりある。リップクリームでも塗ってるんだろう」


 イチは自身の頬を引っ張り、ツヴァイは口元を隠し、トロワは髪の毛を指で触る。

 今挙げたのは一部の例であり、他にも3人で色の違う点は多い。だがそのどれも、常人には見分けられないほどの僅かな違い。色彩能力者の俺だから見分けられること。


 これらの全ての色を揃えるのは俺のような色彩能力者が虹の筆でも使って全身を塗りたくらないと無理だな。


「イロハ君……ちょっときもいよ」

「ファクトリーのために働いている団員に吐くセリフかそれ」

「1度じゃまだ信じられないよ。ねぇ? お姉ちゃん」

「そだね~。ルチアも一回は当たったしねぇ~」

「……」

「3度だろうが100度だろうが当ててやるよ」


 俺が挑発すると、3姉妹は教室に入る。

 そしてまた出てきて、俺に見事言い当てられる。この時点でルチアには勝利したが、それからもう3回姉妹当てゲームに付き合った。無論、全て正解を言い当てた。


「完敗だよ!」


 別にお前らと勝負をしていたつもりはないんだが。

 イチはグイグイ俺に近づき、その小さく突っ張った胸を腹に当ててくる。後ろへ引こうとしたら今度はトロワの胸に阻まれ、サンドされた。身動きの取れなくなった俺の服の裾をツヴァイが引っ張ってくる。


「にゃはは! イロハおもしろーい!! こんな完璧に見分けられた人はじめて!」

「ほんと君おもしろいにゃ~。ねぇねぇ、うちで一緒に寝ない~? 気持ちいい布団があるんだけどさぁ~」

「……」

「ちょ、おい。囲むなって……」


 突然の包囲網。周囲の男子からは嫉妬の目線を向けられ、女子からは女を侍らせる悪鬼として睨まれる。


「お、おい! 抱き着くな引っ張るな押し付けるな!!」


 早くこの状況を脱したいが、下手に女子の体を触るのもアレだし。どうしたものかとヴィヴィに視線を送る。

 ヴィヴィは「やれやれ」と肩を竦め、アランとフラムを連れて先に行ってしまった。


「お幸せにどうぞ」

「そりゃないだろ! 団長!! おーい!」


 それからしばらく俺は三姉妹の相手を余儀なくされた。



 --- 



 夕方になって、3姉妹から解放された俺は家に帰る前にヴィヴィの家に寄った。


「君のような色猿を中に入れるのは不安なのだが……」

「モナリザ以外に興味はねぇ!」


 念押しで言うと入れてくれた。

 リビングで待っているとヴィヴィは紅茶を淹れて持ってきてくれたが、一口飲んでその甘さに思わず吹き出しそうになった。コイツ、どんだけ砂糖入れたんだよ。もう紅茶の味しないよ。


 紅茶はさておき、情報交換を始める。


 ヴィヴィはあの後もルチア派ではないとされるクラスメイトに接触し続けたらしい。それぞれの所属ファクトリーや家まで訪ねたそうだ。その結果、勧誘に成功したのは2人。俺たちオーロラファクトリー、そしてあの3姉妹にロア・フォックス・ベルモンドを合わせてヴィヴィ派12人になる。


「随分と上手くいったな」


 ヴィヴィは涼しい顔で甘々の紅茶を飲む。


「今日1日で8人を引き込めたわけだからね。上々さ」

「これでヴィヴィ派は12人、そんでルチア派は11人。こっちが優勢だな」

「いいや、実は接触した中で2人ルチア君に投票を確約していた人物がいたんだ。ルチア君の得た票は13人、ってことになるね」

「白紙の票は5票か。その内の1つはシオンだろ。残りの4票は?」

「1票は不登校のユニ=ニュール。彼女に関しては入学式の日以来学校に来ておらず、ずっと家に引きこもっていて訪ねても無反応だった。残念ながら無効票になるのはほぼ確定だ」


 となると。

 現状 ヴィヴィ12票 ルチア13票 無効票2 無所属3――となるな。


「残りの3票、これが勝負の鍵になる。彼らに接触した時のことを話すよ」


 ヴィヴィは俺がいない場所での出来事、曲者3人と接触した時のことを語り出す。

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