奇妙な魔物
キノコの回収に時間がかかってしまった。目標の20個を取り終えた頃には、すっかり日が傾き遥か彼方の空が黒で覆われていた。
もう間もなく、こちらにも夜の闇が降りてしまう。辺りが暗くなれば、山を下りることも困難になる他、山に住む魔物の絶好の的となってしまう。
この一帯の魔物は夜行性が多く、夜になると一斉に動き出す。ただでさえ危険であるというのに、視界が不自由な中で魔物に遭遇するなど、危険であることは言うまでもない。
カルルは、クエストの報酬を抱えている仲間の魔物を一瞥すると、付いてこいと命令した。
早足で山を降りるカルル。途中で、苔の生えた岩に足を滑らせそうになりながらも懸命に足を進めた。
周囲からは、野生の魔物の唸り声や、バサバサという鳥の羽ばたきも聞こえてくる。小さな獣が横切り驚いたりもしたが、それでも足を止めるわけにはいかない。
途端、カルルの体が宙に浮いた。両足を後方に振り上げ、そのまま腹這いになるように地面に激突した。
何者かに足を払われたのだ。突然のことで、受け身さえ取れなかった。
痛む体に顔をしかめつつ、両腕を曲げて体を起こしながら後方を見る。
そこには、野生の魔物がいた。ぼんやりとだが姿は確認できる。黄色く巨大な1つ目をギラギラと輝かせている魔物だった。大人の顔程もある大きな目玉を浮かせており、下方には長細いムチのようなものを、1本だけダラリと下げていた。
「なんだコイツは・・・?」
思わず声が出てしまう程だった。
ふと周囲を見回すと、眼前にいた目玉の魔物と姿の同じ魔物が、カルルとその味方の魔物をグルリと囲んでいた。
目玉の魔物達は、ゆっくりとカルルに向かって進んでいった。ブラヌラと、目玉の下から垂れるものを揺らしながら距離を縮めてくる。
「コボルト!どいつでも良い!敵の目玉を潰せ!」
カルルが叫ぶと同時、周囲にいた10体のコボルト達は、自身の拳を周囲の敵の目に向かって突き出した。
ブチュッ、という嫌な音が響き、目を破壊された敵はその場で崩れ落ちた。攻撃を受けていない敵も、その状況を見たからか僅かに後ろに引いた。どうやら、そこまで強くはないらしい。
続いて、残りの敵を倒してもらうべく、コボルト達に命令をしようとした。
しかし、出来なかった。攻撃を加えたコボルト達は、拳を突き出したままピクリとも動かなくなっていたのだ。
のみならず、体から白い煙を上げて、悪臭を放ちながら体が溶けているのが確認出来た。
敵の魔物の能力だろうか。触れた者を溶かすという、そのような類いの能力だろう。その能力によってコボルトがやられたと思われる。
これにより、カルルの周囲を守る者がいなくなってしまった。それを知ってか知らずか、目玉の敵は再びカルルに向かってゆっくりと近づいて来た。
敵側に意識や思考があるのは不明だが、もし持ち合わせているのであれば勝ったと思っているのかもしれない。しかし、カルルは全く諦めていなかった。
「武器を投げろ!やれ!」
サクッという音が一斉に響いた。すると、目玉の敵はブルブルと震わせたかと思うと、浮力を失った風船のように地面に崩れ落ちた。残りの1体がカルルに急接近したが、横から遅れて飛んできたナイフの直撃を受けて、即座に倒れた。
敵の残骸から距離を置き、それから「出てこい」と叫んだ。
カルルの声に呼応するように、大勢のゴブリンがカルルの前に集まって来た。
武器、及びナイフを投げたのはゴブリンだ。コボルトが全滅したとは言うものの、こちらにはゴブリンがいる。ゴブリンには、あえて遠くから見張ってもらっていた。大人数で進むと目立ちすぎると思ったからだ。このような事を想定していた訳ではないが、結果的に命を救う選択となった。
「早く降りよう。また、あんな魔物に狙われたらもう戦い様がない」
ゴブリン達が持っていた武器は、投げたナイフで最後だ。カルル達は先を急いだ。




