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妖狐のハンコウキ  作者: 烏丸 和臣
第二章 神鳴衆
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切り裂き兵士の仮面

 ここは列島中央部の山脈、そこの上空だ。


「モウスグデ着地ダ。衝撃ニ備エロ!」


 僕たちが乗っているのは大戦中に使用された神鳴衆専用の航空機、通称「ゼウス」。

 大戦中に猛威を振るった機体はあんな拙い修理でもここまで飛ぶことができた。


(頼む頼む頼む! 無事に着いてくれ!)

 僕は座席にしがみつき、ひたすら神に祈った。

 そして機体が悲鳴を上げながらなんとか着地する。


「ふぅ……生き残ったぁ……」「もうやだ……」「なんか気持ち悪りぃんだけど……うぷっ……」


 皆無事ではないがなんとか無事だ。扉が開き、お頭達が入ってくる。


「皆お帰り。ゼウスを持って帰ってくるなんて大した収穫だな」


 お頭は微笑みながらその機体にそっと触れる。


「おぉ、これはゼウスか? 伝説の機体に搭乗できるなんて夢にも思わなかったぞ……」


 プロテが興奮した様子で入ってきた。


「うん、この損傷なら十分直せる! 手伝ってよ!」


 遅れて入ってきた翔太郎さんがそう宣言し、本格的な修理を始めた。

 その間、何かわかったことがないか僕達はお頭とプロテに尋ねる。


「まず他の二つの小隊も帰ってきた。未確認物体の正体は墜落したゼウスで間違いなさそうだ」


「ログの方も半分は解析が終わったが、奴らはここから主に西、東、北に向かって定期的に通信を行なっていたようだ」


「なるほど……」


(そこに敵が集まっているということか……)

 これは思っていたよりもずっと大きな収穫だ。ゼウスは合計三機、方角が特定できた為向かう先も絞られる。

 足と道を同時に手にした今、僕達は大きな前進を果たした。


「それに、こんな面白いものも見つけた」


 プロテが嬉しそうに映し出したのは一つのファイル。そこにはなんと僕達の顔と名前等、様々な情報が記されていた。


「私たちの監視ログだ。更新は半年ほど前で殆どが途切れているがここを見てみろ」


 プロテが示したところは龍樹さんのログ。そこをよく見ると番号、名前の隣に「異称 豪龍」と書かれているのだ。


「私達にもあったんだよ、異称が。見てみよう」


 プロテは本当に嬉しい様子でログを開いた。異称は一人一人の能力や特徴が反映されており見るだけでも楽しかった。


「龍樹さんは「豪龍」、リンさんは「真眼」、真田さんは「狂獣」、暗愚は……「派手好き」?」


 僕達はそのログから目を離せない。


「はぁぁぁぁぁあ⁈ ふっざけんな! 何なんだよこれ!」


「派手好きw……派手好きだってぇ!」「随分可愛い異称だなw」「くっ……くくw……」「笑うなぁ!!」


 もう完全にハマってしまった。


「チッ……なんか他は……あ、天兵のやつあるぜ? えっと……「エスパー」か。なんか普通だな」


「普通で悪かったな、暗愚」


 その時、暗愚の真後ろに天兵が立っていた。


「いや異称見てるの楽しくてよ。ヨウタは「妖狐」、シオンは「シーフ」だってさ。ほら、百合さんのもあるぜ」


((((百合さん⁈))))

 笑い転げていた僕達は一瞬でそのログに集まった。百合さんは妖狐衆の頃から僕達を見ており、その上神鳴衆に入った後は僕ら同年代組を陰ながら支えてくれる人だ。

 そんな人の異称……


((((見てみたい!))))

 僕達は欲望に忠実だった。


「ええと、百合さんの異称は……「デア・ヴァンドラー」? 何だこれ?」


 今までのものに比べて全くわからない。


「面白くねぇの」「もしかしたら「鬼の女」みたいな意味だったりして?w」「あり得るな」


 僕、暗愚、天兵がそんな冗談を言っていると空気が急に鉛の如く重くなった。


「ぐっ……」「なん……だ?」「この気配は……」


 僕達はゆっくりと後ろを振り向くとそこには修羅のような怒りを纏った百合さんがいた。


「皆さん? 誰が鬼の女ですって?」


 穏やかに言葉を並べるがその手には槍が握りしめられていた。


「い、いや……あの……」


「言い訳すんじゃねぇ! 全員まとめて串刺しじゃぁぁぁぁぁぁぉぁあ!!」


 その瞬間、百合さんは裏百合さんに代わり僕達に突進してきた!


「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!! お助けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!」」」


 僕たちは一瞬で死の鬼ごっこに強制参加だ。


「……ばか……」「何をやっているんだ全く……」


 それをシオンとプロテは冷ややかな目で見ていた。


 ◆◇◆◇


 鬼ごっこで僕たちがフルボッコにされている時、美麗がお頭に話しかけていた。


「大丸さん? よろしいかしら?」


「どうした? 美麗」


「実は帰りの途中で変な動物見つけちゃってね。何かデータないかしら?」


 話したのはあの黒い獣のこと。


「……似たようなやつ、見つけたよ」


 お頭の声色が変わり、一枚の写真を見せる。


「ここ一週間くらいでこんな生物の目撃情報があるらしい。奴らは「黒き狼」と呼んでいたが正体は不明だ」


「実際に見たけど、あれを放っては置けないわ。明らかに自然界にとって異質すぎる……下手すれば色々綻ぶわよ」


 美麗の意見ももっともだ、不安要素があれば奴らとはまともに戦えない。敵に比べて僕たちはただでさえ小規模なのだ。


「分かった。刃真、ヨウタ、シオン、プロテ、もう一度森に入って「黒き狼」の捜索と制圧を頼む。油断するなよ」


「承知シマシタ」「はーい」「分、かり……」「まし……た」「了解です」


 そうして制圧部隊が組まれ、再び森へと足を踏み入れた。


「黒き狼は美麗の情報だと熊よりも巨大でありながら狼のような敏捷性を持っており、人間のような姿勢だったらしい」


「放射線か何かの影響……そう片付けるには整いすぎてる」


「オソラクダガ改造人間、ソノ中デモ特異ナタイプト見テ良イダロウ」


 僕達は互いの異変に気づけるように気を配りながら奴を探す。

 その時……隊長が足を止めた。


「……来ル……構エロ……」


 そう静かに告げると構えをとった。


「え?」「こんなところで……?」「レーダーには何も……」


 僕達が戸惑ったその刹那、


「グォォォォォォォォォォォオ!!」

 目の前の茂みを突き破って巨大な獣が姿を現した!


「なっ⁈」

 それは完全に予想外。僕はその場で固まってしまう……。


「ヨウタ!」

 奴の爪が迫る……


(クソッ……間に合わねぇ……)

 最早避けられない死に覚悟を決めた、その瞬間!


「斬……」


 ―ザシュ!―


 奴の体から鮮血が噴き出す。


「ガァァァァア!!」

 奴も咆哮をあげるが巨大な拳が強引に吹き飛ばし、それを遮った。


「私ノ仲間ニ何ヲシテイル……?」

 僕の眼前に現れたのは、桐崎隊長だ。


「隊……長?」

 しかしいつもの隊長じゃない。彼が纏うのは純粋で、強烈な死の気配のみ。


「オ前達、ココハ任セロ。コイツハ……私ガ狩ル!」



 そして桐崎隊長の実力が露わになる!

さて、いかがでしたでしょうか?

今回は少しギャグ的な雰囲気になりました……次回はしっかりアクション&シリアス入るのでお楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

それでは、感想や評価、ブックマーク登録などしていただけると嬉しいです。

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