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妖狐のハンコウキ  作者: 烏丸 和臣
第二章 神鳴衆
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伝説

 ここは列島中央にある山脈の中腹。そこでたった今、壮絶な戦闘が幕を閉じた。


「おぉ、お疲れ様ですぅ。高隊長ぉ」


「筋は良かったけど取るに足らない相手だったネ。さっさと信号弾撃つヨ」


「わっかりましたぁ」


 そして真田さんが空に信号弾を撃った。するとそれを目印に傷だらけとなった龍樹さんとリンさんも合流する。


「お前ぇ、その様子だと逃げられたなぁ? 何してんの? あぁ?」


 真田さんが狂気的な笑みを浮かべながら龍樹さんに詰め寄る。


「しょうがないネ、アイツ相当な手練れヨ」


 だが怒り狂う真田さんを高隊長が宥めた。


「目標である基地の確保ができタ、それで十分ネ」


 ◆◇◆◇


 少しした後山一つほど向こうで待機していた僕達、本隊が合流する。


「ご苦労様、少し休んでいろ。誰か、龍樹君とリン君の手当てをしてあげてくれ」


 草薙隊長が4人を労い、手当てをさせた。


「さ、真田さん……その、お腹大丈夫です……か?」


 その時、僕は恐る恐る真田さんに声をかける。理由は単純、真田さんの腹部が真っ赤な血で染まっていたからだ。


「んんん? 腹ぁ?」


 真田さんは自身で確かめるように腹部を晒した。するとそこに空いていたであろう穴は……無かった。


「傷ならもうないぞぉ? 寝ぼけてんのかぁ?」


「え? でも、その血……」


 そう、真田さんの服にある血は確実に致死量の出血があったことを物語っているのだ。


「峡牙ハ人ノ肉ヲ食ウト傷ガ治ル体質ダ。恐ラクソノセイダロウ」


 桐崎隊長がそっと教えてくれる。


(人の肉を食べて回復って……本当に化け物じゃん……)

 僕は心底そう思うが、同時に妙に合点がいった。

 そうして龍樹さんとリンさんの手当てが終わると、お目当ての通信基地に足を踏み入れた。


「うわぁ……なんだ、ここ……」


 扉をくぐった瞬間、その空間は外の長閑さとは正反対の空間だった。

 日が当たり、生命の息吹がそのまま感じられるような空間ではない。電子音が響き、闇の中を青い光が彩っている空間だった。


(こんなの……アニメでも見たことがない……)

 そうして圧倒されていると僕の傍を何かが素早く通り過ぎた。

 そして誰よりも早く装置に触れた。


「うわぁーーーーーー! 第三秘密通信基地だよねぇ! やっぱりここは生きてたんだぁぁあ!」


 興奮を隠さず目を輝かせているのは1人の少年。


「桐崎隊長、彼は……?」


 確かホールの中にいたのは知っている。でも話したことも無いからさっぱりわからない。


「彼ハ雷帝軍元サイバー部隊所属、電皇翔太郎でんこうしょうたろう。情報技術ニ関シテ右ニ出ル者ハイナイ」


 あんな小柄で無邪気な姿なのに、聞くと30歳は軽く超えているという事実に驚いた。

 するともう一つ僕の傍を黒い影が通り過ぎた。


「ふふ、ダメですよ。興奮するのも程々にしなくては……」


「うわぁっ! 何すんだよ!」


 そして翔太郎さんを槍の石突で持ち上げた。

 もう一つの影、その正体は……なんと百合さんだ。

 槍を使い、小柄な翔太郎さんの襟を引っ掛ける。翔太郎さんもジタバタ抵抗するが百合さんはお淑やかに笑いながら彼を機械から離す。


「まぁ……うん。プロテ、いけるか?」


 気を取り直してお頭がプロテを呼んだ。


「問題ない……」


 するとプロテが操作パネルの前に立った。そしてその手が何かの接続部のように変形する。


「データ、解析開始……」


 そして操作パネルに挿した。次の瞬間、さまざまな画面がファイルか何かを表示しては消えていく。


「ぐっ……なんだ、このデータ量は……」


 どんどんプロテの顔が苦悶に歪む。その瞬間、


「うわっ⁈」


 突然画面が赤くなりプロテが弾かれたように後ろへ倒れた。


「え?」「嘘……」「やっぱそうだよなぁ……」「……」


 画面には静かに「セキュリティ発動。暗証番号を入力してください」の文字が表示されていた。


「まずったなぁ……暗証番号なんてきっと変えられてるだろ……」


「おぉいプロテぇ、抜き出せた情報どれくらいだぁ?」


 真田さんがプロテに詰め寄る。


「……ほとんどないです。周辺のマップも、通信ログもおそらくあの奥に……」


(やっぱりそうか……)

 何かしらの障壁があるとは思っていたがこんな特殊な情報機器が扱えない僕達にはどうしようもない壁だった。

 どうすれば……そう思っていると軽快な足音ともにパネルの前にあの人が立つ。


「はーい、どいてどいて〜。ここは俺の出番だから☆」


 そう、翔太郎さんだ。そして慣れた手つきでパネルに触れると素早く何かを打ち込み始めた。

 それはまさに早業、僕達はただ単に呆然と見ているしか無かった。


「なーるほどねぇ、それじゃあフライ。行ってらっしゃ〜い」


 その時、翔太郎さんが何かカードのようなものをパネルの端側にある穴に接続した。


「コンニチハ、マスター」


 次の瞬間、画面に翼のような謎のアイコンが浮かび上がる。


「フライ。暗証番号の解除を頼んだ」


「リョウカイイタシマシタ。アンショウバンゴウヲカイセキチュウ……」


「よし、あとは待つだけっす」


 すると翔太郎さんは振り返って余裕そうに足を組んだ。


「こ、これだけ……ですか?」


 確かに画面の暗証番号欄には絶えずアルファベットか数字が入力されている。


「そう、こいつは俺が使っている侵入・解析・コピー用プログラムAI、「フライ」。あんな奴らが作ったセキュリティなんて10秒あれば解けるっす」


 翔太郎さんがそう宣言した瞬間、画面からフライが言葉を発する。


「セキュリティカイジョ、カンリョウ」


 そして翔太郎さんがカードを引き抜くと周辺のマップや通信ログ等のデータが大量に出てくる。


「さ、プロテ君。どうぞ」


 そして翔太郎さんがプロテを前に出して再びデータの解析を始めた。


「この感じ……暗号も簡単になっているのか?」


「そう! 俺のフライすごいっしょ⁈」


 翔太郎さんが興奮してその性能を語り始めた。

 だがプロテはそれを丁寧に右から左に聞き流しながらデータの解析とインプットを進める。


「完了、映します」


 そしてプロテが目を開いた。次の瞬間、中央のテーブル上に周辺の立体マップが映し出される。


「俺たちがいるのがこの山の中腹あたり。この近くにいくつか未確認の金属物体があるようですね……通信ログはこちらです」


 そして今度は画面にログを表示した。


「一番最近のものは今日。ん? ……仙石から、仙石に送られています……どうなってんだ?」


 そのログを見た時、龍樹さんが口を開いた。


「多分受け取ってる仙石ってのは俺の相手だ。若い感じだったし……もしかして家族か何かかもな」


 龍樹さんがそう言った瞬間、空気が鉛のように重くなり、息をする度に肺が貫かれるように鋭くなった。

 この空間にいるほとんど全員……いや、元神鳴衆の面々に緊張が走った。


(この圧……一体……)

 僕が周りを見渡すとその正体が明らかになる。


「仙……石……」


 この人も殺せそうな圧の発生源。それは他でもない……お頭のものだった。


「あの……お頭。お心当たりが……?」


「改造人間ノ中デ仙石ノ名ヲ持ツ者は我々ノ知ル中デハ一人ノミ……」


 そしてお頭の口がゆっくりと開く。


「男の名は……仙石忠勝せんごくただかつ。またの名を、三大将軍……「破壊神」」


「なっ⁈」「嘘だろ……」「おいおい……」「本当に言ってるの?」


 僕達も、美麗や阿久比達までもその名に驚きを隠せない。


「やっと尻尾出しやがったなぁ? クソ野郎……」


 そう言うお頭の顔はまさに修羅のようであった。



 僕にはまだ、この先の道が覇道であるのか、修羅道であるのか……全くわからなかった。

 ただここにいる皆が笑って生き残れる道は……ない。そう直感が囁いた気がする。

さて、いかがでしたでしょうか?

今回は翔太郎の活躍がメインの回。そして、破壊神の本名が明かされました! これからより大規模な戦いになりますしもっとたくさんのキャラが出てきます!

乞うご期待ください!

それでは、感想や評価、ブックマーク登録などしていただけると嬉しいです。

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