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妖狐のハンコウキ  作者: 烏丸 和臣
第二章 神鳴衆
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二面の狩人

 ここはナゴヤから離れた山脈の中、そこでは凄惨な戦闘が繰り広げられていた。


「チェリャァァァァア!!」


「効くわけねぇだろうがぁ!」

 高隊長と鳥籠の剣士が激しく命を削り合う! 高隊長の手には分厚く長い狩猟刀が握られていた。


(チッ……何なのだこの男は? 先ほどとは全く違う!)

「ハァァァァア!!」

 奴がいくら白刃を振るい、斬撃を飛ばそうと高隊長を捉えられない。

 まるで舞。縦横無尽の回転を交えた体捌きから振るわれる分厚い狩猟刀は想像以上の破壊力を秘めていた。


「ぐぉぉぉぉぉお!!」

 あっという間に奴の体から血飛沫が舞う! 


「カァァァアッ!!」

 しかし奴も一流の戦闘者、隊長の猛攻から強引に抜け出す! そして全力で白刃を振るった!

 次の瞬間、奴の能力によって見えない斬撃が隊長の体に無数に刻み込まれる!


「がはっ!」

 全ての斬撃が命に届かずとも予想外の攻撃に隊長の体が強張る!


「もらったぁぁぁぁぁぁあ!!」

 その刹那、奴が地を割る勢いで踏み込む! そして隊長の腹にその白刃を減り込ませた!

 そしてそのまま振り抜く!


「ゴフッ!」

 最後の一撃は隊長の臓腑にすら届く深さ。なんとか体勢を立て直すも腹からは絶え間なく血が流れる。


(勝った!)

 そして奴がもう一度踏み込もうとした瞬間、その双眸が異変を捉える。


「ハァ……ハァ……」

 なんとさっきまで荒れていた呼吸が落ち着き、流れる血の量が目に見えて少なくなっている。


(なんだ?)

 奴の第六感が警鐘を鳴らし、追撃せんと突進する!


「チェェェェェェイ!!」

 しかしその斬撃を隊長はいとも容易く弾いた。

 見るとその体に傷はもう無く、猛獣のマスクが嘲笑うように傾いていている。


(な、何なのだ……この男は……)

 奴の本能が警鐘を鳴らし、全身から冷や汗が吹き出す。


「残念だったなぁ。俺の方が強ぇ……」


「な、何なのだ貴様は……一体どんな能力を持っている!」

 奴は隊長の圧にも屈せず真正面からそう言った。


「俺の能力はなぁ、2人の人間になれるんだよ……マスクを被っていない時と、被っている時。それぞれの時に身体はリセットされ、あらゆる技能や身体能力を二つの器に注ぐ事ができるんだぁ……」

 そう、高隊長の能力は「二面の獣(トゥーフェイス)」。マスクの有無で別の自分を育てる事ができる。

 故にマスクを被っている時は猛獣のような攻勢と舞のような武技、狩猟刀を片手で扱うパワーを持つ。

 しかしマスクを外せば冷静に全体を見る策士であり、狩人の如き素早さを持つ弓兵となる。

 全く違う二つの性質の切り替え、これこそが隊長の能力の最大の利である。


「う、ぁ。っ……」

 隊長の言葉を聞き、奴は完全に戦意喪失していた。そして刀を捨てて逃げた。


「ハァッハァッ!」

(アイツが! アイツが正しかった! 鳥籠で生まれ育ったフラグには異名のある者がいる。その異名の中でも稀な歴史上の英雄の名! その名の者には近づくべきではない!)

 奴は自らの決断を後悔していた。実直な剣士を装いながら腹の中では欲望野望に醜い程の執着があった事。それによって最も名の通っていた高隊長を標的にしたのだ。


(とにかく今は逃げる! もう戦わない! ひゃっはっはっはっ、学びを得れたのはでかいぞ!)

 奴の口角が上がり、その顔は内面を写したように歪む。


「次は決してしくじらっ……!」


「遅い……」

 奴が言葉を言い終える寸前、一本の矢が奴の頭部を貫通した。


「……は? ……」

 あまりに一瞬、そして突然の出来事だった。地面に力無く倒れた奴は何が起きたのかすらも分かっていない。


「狩人が獲物を逃すとでも思ったのカ? 甘い考えネ……」


 矢を放ったのは高隊長。マスクを外し、冷静な一撃で終わらせたのだ。


「あの世で反省会してると良いネ……」


 ◆◇◆◇


 その時、全く別の場所でも第三の戦いが行われていた。


「なめろうになれぇえ」


「敵の、排除、我が……使命!」

 あの得物を振り回す真田さんと相対するのは隊長の矢を撃ち落とした男。

 奴の得物は鋭いサーベル。鋭い刺突を繰り出しながらその眼光はハンターのように鋭い。


「随分扱いにくいもん使ってんなぁさてはアホかぁ?」


「うるさい、俺は、お前より賢い。適当なことを言うな」

 2人の斬撃、狂気が金切音となって空間を埋め尽くした! 真田さんは重く分厚い得物を片手で振るがやはり速さではサーベルに勝てない。


「ハァァァァァア!!」

 何より奴の戦い方は刺突がメイン。故に防御の隙間を縫って真田さんの体を削っていく。

 あっという間に真田さんの体からは鮮血が吹き出した。


「チッ……」

(動きはめんどくせぇが単調だ。おそらく能力は何かを射出するタイプ……警戒してりゃ対処できる。厄介なのはまだ隠し玉がありそうって所だな……)

 狂気的な笑みを浮かべ、体を削られながらも真田さんは奴をじっくりと観察していた。


(能力も出す前に手早く仕留める!)

 その瞬間! 真田さんが能力を発動した!


(戦闘のリスクを最小限に強化……)

 そして奴と鍔迫り合いに持ち込む!


「あれれぇ? 何も聞こえないなぁ……不思議だなぁ……」


「何っ⁈」

(何だ? いきなりパワーがっ……)

 奴が異様な雰囲気を気取り下がろうとする!


「吹っ飛べ外道ぉお!」

 だがそれよりも早く、真田さんが奴を純粋なパワーで吹き飛ばした!


「ぐあっ!」

 サーベルが悲鳴を上げ、奴との間に距離ができる! 

 そう、先ほど真田さんが能力によって力と引き換えたのは……聴力。


「久々にやったけどやっぱ面白いなぁ……」


「この化け物がぁ……」

 そして再び斬り合いが巻き起こる! 

 聴覚を失うということは視野の外にあるものに気づかないということ。本来ならばそれが狙われることもあるようなリスクのある行為だ。

 だがそのリスクこそが真田さんの力を限界を超えて引き出した! 


「貴様は必ず殺ぉぉぉぉぉぉす!!」


「何言ってるか分かんねぇなぁ! 手話で話せぇ!」

 真田さんのパワーが上乗せされ、さらに素早さが加わった斬撃の嵐が容赦なく奴の体を切り刻む!


「ぐぅぅぅぅぅう!!」

 奴の体から血飛沫が舞い、耐えられなくなった奴を吹き飛ばした! すかさず真田さんが得物を奴に向ける!


「まずは焼こうかぁあ⁈」

 そして得物の射出口から炸裂弾が飛び出した!


「なっ⁈」

 しかし奴も一流。咄嗟のところで能力を発動した!


「ガァァァァア!!」

 その瞬間、奴の掌から何かが飛び出す!

 それは炸裂弾と空中で衝突し、その場で大爆発を起こした!


「へぇ……」

(やっぱり何かを射出している……と言うかは伸びてる感じだなぁ……槍っぽい何かだ)


「驚いたか? これが我が能力「骨の戦士(ボーンウォーリアー)」。貴様を穴だらけにしてやろう……」

 奴の掌には穴が空いており、その穴から骨でできた槍が出てきていたのだ。


「お前カジキかぁ? 食感悪くなるから先に抜いておかないとなぁ……」

 真田さんが再び得物を構える。


「やっぱり生が一番だぁ……」



 そうして真田さんの真価が発揮される。

さて、いかがでしたでしょうか?

今回は真田と高の戦闘を描きました! 実は調べてみると高という苗字は日本にもいるそうで驚きました。資料を探してキャラに反映するのも楽しいものですね。

それでは、感想や評価、ブックマーク登録などしていただけると嬉しいです。

ありがとうございました。

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