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妖狐のハンコウキ  作者: 烏丸 和臣
第二章 神鳴衆
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新神鳴衆三番隊、始動

「……」「ぐ……」


 ここはナゴヤと呼ばれた都市の一角。そこで混沌を極める事態が起きていた。


真田峡牙さなだきょうが……元神鳴衆八番隊隊員だぁ……」


 俺と天兵のエーテルを用いた組手。コイツはそこに突如として割り込み、俺達を圧倒的なパワーで捩じ伏せたのだ。


「お前達は誰だぁ? 敵かぁ?」


 真田はシオン達にそう問うがその奥に蠢いている狂気と異常性が全く隠せていない……。


「名乗ったから何かあるの?」「シオンちゃん……油断しないで……」


 2人は臨戦体制。しかし2人も気づいている……コイツ相手には例え万全でも、俺達がいても勝てる可能性がないということを。


(コイツ……おそらくラーテルと同格かそれ以上に強い……)

 シオンが身構え、刺すような殺気がぶつかった瞬間!


「何ヲシテイル?」


 その場に現れたのは桐崎隊長だ。


「あぁ桐崎隊長。久しぶりですねぇ」


 その時、真田の放っていた殺気が消える。


「コレカラ共ニ死地へ足ヲ踏ミ入レル仲間ダゾ。仲良クシロ」


 そう言ってシオン達と真田を睨みつける。


「チッ……はい」「し、承知しました……」


「はいはーい」


 そうして事態が沈静化し始めた時に僕達も目を覚ます。


「痛ってぇ……一体何が……」


「あの声は真田さんだ……」


「真田ぁ? って誰?」


 僕が頭をさすっていると真田が音もなく俺に近づいた。


「起きたかぁ、遅すぎるぞコノヤロー」


 そして軽々と僕を持ち上げた。


「なぁんだぁまだ若いなぁ。ほら、高い高いだぞぉ」


「え? ちょっ、うわぁぁぁぁあ!」


 僕は抵抗しようとするがそんな暇もなくそのまま真上に放り投げられた。


「アッハッハッハ、楽しめぇ」


 その顔には子供のような無邪気さと、悪魔のような残酷さが共存した笑みがある。


「おっとっと……」


 僕はなんとか体勢を立て直して着地した。


(なんだこの人……規格外すぎる……)

 そう思っていると天兵が説明を始める。


「えっと……この人は真田峡牙さん。元神鳴衆八番隊の隊員で桐崎隊長の部下。部隊での呼び名は狂った牙と書いて「狂牙」。戦場だと敵軍から饕餮とうてつと呼ばれていた……狂人だ」


「えっと狂牙は分かるけど……トウテツって?」


「饕餮トハ大陸ノ伝説ニアル四凶トイウ四体ノ獣、ソノ一体ダ。羊カ牛ノ体、人ノ顔、虎ノ牙、人ノ爪ヲ持チ、全テヲ喰ライ、最終的ニ己ガ身体ヲ喰ラッテ消エルトイウ化ケ物ダ」


「なるほど……」

(外見はそんな化け物じゃない……って事は能力に関係あるのか……)

 そんなふうに思っていると真田さんが話し始める。


「俺の能力はなぁ、自分を制限するほどパワーアップするって感じだぁ。例えば普通に殴るとぉ……」


 真田さんが壁を軽く殴ると一筋のヒビが入るだけで止まった。


「これで視力を失くすと……」


 そう言った時、真田さんの目の光が消える。そして少し位置を確認してから壁を殴った。

 見た感じの威力は同じ……だが今度はコンクリートの壁に大量のヒビが入り、後一押しで崩壊しそうな程の威力だったのだ。


「ざっとこんな感じだぁ」


(マジか……こんなに……)

 俺の本気の一撃……それすら嘲笑うかのような威力を軽々と放つこの人に僕は恐怖を覚えた。


「それとぉ、大丸の旦那からコイツら連れて行けって言われたぞぉ」


 そう言って真田さんが奥から引きずってきたのは既にたんこぶを作って逃げようともがいている青山ら妖狐衆の舎弟衆の4人だ。


「青山!」「生きてたの……」「何故まだここに?」


「何で死んだ判定なんですかぁ⁈」「酷ぇ……」「リンさんは一緒にいたでしょ⁈」「ってかさっきまで話も聞いてたし!」


 青山達の事なんて全く気にしていなかった2人の反応に青山達が嘆いた。


「まぁこれでピッタリ10人。用意が整い次第、出ましょう」


 そうして天兵の言葉の後、一時解散した。

 その後、僕はリンさんに声をかける。


「リンさん、あの……新しい刀って無いですかね……?」


 理由はそう、武器の調達だ。歓楽街を出る直前にした天梁星との戦闘、それによって今まで使っていた黒い刀が折れ、代わりに使っていた急拵えの刀も最早破砕寸前だ。


「うーん……あれはかなり前に用意していたからあったけど……もう多分、鈍刀なまくらくらいしか無いよ」


鈍刀なまくら……エーテルでの強化を覚えた今、少し心許ないですね」


 そうしていると黒いマントを羽織った人を見かける。僕達がここに来た時、お頭に攻撃を仕掛けたあの人だ。


「すいません、どこかに刀って無いですかね……」


 正直第一印象があまり良く無いせいで少しビビっているが背に腹は変えられない。


「刀か……お前の腕だ。そんじょそこらの物じゃ直ぐに使えなくなるだろう……」


 すると男が手招きをする。そうして付いて行くと建物を出てその先にあったのは博物館のような場所。


「何ですか? ここ……」


「良いから来い……」


 そうして中に入ると大量の刀剣があった。


「うわぁ……すっげぇ……」


 その美しさと凄さのあまり、声が出ない。


「……この刀達は、一体?」


「ここにあるのは遥か昔に作られ、今まで壊れずに受け継がれてきた名刀だ。全て本物……美しいだろう」


 そうして彼がショーケースにそっと触れる。僕は正直刀の目利きをした事もない……だからそこまで詳しく分からないのだが、それでも分かる。


(素晴らしい名刀だ……)

 すると彼が近くのパンフレットを手に取った。


「この刀達を打った職人は既に世を去っているが、戦前に製作していた職人がここから北にいる……場所はここだ」


 そうしてパンフレットの住所を地図で示してくれる。


「そこに行けば良いものを打ってくれるだろうさ……」


 そうして印をつけた地図をくれる。


「暫くは此処の下にある売り物を研いで使えば良い。念のため2本ほど持って行けよ」


「はい! ありがとうございます!」


 そうして下のショップらしき場所で展示されていた刀を2本拝借した。


(何もないのはアレだから今持ってるお金だけ置いておこっと)

 そしてメモとお金を置いて博物館を後にする。その後、刀を研いで斬れるようにして皆と合流した。


「用意できました」


「分かった」


 そして、僕達はビルを出る。


「目的地は?」


「此処カラ北ニ向カウ。刀ガ欲シイノダロ?」


「はい。ありがとうございます!」


 そうして目的地を決めた僕達は勢いよく走り出した。


 ◆◇◆◇


 だがその時、その様子を遠くから監視している影があった。


「あららぁ、出発したみたいですよ。追いますか?」


 若い声の男がそう言った。


「いや、山にある部隊に連絡しろ。我々は監視を続ける」


「了解っす」


 そうして若い声の男は何処かに連絡をした。



 そしてこの戦いは予想を超えた、大規模なものとなる。

さて、いかがでしたでしょうか?

今回は旅立ちまでを描いてみました。真田の加入と青山達の再合流……かなり平和でしたね。

という事で次の目的地は刀の名所です! 乞うご期待!

それでは、感想や評価、ブックマーク登録などしていただけると嬉しいです。

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