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妖狐のハンコウキ  作者: 烏丸 和臣
第二章 神鳴衆
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もう一つの力

 ここはナゴヤと呼ばれた都市の一角。そこで天兵からの特訓が始まろうとしていた。


「それで、何やんの?」「さっさとして……」「お、お願いします……」


 特訓を受けるのは僕、シオン、リンさんの3人だ。


「まず俺たちの使ってる能力の正体。何か分かるか?」


「うーん……分かんね」「神様がくれたもの」「機械が埋め込まれたとかでしょうか?」


 正直、何がどうなって能力となっているのかは全く分からない。今までに言われたのは「身体を改造された」これのみだ。(シオンの神様がくれたは流石に違うだろう)


「詳しい正体は俺も分かんないが体内を流れるエネルギーを利用しているという事は確かだ」


 すると天兵がそう言った。そして近くの建物の壁に向かい手をかざす。


「そのエネルギーをエーテル、分かりやすく言うと生命エネルギーだ。それを変質させて能力になっている感じだ。つまり上手いことやると……」


 次の瞬間、奴の手のひらに一瞬モヤがかかったかと思うとコンクリートの壁に砲弾がぶつかったかのようなヒビが入る。


「なっ!」「……!」「えっ⁈」


 僕達は驚愕した。同時に、僕とシオンは妙な合点がいく。

 天兵と戦っている時に感じたあの異様な力。本来持ち上げることすら出来ないような鉄塊を振り回せる程の怪力の正体があれなら理解できる。


「つまり、僕達もそれを使えればあんな怪力が出せるってこと?」


「そう言う事だ」


 その言葉を聞いて僕達は俄然やる気が出てきた。


「……始めていいか?」


「おう!」「やる」「お、お願いします……」


 そうして特訓が始まった。


「まずは瞑想で自分の中にあるエーテルを知覚するところからだ」


 かつてはこの場所も人が行き交い、瞑想なんかには全く向かない場所だっただろう……だが今は植物が自由に枝を伸ばし、自分の中を見つめるのにこれ以上ないほどの静寂で満たされている。


(感じろ……自分の中を流れる……力の流れを……)

 僕たちは息を整えて感覚を研ぎ澄ました。

 その時、普段感じることがなかった何かを掴む。


(これ……か?)

 血流とも何か違う、もっと力強く繊細な流れを感じたのだ。そしてゆっくりと目を開ける。


「おぉ……」

(この短時間でもう掴んだのか)

 するとシオンとリンさんも目を開けた。


「それじゃあその力を動かしてみろ」


 そう言われると僕は感じた力を拳に集めた。しかし中々上手くいかず……


「グググッ……うわ!」


 僕の集めたエーテルは弾けるように放たれ、なくなってしまった。他の二人も同じ感じ……恐らく何かイメージでのコツがあるのかもしれない。


「まだまだぁ!」


 そうして……気づけば特訓開始から2時間が経っていた。しかし、その間で成長し少しずつできるようになってきた。


「こうして……こう!」


 そして特訓開始から2時間と少し、やっと拳にエーテルを集めることができた!


(イメージは力の流れる管を動かして溜めたい部分に障壁を作る感じだな……)

 完全にコツを掴み、そのまま壁にぶつける!

 するとコンクリートに一筋のヒビが入った!


「よっしゃぁぁあ!!」


 ようやく一つの関門を突破した。するとリンさんもシオンも突破する。


「マジか……」

(正直拳に溜めるのって結構難しいんだが……)

 天兵の思い通り、その後の特訓はサクサク進んで全身のあらゆる所にエーテルを集中させることができるようになった。


「じゃあ次、目に溜めてみろ」


「目に?」


 僕はなんとか目に力を集める。すると世界にモヤがかかったようにボヤけた。


「なんだぁ? これ……」


「それがエーテル。この世のあらゆる生物がそれを放出しているが、特に強いのは改造人間だ。それで見れば誰が改造人間なのかすぐ判断できる。それに慣れろ」


(慣れる……だけ?)

 正直さっきの特訓よりもはるかに簡単な気がする。

 そうして目に溜めたまま慣れようとした瞬間、


「オラァ!」

 なんと天兵が突如蹴りを放つ!


「うわっ!」

 間一髪で避けるが同時に目に集めていた力が解けてしまう。


「何すんだよ!」

 僕は天兵の行動に激しく抗議する。特訓しろと言っておきながらそれを邪魔するなんて可笑しいにも程がある。


「何って、組手もやるんだよ。大事な特訓だ」

 そう言って奴が指を鳴らし、構えをとる。


「なるほどな……良いぜ」

 俺も再び目に力を集中させて構える。


「さっきやられた分10倍にして返してやる!」

 そして同時に飛び出す!

 俺は目の力に気を配りながら奴の攻撃を捌く。


(やっぱり慣れてるんだろうな……エーテルを集中させてて一撃が重い)

 奴の軽い裏拳ですら片手の防御が弾かれる。


「まだまだぁ!」

 俺は出力を上げて奴を壁まで追い詰める!


「ぐっ!」

 目を意識している状態でもエーテルの扱いに多少慣れた今なら、少し力を回すことができる。

 それによって今までと比べられない程の速さと威力を出すことが出来る!


(いける!! このまま押し切る!)

 その瞬間、天兵が真上に飛び上がった!


「これでも喰らってろ!」

 そして落ちてきたのは、強烈な踵落とし!


「ガァァァァア!!」

 頭上に力を集中させてその一撃を受け止めた! 地面のアスファルトにヒビが入り、足元が沈む。


「止めた⁈」

 天兵がその事実に驚愕する。俺は頭から血を流しながらも耐えてみせた。


「吹っ飛んどけ!!」

 俺は空中にいる奴の足を掴んで後方に投げ飛ばした!


「チッ!」

 天兵が地面を転がる。


「さぁ、来いよ……」


「俺に勝てるわけねぇだろ」

 表情の固い奴も興奮を隠せず口角が上がった。2人のエーテルが膨れ上がる。

 次の瞬間!


「おっしゃぁぁぁぁぁあ!!」


「負けるかぁぁぁぁぁあ!!」

 2人が示し合わせたかのように同時に飛び出した! 拳にエーテルを集中させてさらに加速する!

 そして互いの信念が籠った拳がぶつかる……その刹那!


「なぁにしてんだぁ?」

 その声と同時に音もなく影が現れる。


「喧嘩はダメだぞぉ?」

 突如、俺たちの顔面を巨大な手が鷲掴みにした!


「えっ⁈」「ぐっ!」


「せーの、よいしょ!」

 そして豪快にアスファルトに叩きつける! 俺達の強化すらものともしない。圧倒的なパワーで捩じ伏せたのだ!


「ガッ⁈」「ゴッ!!」

 俺達は頭が割れるような衝撃をもろにくらい、動けなくなった。


「アンタ、誰?」「う、動かないでください!」

 リンさんとシオンが臨戦体制に入る。


「俺かぁ?」

 男はゆっくりと顔を上げ、振り返る。その顔にはべったりと張り付いたような笑みが浮かんでいた。


「元神鳴衆、八番隊隊員。真田峡牙さなだきょうがだ……」


「な……」「え?」

 なんと男は味方だと名乗ったのだ……。



 そしてコイツの乱入が更なる嵐を呼ぶ。

さて、いかがでしたでしょうか?

今回はヨウタメインの特訓回でした。いや……こんな能力の元になる力ってよくあるので差別化できたのか少し不安です……(-。-;

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