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妖狐のハンコウキ  作者: 烏丸 和臣
第二章 神鳴衆
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合流

 ここは歓楽街から離れた森の中、そこの中を十数人の集団が歩いていた。


「お頭、どこまで行くんですか?」


 僕は先頭を歩くお頭にそう聞く。


「えっと……まぁ全員に説明しとこうか。こっち来てくれ」


 そうしてお頭は中央に巨大な地図を広げて全員を集めた。


「これは戦中まで使われてたこの国の地図だ。俺たちがいたのは……大体ここら辺」


 お頭が指を刺したのは島の中央からやや南東の「シズオカ」と書かれている辺り。


「俺達の合流地点はここから西に行ったこの「ナゴヤ」って場所だ。これから高速道路に出て、大体……2日とちょっと歩けば着くかな?」


 そう言って赤丸をつける。その時、突然阿久比が口を開く。


「この地図って戦中のやつなんだよな……ってなるともう少しかかるかもだぞ。何せ爆弾も落ちて地形が変わってる所も多い」


 そしてそう言ったのだ。


(確かに……)

 阿久比の言う通りだ。あの戦争でこの国も甚大な被害を受けた。現に僕のいた町でも未だ倒壊した建物が残っていたり瓦礫の撤去がされていない所もあった。


「いや、このルートの地形は変わってないはずだ。とにかく行くぞ」


 そうしてお頭は歩き始める。僕達もその後に続いた。


 ◆◇◆◇


 それから2日ほど後、


「皆お疲れ様、ここがナゴヤだ」


 そう言ってお頭が指を刺した先には……大量の木々に侵食されたビル群があった。


「うわ……」


(こんな事になってるのか……)

 ビルの形や高さから昔はかなりの都市だったのだろう……だが木々で飾られたその姿は文明の崩壊を象徴しているようだ。

 その時、お頭が空に向かって狼煙を放つ。その煙が消えかかった時、遠くから何かを反射させた光が見える。


「あそこだな、行くぞ」


 そう言ってお頭が走り出す。そしてあろう事か高速道路から飛び降りる! そしてフック銃を高速道路に放ち、ブランコのようにして空中を進んでいった。


「えぇ⁈」


 僕はその光景を見てただただ驚愕する。一歩でも間違えれば即死するような高さ、そんな状況であの人は楽しそうに笑いながら飛んでいるのだ。


「お前らも来いよ! 楽しいぞ!」


 お頭がそう言って手招きする。


「こりゃあ……」「マジかよ……」「本気か?」「流石に……」


 普通に考えれば行くなんて選択肢はない……でも、僕達は迷わず飛び出した!


「ヒャッホォォォォオ!!」「競争しようぜ!」「望むところだ!」「楽しいなぁぁあ!」


 そうして、僕、龍樹さん、阿久比、巣流がお頭の後を追って飛んだ。僕達に「普通はこうだから……」なんて考えはミリすら無い。


「……」「……」「……」「……」


 一方、女性陣は冷ややかな目をしていた。


「なんであんな事が出来る訳?」「本当、子供みたいですね」「あ、危ないですよ……」


 そうしてリンさん、百合さん、美麗が歩こうとした時シオンは黙って道路の端っこに行った。


「……何してるんですか?」


 嫌な予感がしたのか、百合さんがシオンに問いかける。


「楽しそう……」


 百合さんの問いにそう答える。次の瞬間、シオンは僕達と同じように飛び降りた!

 そして僕達の後を追う。


「全く……」「信じらんない」「こ、怖くないのかな……」


 そうして結局3人になった女性陣は舎弟衆を率いて高速道路の出口に向かった。


 ◆◇◆◇


 数分後、とあるビルの前でお頭が僕達の到着を待つ。


「おーい、こっちだ」


 そして続々と僕達も地上に降りる。


「イェーイ! 俺、一番!」「クソッ! 負けた……」「楽しかったぁ!」「あれ、シオンいたの?」「あの後行きたくなった」


 そうして待っていると舎弟衆や百合さん達も合流する。


「お待たせしました」


「大丈夫だ。じゃあ行こうか」


 そう言ってお頭がビルに向かって一歩踏み出した瞬間、


 ―バリンッ―


 突然、遥か上にある窓が割れる!


「……」

 そして何か黒いものが僕達目掛けて落ちてきたのだ!


「チッ!」

 それに全員が反応して一斉に距離を取る! しかし、お頭は一歩も動かない。


「お頭っ……!」

 そう言った瞬間、それがお頭と衝突する! 轟音と共に辺りには砂煙が巻き起こる。

 そして煙が晴れた時、その姿が露わになる。


「久しぶりだな……あの窓高ぇぞ」


「勝手に居なくなって、よくそんな軽口を叩いていられるな……」

 黒い物の正体は謎のローブに身を包んだ男、そしてその中から鋭利な短剣が飛び出ている。そしてお頭はそれを掴み、余裕そうな顔をしていた。


「くっ……」

(空気だけで分かる……コイツ、強い)

 俺の本能が警鐘を鳴らした。目の前にいるこの男が途轍もない程の高みにいること、今俺がチャカを撃ったところで意味を成さないことを、直感的に理解した。


「フン、仲間を連れて来たか……」

 男がそう言ってお頭から離れる。そして俺たちの方を向いて少し頭を下げた。


「大丸嶽久及びその仲間達よ、よく来てくれた。我らの仲間として迎え入れよう……」


 そう言って頭を上げるがフードを深く被り、マスクもしているため顔も分からない。


「ついて来い」


 そう言って男は音もなく歩き出す。


「……行きましょうか」


 そして、僕達も歩き出した。

 ビルの中に入ると所々木が生えていたが、床や照明などはかなり綺麗で人の住んでいた形跡も見える。


「ここだ」


 するとかなり上の階の一際大きな扉の前で男は立ち止まる。そしてローブから腕を出した。


(間違いない……外まで伝わってくるこの圧。マングースや唐獅子……いや、それ以上の猛者がいる)

 その気配を感じた時、僕は無意識に刀へ手をかけた。そして扉が開く……その中は巨大なホールであり、そこにいたのは様々な姿をした猛者だと一目でわかる者達。


「本当に変わってないなぁ、元気か?」


 お頭が笑い、そう言いながら中に入っていく。

 その瞬間、何人もの男たちが一瞬でお頭の眼前まで迫る!


「……!!」「チッ!」「おっと!」「あら……」「おいおい……」

 奴らがお頭に辿り着くほんの一瞬前に俺達が両者の間に割って入る!

 それぞれが様々な武器を持ち、真っ黒な殺気を放っている。


(初動が全く分かんなかった……)

 仮面で顔は隠れていてもその下では冷や汗が流れている。


「ほぉ、速いな……若いの」

 目の前の男がそう言う。だが今のはまぐれだ……先輩達が動くまで俺は気付いていなかった。

 後コンマ1秒でも遅れていれば俺の命は無かった……。


「まぁまぁ止めなされ……いきなり殺しに行くのは些か無礼だぞ」


 その時、遠くにいた老人が口を開いた。ゆっくりと歩きながら言葉を繋げる。


「折角ここまで来てくれて、しかも粒揃いの戦闘者も一緒。十分じゃないか」


 そう言いながら老人はお頭の顔を見る。


「……まぁ、身勝手な野郎ではあるが……」


 そして急にそんなことを言った。

 先程とはまるで別人のような空気と声、そして得体の知れない圧に俺の本能が「構えろ」と促す!


「……!!」

 そして俺が構え、殺気を漏らした瞬間! 誰かの脚が俺に突き刺さる!


「ぐっ!!」

 完全な不意打ちに耐える事もできず、俺は吹き飛ばされて窓を突き破った!


「……じっちゃん、アイツ殺していいか?」

 黒い影が低い声でそう言う。


「殺しはいかんが……死ぬほど痛めつけて来い」

 老人がそう言った瞬間、シオンが俺の後を追って飛び出そうとする!


「ヨウタ! ……っ!」

 しかしその刹那! 巨大な鉄塊がシオンを押し潰す! シオンも能力で踏みとどまろうとするが、勢いを殺しきれず外まで吹き飛ばされる!


「……死ね……」



 そして、今までにない。超規模の戦闘が幕を開ける……。

さて、いかがでしたでしょうか?

今回は神鳴衆との合流……ですが歓迎されてないですね。歓楽街には無かった都会や森での戦闘が盛りだくさんですので、楽しみにしていただけると嬉しいです。

それでは、感想や評価、ブックマーク登録などしていただけると嬉しいです。

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