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妖狐のハンコウキ  作者: 烏丸 和臣
大躍祭
53/64

鬼と薔薇と星

 ここは妖狐衆アジトの応接室。そこで僕達全員が集まっていた。


『えぇぇぇぇぇええ⁈ 祭りが無くなるーーーーー⁈』


 そこでは僕、お頭、久世さん、沢田さんを覗いた全員が目を見開いて驚愕していた。


(あの……誰か、説明してくれない?)

 僕は周りから置いてけぼりにされてただ立ち尽くすしかなくなっていた。


「あ、あの……祭りって……なんですか?」


 我慢できなかった僕はとうとうそれを聞いた。すると全員が一気に僕の方を振り向く!


(え、なに? そんな「知らねぇの? お前」みたいになる程なの? 祭りって)

 僕はそんな思いも相まって信じられないくらい目が泳ぐ。するとお頭が何か思い出したかのような顔になる。


「……そうか! そういや教えてなかったな。ちょうど良いから教えてやる」


 なんとこう言ってくれたのだ。長く待ち侘びた助け舟に僕は心の中で飛び跳ねた。それと同時に皆からの視線も一気に減った。

 そしてお頭が説明してくれる。


「祭りってのはこの街にずっとあるやつでな、司法府も統治組織もこれだけは必ず協力してやるそれが「灯篭祭」だ。確か戦中に始まって今年で23回目だったかな?」


「街中に灯籠を灯して組織ごとに屋台出したり打ち上げ花火やったりする歓楽街の一大イベントっすよ!」


 青山が興奮気味で話す。おそらく本当に楽しいものなんだろう。


「なるほど……で、それが無くなりそうだと?」


 やっと理解できた僕はようやく本題に追いついた。


「あぁ、そこは私から説明しよう」


 すると久世さんが口を開いた。皆一言も聞き流すまいと集中している。


「灯篭祭は毎年交代で幹事を務める組織が決まるんじゃが今年は私らがやることになってな。早速動こうと白蓮組に連絡を入れたら……奴らが来たんじゃ」


「奴ら?」


 龍樹さんの眉間に僅かに皺が寄る。


「……深淵アビス連合のリーダー達です」



『!!』


 沢田さんの言葉を聞いたその瞬間その場の空気が一気に固まる。


深淵アビス……連合だって?)

 深淵アビス連合。その実態はどちらかといえば半グレ組織に近いものだ。数ある武闘派組織の中でも異端な存在であり、尚且つ革新派の筆頭である組織だ。

 その組織が祭りの幹事を行う久世さんの元に来たというのだから嫌な予感しかしない。


「そして奴らはワシの目の前に一枚の紙を出した……そこには全組織の中でも革新派となる組織の名前が羅列され最後にこう書かれておった」


「な、なんと……?」


「……我々深淵アビス連合を始めとする20組織は、灯篭祭の中止を要求する。聞かぬのならばそれ相応の代償をいただく……とな」


 その言葉はまさに青天の霹靂……全員が声も出せずにただ呆気に取られていた。


「保守派を仕切っていた佐々木が死に、奴らからしてみれば目の上のたんこぶが消えたに等しい……」


「それによって深淵アビス連合が動き出した……と」


 お頭が捕捉するがそれでも驚きは消えない。


「ですが、祭りを止めて何になるのでしょうか? 彼らにメリットがあるとは到底思えません」


 そう、そこが問題なのだ。深淵アビス連合はほとんど巨大な半グレ組織と変わらない。いくら革新派だとはいえ他の組織までも街の祭りを潰す事に賛同するなんておかしい。


「とにかく、このまま祭りがおじゃんになることはみんな避けたいだろ?」


 お頭が同意を求めた時、僕も含めて全員が頷いた。正直言ってしまうと僕は「祭り」なんてものに参加した記憶がない。知っているのは歴史の授業で語られる程度のこと、つまりゼロに等しい。


(せっかくやれそうなのに潰させてたまるかよ!)

 僕はここでもっと毎日を楽しみたい。今までの人生で冷え切った思い出を温かいもので埋め尽くしたいのだ。


「奴らを止めましょう! そして、祭りを成功させるんです!」


 僕の声に青山を始め、皆が賛成してくれた。


「よし、それじゃあ深淵アビス連合について情報を整理するぞ!」


『はい!』


 そうして舎弟衆が中心となり直ぐに準備が整えられた。


「まず敵戦力の把握だ。青山、頼む」


「はい。現在確認されている戦力は構成員が三組織合わせて129名、幹部は9名です」


(ん? 聞き間違いかな……「三組織」って聞こえた気がするんだけど……)

「ね、シオン」


「何?」


深淵アビス連合って三組織なの?」


 僕はそんな疑問を近くにいたシオンに聞く。


「そこからなの? ……深淵アビス連合は元々三つだった組織が集まってできたの。鬼人隊、死露刃羅しろばら、そして哭星会こくせいかい。それぞれのリーダーが一級の武闘派で実際に一番地区の3割近くを統治してるの」


「なるほどね……」


 なんとなくの前提知識を得たところで青山が続ける。


「基本的に構成員は例外を除き、全員10代から20代前半。一番地区の東側を支配下に置いており、付近の半グレも取り込んでさらに強大になっています」


 すると青山が分厚い書類の束を取り出し、その中から紙を数枚並べる。


「幹部はほとんど顔が割れています。

 まず、鬼人隊総長の阿久比貞信。一弱小半グレ組織でしかなかった鬼人隊を大組織まで育てたカリスマと戦闘力の持ち主です。

 そして、その護衛である双六すごろくと清水。両名ともにあの淺間や赤坂達と互角に殺り合ってきた猛者です。

 そして死露刃羅しろばら代表の美麗びれい。元々この街の出身じゃなかったそうですがその美貌とリーダーシップで店を3年連続売り上げ1位に保っています」


(ん? 店? 売り上げ? ……どゆこと?)

 とてもおかしい。今は深淵アビス連合の情報共有をしているはずなのになんで店の話が出てくるんだ?

 そう僕が混乱しているとシオンが教えてくれる。


死露刃羅しろばらは半グレだけど自分たちで風俗店もやってる。ほら、シマにあるでしょ? 「ホワイトローズ」。あそこが奴らの店」


「確かにあるけど……ん? ちょっと待って、なんでウチらのシマに奴らの店があるの? 追い出すべきでしょ!」


「「店や産業に関しては手出ししない」それがこの街の暗黙の了解なの。奴らはそれを利用して実に15店舗を各地に構えてる」


「マジかよ……」


 その時僕が思い出したのはお頭の言っていた奴らの統治方法。あの時は教えてくれなかったが今なら分かる気がする。


(武力は鬼人隊。金は死露刃羅しろばらか……)

 そう思っていると青山が続ける。


「美麗の護衛は咲夜と麗華ですが、事務要員ですので戦闘面はあまり気にしないで大丈夫だと思います。

 そして、1番厄介な哭星会。情報において信者の人脈は想像以上に脅威です。その教祖である巣流すりゅうは「神の術」として謎の現象を引き起こしているそうです。それを支えるのは還流と断獄、両名ともに1人で半グレを制圧できるほどの強さです。」


(嘘だろ……宗教まであるって、もうなんでもありじゃん)

 半グレで街を統治している。そう聞いてどんな奴らなのかと思っていたら想像の100倍異端だった。


「以上が現在割れている幹部です」


 青山が説明を終えるとお頭と久世さんが口を開く。


「いいか、今回の目的は祭りの開催を滞りなく成功させることだ。決して奴らと戦争をしてはならん」


「同時に私らの組織は人手が少ない。故にそちらの支援もお願いしたい」


(マジか……)

 現状は想像以上に厳しかった。「戦争をしない」これは本来なら話し合いで解決できる問題だ。しかし武闘派で血気盛んな鬼人隊、利益を最優先する死露刃羅しろばら、何考えてるかわからない哭星会。コイツらと対立せず向こうがNOと言っていることをYESと言わせる。

 それほどに難しい事はない。


「だから数を分けようか。百合、龍樹は金切一派と白蓮組とともに祭りの手伝いと護衛だ。奴らが仕掛けてこないとは限らない」


「分かりました!」「守らせていただきます」


「そしてリン、ヨウタ、シオンは深淵アビス連合のアジトに行って奴らと交渉してこい。何故祭りを止めるのか、奴らの目的も調べろ。それと舎弟衆は別れてそれぞれのサポートをしろ」


「し、承知しました!」「了解です」「わ、分かりました……」『はっ!』


 すると沢田さんが口を開く。


「交渉には私も同行しましょう。マシになるかどうか分かりませんが……」


(沢田さんも⁈)

 僕はそれを聞いた瞬間、久々の興奮を覚えた。実はあの戦争が終わった後、僕と沢田さんは少しばかりではあるが交流があったのだ。

 するとお頭が口を開く。


「じゃあこれにて解散。各自持ち場についてくれ!」


『はい!!』


 そうして応接室で行われた作戦会議は終了した。



 だがこの先、あんな事が起きるなんて誰も予想していなかったのだ。

さて、いかがでしたでしょうか?

今回は前回に続いて少し明るい雰囲気にしてみました。(今まで結構シリアスだったので……)

深淵連合……中々癖がありそうですね。どうなることやら、楽しみにしていただけると嬉しいです。

またコメントや感想、評価などありましたらしていただけると嬉しいです。

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