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妖狐のハンコウキ  作者: 烏丸 和臣
灯籠祭
52/77

成長と新たな問題

「よっと!」


 歓楽街を駆け抜ける一つの影、赤いフードを被り屋根から屋根へ飛び移る。


「安子おばあちゃん! どうも!」


「あらヨウタくん! いつもご苦労様ねぇ。はい、今月のお金よろしくね」


「分かりました!」


 そう、この僕だ。あの戦争が終わり、魔素苦が正式に傘下に加わってから1ヶ月が過ぎた。

 僕は未だ修行をしながら月一の集金を任されている。


「ヨウタの兄貴!」


 すると、どこからか声が聞こえる。


「こっちです。ここ、ここ!」


 声の聞こえてくる方向を向くと青山が走ってくるのだ。


「あぁ、青山。どうした?」


 青山はこちらに着くと息も整えずに口を開いた。


「南の4番通りでガキどもが暴れてます! おそらくどこにも所属してません! お頭から捕縛令が下されました!」


「分かった! すいません、安子おばあちゃん。行ってまいります」


「うん! 頑張っといで!」


「はい!」


 安子おばあちゃんと挨拶を済ませた僕は青山を担いで事件現場に急行した! 僕は屋根を黒い風のように駆け抜け、ものの数分で南の4番通りに到着した。


「おいコラァ! さっさと酒出せよ!」「弱え奴は強え奴に従ってりゃ良いんだよ!」


 そこでは一番地区からそんなに離れていないにも関わらず若い男達が酒屋で暴れていた。


「アイツらか?」


「はい」

 青山から確認をとった俺は奴と一緒に降りてガキどもと向き合った。


「おい、やめろよ。迷惑だろうが」

 最初は優しく声をかける。ここで大人しく引き下がれば良いんだが……


「あぁ? んだテメェ!」「俺らのこと舐めてんじゃねぇぞ!」

 そう言って奴らは堂々とナイフを抜いた。


(ったく、昼飯もまだだってのに……)

 俺は胸に微かな苛立ちを覚えながら刀を抜く。


「青山。簀巻きは頼んだ」


「合点承知!」

 そして次の瞬間、俺は爆発的な踏み込みで奴らに迫る!


「うぃぃぃいい⁈」

 いくら粋がっていようと所詮はガキだ。命の危険を感じれば本能的に顔を守ろうとする。


「それじゃあダメだな」

 そして俺はガラ空きの腹に峰打ちを叩き込む!


「ぐげっ!」

 奴の腹はへこみ、血を吐き出す。


「一丁上がり!」

 そのまま俺は青山の方へそいつを吹き飛ばした!


「な、なんだぁ⁈ こいつ!」「構やしねぇ! やっちまえ!」

 すると残りの2人が一直線に突っ込んでくる!


(めんどくせぇなぁ!)

 そして次の刹那、まるで嵐のような斬撃が降り注ぐ!


「オラァァァアア!!」「死ねよぉぉおお!!」

 奴らは俺を殺さんとナイフを振るうが、それが当たるなら淺間に勝てていない。


「隙あり!」

 俺は奴らの斬撃の隙を見つけて1人の太ももを深く抉った!


「ぐぎぃぃぃいい!!」

 それにより攻撃に隙間ができる。


「お前も喰らってろよ!」

 その瞬間、俺はもう1人に向かって強烈な唐竹割りを落とす!


「ぐぅぅぅうう!!」

 だが奴もすんでのところでナイフを滑り込ませる! しかし、


「喝ぁぁぁぁあ!!」

 俺は力を込めて強引に奴をナイフごと叩き潰す!


「こぺぇぇぇええ!!」

 それによって奴の頭はU字にひしゃげた! 


「こんのぉ……バケモンがぁぁあ!!」

 その時、最後の1人が俺を突き殺しにくる!


「うおっ!!」

 俺はギリギリで躱すが首の薄皮が裂ける。


「チッ!」

 だがそんな程度じゃ止まらない。


「お前にゃとっておき見せてやるよ!」

 そして俺は奴の顔めがけて横薙ぎを繰り出す!


「ぐぅぅぅうう!!」

(大丈夫、避けれる!)

 そして奴が体を晒した瞬間、


幻刃げんじんしん!!)

 俺は能力を発動し刀を伸ばす!


「うぃぃぃぃいい⁈」

 突如間合いが伸びた事で奴の反応が遅れる! そしてなんとか避けるものの体勢が悪いなんてものじゃない。


「よっと!」

 次の刹那、奴の腹に刀の柄尻をぶち込む!


「ガハッ!」

 奴は血を吐き出し白目を剥いてその場に崩れ落ちた。


「ふぅ。任務完了!」


「お疲れ様です」

 その時、青山がちょうど2人目を簀巻きにしたところで間も無くして3人全員が簀巻きにされた。


「黒川さんに連絡入れてから……帰るか!」


「はい!」

 その後、僕達は黒川さんこと司法府に連絡を入れた後アジトに帰還した。


「お疲れ様です。ただ今戻りました」


 僕が戻ると、丁度お頭と久世さん、白蓮組の沢田さんが話している最中だった。


「おう、ヨウタお疲れ。収穫は?」


「はい。元佐々木組のシマにいた方々にもしっかりと払っていただきました。ですが……一番地区の2店舗から支払いを拒否されました」


「そうか……それで、前月比は?」


 お頭が少し真剣な顔になる。


「前月比……バチバチプラスです♪」


 僕がピースしながらにこやかに答える。


「よくやった! 多分お前ら昼飯まだだろ? 台所にそば置いてあるからシオンと一緒に食べて良いぞ」


「ありがとうございます♪」「失礼しました!」


 そうして僕達は訓練場にいるシオンに声をかける。


「シオーン! 昼に蕎麦作るけど何入れる?」


「なんでも良い」


「はいよー」


 最低限の会話を済ませた後、僕と青山で蕎麦を茹で始めた。


「さて……何入れよっかな……」


「俺かき揚げ♪」


「あ! ずりぃ、じゃあ僕は冷やしておろし乗せよっと」


 そんな風に話しているうちに蕎麦が茹で上がる。


「あらかじめ作っといた出汁とつゆを用意して……麺は氷水で締める。後はかき揚げとおろしに……シオンは、適当な天ぷらでいいか」


「最後に薬味を置いて、完成!」


 そうして完成した蕎麦を運び、青山がシオンを呼ぶ。


「シオンの姉貴! 昼飯出来ました!」


「……分かった」


 シオンは一度訓練を中断して訓練場から上がってくる。

 そうして全員座ったところで、


「じゃあ……いただきま……」


「ぬわぁんですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ⁈!」


 三人で蕎麦を食べようとした瞬間、お頭の声がアジト中に響き渡る。その瞬間、あまりの衝撃になんと蕎麦が宙に浮く!


「うわぁぁぁあ! っとっと、と、と……セーフ……」


 僕はなんとかひっくり返りかけていた蕎麦をギリギリで受け止めた。


「なんだよ……何があったんだ?」


 そうして僕が応接室を覗いた瞬間、久世さんと沢田さんがしょんぼりした表情をしている。

 久世さんと沢田さんといえば佐々木亡き今の保守側の筆頭であり穏健派として各組織と友好関係を持つ組織の要だ。

そんな人達がお頭の大声の後に暗い顔をしているなんて何かがあるとしか思えない。

 すると久世さんの正面ではお頭が頭を抱えていた。


「あ、あの……どうされたん……ですか?」


 僕は勇気を振り絞って部屋の扉を開け、聞いてみる。


「あぁ、ヨウタか……そうだな、みんなを呼んでくれ。そこで話す」


 お頭はそう言うが空気が悪いなんてものじゃない。さっきの声といい、何か異常があるのは明らかだ。


「わ、分かりました!」


 僕は直ぐに通信装置を通して見回りに行っていた百合さんや龍樹さん達を呼んだ。事情を説明すると10分程で全員が揃った。


「お頭、全員揃いました」


 僕が報告するとお頭の口がゆっくりと開く。


「皆、聞いてくれ」


『……』


 僕も皆も、魔素苦メンバーも今までにない重苦しさに息を呑む。


「皆……祭りが、無くなりそうだ」


 そしてお頭が放った言葉は意外中の意外。


(ん? 祭り? どういうこと?)

 僕はなんのことか全くわからない。だが、


『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええ!!』


 僕の混乱をよそに皆は目が飛び出そうなほどに驚く。


「皆さん……すまない……」


 久世さんも沢田さんも神妙な面持ちだ。


(あの……誰か……説明してーーーーーー!!)



 そうして僕達は新たなる困難に直面することとなる。

さて、いかがでしたでしょうか?

今回は少しばかり時を飛ばして1ヶ月後のヨウタ達が出てきました! 最初はチャカも使って半グレ2人がやっとだったのにこんなに強くなって…(泣)

さて、今回の章は「大躍祭」何が起こるのか、ご期待ください。(ついでにヨウタも少し自信がついたのか戦闘中限定ですけど一人称俺になってます)

それではコメントや感想、評価などありましたらしていただけると嬉しいです。

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