妖狐佐々木戦争 アサシンvsアサシン
ここは妖狐衆アジト。そこで全員で作戦会議が行われていた。
「さて、昨日の作戦を決行するのに当たって一つ問題がある」
「はい。人数差ですよね」
お頭の言葉に百合さんが答える。
「そうだ。俺たちは6人だが向こうは8人。しかも同時にやらないといけない……だから向こうの幹部を最低一人は減らさないといけない」
「ですが誰を狙いますか? カメラを仕掛けた場所も限定的過ぎて向こうの動きはつかめませんよ……」
その時青山が口を開いた。
「あの……あくまで私個人の意見ですが。赤坂を狙うのはどうでしょうか?」
その口から飛び出したのは予想だにしなかった名前。
「赤坂? 何でだ?」
お頭がそんな問いを投げかける。
「実は武闘派幹部の中で赤坂が唯一シマの集金に赴くんです」
「……それは本当なんでしょうね?」
衝撃のことに百合さんが疑いの目を向ける。
「はい。これは確かな情報です。私たちは過去に佐々木組の幹部を狙おうと調べていた時期があったのですが、その時に赤坂だけが集金の現場に現れていたんです」
「なるほど。その情報が正しいならかなり有益だな。赤坂はいつその集金に現れるんだ?」
「おそらく時期的には……本日。時間は昼前ぐらいが多いかと」
「今から二、三時間後だな……誰かやれるか?」
「私に行かせてください。相手がアサシン上がりならおそらく適任かと」
「分かった、シオンは準備してこい。青山はシオンと一緒に出る支度しとけ」
「「分かりました」」
そう言って2人は部屋を出た。その後他のメンバーも各々の持ち場に戻った。そうして、仁義も何もない奇襲作戦が実行に移ることとなった。
◆◇◆◇
その後とある一室でリンさんが銃を磨きながら物思いに耽っていた。
(私……ほんとに戦えるのかな……)
そんな思いがリンさんの胸中を支配していた。この戦争、百合さんは(僕も)佐々木組のシマ内にヤサを作り基盤を整えた。龍樹さんは伍人組のコブラと武闘派幹部の蛇川を打ち倒した。お頭とシオンも襲撃をかけてきた米倉と柳を戦線離脱させている。
だがそんな中で佐々木組の打った「ヤサの急襲」という一手。それによって戦況は膠着状態になったといってもいい。その結果シオンの立案によって総力による奇襲作戦が採択されたのだ。
だがリンさんにはそれとは全く違う標的がいた。
(あのクソをこの手で葬らないと気が済まない……)
その標的とはあの日、リンさんを襲撃した男だ。あの日以来リンさんの内側ではあいつに対する怒りが静かに燃えていたのだ。
「シオンちゃんが赤坂を急襲、その後に全面戦争だって言うけど……アイツがいるだけで計画が崩れかねない。私がやらないと……」
そう、今回シオンが立案したこの策にはリンさんを狙った奴への対策は何もない。
戦争に関係ない第三勢力だと考えれば良いのかもしれないがリンさんが聞いたという「腕をもらう」。そして元魔素苦構成員の怪死体も腕が切り取られていた。
(偶然じゃない……恐らく同一犯の仕業)
そうならばかなりマズい。相手が戦争に飛び込んでくるようなことになれば計画もあったものではない。
そうしてリンさんが銃を磨いていると誰かが部屋に入ってくる。
「こんな時に銃を磨くなんて……パイセンも変わった事しますよね」
入ってきたのは龍樹さんだ。
「……何も、変わった事なんて……ないよ……」
その言葉にリンさんは目を見て返せない。そしてリンさんの手が髪に触れた時、
「……緊張すると右側の前髪を気にする」
龍樹さんがそう言った。その言葉を聞いてリンさんが固まる。
「いつもはしたがらない正座をする。何かしてないと落ち着かない。オマケに、戦闘の前には必ず銃を磨く……間違ってますか?」
龍樹さんはリンさんの癖を全て言い当ててみせた。
「……何で知ってるの?」
「逆に何で知らないと思ったんですか? 何年も一緒にいれば分かりますよ……皆に黙ってアイツに復讐するつもりでしょう……」
龍樹さんの言葉はさっきよりも鋭く、確信をついていた。しかしその声色は追求よりも心配の色の方が強かった。
「分かってるなら良いでしょ、黙ってて……」
そんな龍樹さんの言葉をリンさんは目も合わせずに突き放した。そして弾薬と炸裂弾を用意する。
「黙りません」
「黙っててよ……」
「黙りませんよ」
「何で……私の勝手な仇討ちなんだから関係ないでしょ……」
リンさんの瞳から一滴の涙が落ちる。リンさんの言葉が深く刺さったのか龍樹さんも黙った。
「もう……放っておいてよ……」
「……リン。俺言ったよな、守らせてくれって……」
その時、龍樹さんの口調が変わった。
「……」
リンさんはただ黙ることしかできない。
「リンの仇討ちに首を突っ込みたい訳じゃない。でも黙って行くのだけはやめてくれ。俺が、リンを守れない」
そして懇願するようにそう言った。
「……分かった……」
そしてリンさんはその言葉に何かを動かされたのか静かに了承した。
◆◇◆◇
そして2時間後、シオンと青山が準備を整えた。
「用意は良いか?」
「は、はい!」「いつでも……」
そしてシオン達が位置についた。
(ドライブ、1)
シオンの身体能力が上がり、その背には青山がおぶられている。
「ヨウタ、今だ」
「はい! 吹っ飛べぇぇえ!」
僕がそう言ってボタンを押した瞬間、アジトの上空に爆弾が飛び上がる。そして閃光と轟音を伴って爆発した! それと同時にシオンが飛び出した。
(うまく行ったかな?)
あれを爆発させた理由、それは敵の目を欺くためだ。今僕達は周囲を30人程の佐々木組構成員に見張られている。闇討ちをするのにその初動がバレては意味がない。だから僕があれを爆発させて敵の注意を惹き、その隙にシオン達が飛び出して監視網を掻い潜ったのだ。
「……頼んだよ、シオン」
◆◇◆◇
そしてシオン達が潜伏したのは佐々木組のシマ内にある質屋「金時」。
「ここに奴が来るの?」
「はい、もうそろそろ……」
そうしてシオン達が待っていると道の奥から1人の男が歩いてくる。
「チィース、集金に来ましたよぉ」
現れたのは青い髪を束ねた若い男。
「あれが?」
「はい、間違いなく」
その男こそ赤坂だ。軽い印象のある話ぶりからは想像できないほどの隙のない動き、そしてその空気は針のような鋭さを帯びていた。
「あぁ赤坂さん。いつもご苦労様です。こちら今月分のお金です」
そうして店主らしき老人が出したのはかなりの大金。
「ひぃ、ふぅ、みぃ……ありがとうございます。全部ありますね……ですが店主、ネズミ退治くらいしてもらわないと……」
その時、赤坂の空気が鋭さを増す。
「ネズミ? 最近見ませんが……」
「いるじゃないですか……罠を抜けた狐顔のネズミが!」
その瞬間、シオンと青山の顔の横を弾丸が掠めた!
「なっ⁈」「えぇぇぇえ⁈」
赤坂は既にチャカを放っていたのだ。
「降りてこいよ……そこにいるんだろ?」
するとシオンはゆっくりと立ち上がって奴を見据える。そして小太刀を抜いて奴と向かい合った。
「さぁ……始めようぜ……」
その刹那! 奴が2丁拳銃を抜いて乱射する!
「風穴空いとけよぉぉぉぉお!!」
拳銃から放たれたとは思えない程の弾丸の雨がシオンの身を削る!
「ぐぅぅぅぅぅう!!」
だがシオンも負けじと奴の間合いに踏み込んだ! そして逆袈裟を跳ね上げる!
「見えてんだよぉぉぉお!!」
だが奴はチャカでそれを受け止めた! そして奴もナイフを抜き、嵐の如き斬撃が飛び交う!
「ハッハァァァァァア!!」
「早く死んで……」
赤坂も驚異のナイフ捌きを見せるが白兵戦ではシオンがやや有利。奴の体から鮮血が吹き出す。
「クソがっ!」
(早すぎんだろ!)
その刹那、赤坂がシオンの間合いから強引に飛び出した! そして同時に鉛玉をばら撒く!
「これはどうだぁぁあ⁈」
「チッ!」
シオンは何とか逃げようとするが反応が遅れる。そしてその腹に鉛玉が1発捩じ込まれた!
肉が裂け、血が滲む。
その時、奴が二丁に構えて乱射する!
「お前、遠距離苦手だろ⁈ なら一生遠距離でやってやるよ!」
そう笑いながらシオンを追い詰める!
(……どうしよう……)
シオンは窮地に立たされていた。
◆◇◆◇
時を同じくしてリンさんも動いていた。
「龍樹さん……ありがとう……」
「えぇ、気をつけて……」
そうしてリンさんが向かったのはあの路地裏。リンさんが入った瞬間、その場をドロリとした殺気が支配する。
「早いのね……アナタ……」
リンさんの背後に立つのはフードを深く被った謎の男。
「狐の女。腕を、貰うぞ……」
「それはさせないわよ、マムシさん」
その言葉を聞いた瞬間、奴の気配に燃えるような怒気が混ざった。
「……殺す……」
「やれるなら、やってみて……」
そしてこの2つの場所で戦闘が繰り広げられるのだ。
さて、いかがでしたでしょうか?
今回はついにリンの戦闘シーン! ……と意気込んでいたのですがそれは次回に持ち越しと言う形に……また、評価やPVが順調に伸びてきて嬉しい限りです。
ではコメントや感想、評価などありましたらしていただけると嬉しいです。




