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王国の騎士エドワールの覚悟

 一人の男が、王国軍の陣地から出ていく。彼は不運にも、砦に送られる使者に選ばれてしまったのだ。戦争状態に突入している現状では、問答無用で殺されてもおかしくない。


(重要な役目だ。私の両肩には王国の存亡がかかっている。これ程の立派な砦を築いている相手が、手強くないはずがない。)


 王国は今、存亡の危機を迎えていると言っていい。現状で抱えている戦線だけでも手一杯なのに、ここで死の荒野との戦線を抱えてしまったら、完全に飽和する。


(この任務は、何が何でも成功させなくてはならない。私は貴族だ。貴族は国を護るのが使命、例えこの身がどうなろうともだ。ましてやこの戦場を作ってしまったのは、この私だ)


 そう、彼は先の調査部隊の隊長だった男である。己の失態を取り戻すべく、彼の士気は高かった。この任務が戦闘だった場合、彼は死兵と化していてもおかしくはない程である。


「トマレ」

「私は王国の騎士、エドワールだ。この砦の守将との面会を希望する」

「シバシマテ」


 砦に声が届く距離まで近付いた彼に、停止の声がかかる。彼は国際標準の形式に則っていたが、相手に伝わるかは不明であった。何せ相手は動く骸骨を兵士にしているのだ、使者だと気付かず殺される危険性もあったのだ。


 しかし、それも杞憂に終わり、相手はこちらを使者だと認識してもらえたような対応を取ってくれた。最大の難関を越えた彼は一息つくことができたが、それに負けずとも劣らない関門が待ち受けている。


「ハイレ」


 砦の門が開くと彼を呼ぶ声が届いた。声に従い門を潜ると門は閉められる。中に入った彼は異様な光景を目にする。わかっていたことではあるが、砦の中は骸骨だらけだった。彼は無意識の内に全身に力が入っていたが、それは仕方のない事だろう。


「ツイテコイ」


 先程から対応にあたっていた骸骨が声をかけてくる。周りの兵と鎧の形状が異なることから、それなりに上の立場の者なのだろう。骸骨兵の案内に従い歩いて行くと、机も椅子も無い広間に通された。何人かの骸骨が左右に別れて、板張りの床へ直に座っていた。その奥に彼と対面する形で、一体の骸骨が座っていた。


 左右に別れている者たちも先程の案内の骸骨兵より上位の者たちと判るが、奥に座っている者はさらに上位の者だと一目で判った。案内の兵が一礼して立ち去ると、奥にいる骸骨が口を開く。


「私ガコノ砦ヲ預カッテイル者ダ。要件ヲオ聞キシヨウ」

「はっ、私は王国の騎士エドワールと申します。我らと和平の話し合いをして頂きたく、その先触れとして参りました」

「フム、和平トナ?」

「はっ」

「アイ判ッタ。私ノ一存デハ決メラレヌ故、我ガ主ヘトオ伝エサセテ頂ク。ソノ間ハ部屋ヲ用意サセル故、ソチラデ待タレルガヨイ」

「ご配慮頂き、ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きます」


 彼は別室で待たされる事になるが、任務を達成する見通しが立った事に安堵の息を吐いた。後はこれを本陣へと伝えるだけである。もっとも不死王が了承するとは限らないので、安心するにはまだ早いのだが。


 王国側から和平の申し出があったと知らされた不死王は、その了承と話し合いの場所と時間を指定する。その返事は騎士エドワールに伝えられ、彼はそれを手に陣地へと帰っていった。

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