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銃と魔法のダンジョン世界でクリアするまで出られないデスゲームが始まりました  作者: 木山碧人
第二章 ガンズオブインフェルノ

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第39話 弱点


 コキュートス、第二樹層、水窟の間、湖の外れ。


「最後尾は押し付けたが、追ってくるなら、失敗ではないのか?」


 先頭を駆け抜けるマクシスは、おもむろに尋ねてくる。


「何を言ってる。成功に変えるのはこれからだ。――輝晶石は持っているか?」


 そのやや後ろに続くパオロは、的外れな質問に呆れ気味に尋ねる。


「あるにはあるが、明かりにしかならん物を、なんに使う」


「爆破草があった暗がりに投げろ。僕が狙撃して、起爆させ、分断する」


 あれだけの量だ。起爆すれば、洞窟の壁は崩れるだろう。


 退路が断たれた後方のあいつらは、骸骨と戦わざるを得なくなる。


「……なるほど。その手があったか。考えたな」


「感心してる場合か。来るぞ!」


「よし、来た」


 そう言って、マクシスは懐から紫色に淡く光る水晶。


 輝晶石を取り出し、放り投げた。


 放物線上に、紫色の光が流れ落ち、照らす。暗がりの場所を。


「な……っ!?」


 しかし、目の前に光景に、目を疑った。


 そこには、何もなかった。頼みの綱であるはずの爆破草が一つも。


「目論見が外れたようだな。どうする?」


「くっ……」


 想定外の事態。普段なら、すぐに代案を用意してやるところだが。


 浮かばない。酸欠の影響か、頭がフラフラして、考える余裕なんてなかった。


「ないか。ならば鏡窟の間を利用する。意味は分かるな?」


「事故待ち、か……」


「そうだ。初見では普通覚えられない。分断を狙うには悪くはないだろうよ」


「……」


 悪くはない。悪くはないが、良くもない。それだけは分かる。


(いいのか、こんなので……)


 呼吸を整えながらも、消費され続ける酸素で頭を回すも、答えは出ない。


「代案があれば、私はそれでも構わないが?」


 沈黙から悟られたのか、その胸中を察したように、マクシスは尋ねてくる。


「ルーカス! まだ、走れるな!?」


「な、なんとか! 後続がいる、おかげで……」


「――あぁ、もう、乗ってやる! それしかないようだからな!」


 むかつく野郎だ。なんて悪態をつく余裕もなく、出口を目指した。


 ◇◇◇


 コキュートス、第一樹層、鏡窟の間。


「次は、どっちっすか!?」


 目の前には、鏡のように反射する道と三叉路。


 先頭を走るメリッサは、声を荒げながら、三択の答えを尋ねてきた。


「えーっと、確か、左!!」


 同じく先頭を駆けるジェノは、少し遅れて回答する。


 このダンジョンは、初見。とはいえ、記憶力には自信があった。


「その次は!?」「右!」「次の次は!?」「その次は真ん中で、その次は――」


 夢中になって正解の道を選び続ける中、


「――待つっす、ジェノさん! 後ろを見るっす!!」


 後ろを振り返っているメリッサは、唐突に叫んだ。


「……っ!?」


 そこには、体から蒸気を出し、満身創痍のギリウスの姿。


 そして、その背後には、骸骨の群れがすぐそこまで迫っていた。


(馬鹿か、俺は……。ギリウスさんの体のことは、聞いていたはずだろ!)


 三分の活動限界。火傷の後遺症で熱の処理ができない。その弊害が出ていた。


(いや、後悔するのは、後……。今はどう乗り切るかに、頭を回すんだ……)


 このままだと、すぐ後ろにいる骸骨に巻き込まれる。


 ゆっくり考えられる時間もないまま、危機は迫っていた。


(何かないか……。敵だけを閉じ込められるような、都合のいい、何か……)


 考える。考える。考える。記憶、経験、直感、それら全てを総動員させて。


(――閉じ、込める……? そうか、あれならっ!)


「メリッサ! 黒い影を広範囲に展開! あの群れを分断して!!」


「……っ!?」


 すると、メリッサは驚きの表情を浮かべている。


(どっちだ……。この反応)


 でも、願うしかなかった。予想が的中し、事態が好転することを。


「――燦爛と輝く命の煌めきよ、幽々たる深淵に覆われ、虚空の闇へと堕ちよ」


 返事をする間もないまま、詠唱を終える。


 すると、メリッサの両手には白と黒の手袋が装着されていた。


「なんとかなれっ!」


 続いて、左手を地面に置くと、出現する。――黒い影が。


 そして、影はぐんぐん広がり、後方のギリウスのところまでたどり着く。


(合ってたんだ、やっぱり……っ!)


 予想が的中したのは間違いない。でも、安心するのはまだ早いみたいだった。


『『『『『ガ、ガガ――』』』』』


 黒い骸骨の群れが、ギリウスになだれ込もうしている。


(駄目だ。……俺も手を貸さないとっ!)


 いてもたってもいられず、左腰のホルスターに手をかけ、グリップを握り、


「――当たれっ!」


 すぐさま、後方の骸骨に向け、放つ。放つ。放つ。


「閉じろっすっ!!」


 それと、ほぼ同時だった。目の前に展開する黒い影が閉じたのは。

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