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 クレイは焼きあがったパンを見て、感動した声を上げた。

 「これ……町のパン屋と同じ匂いがする……」

 「うむ……ちょっと焦げてしまったが、まあ、問題はないだろう」

 ステアはパンの出来上がりに、少々不満があるようだが、初めて作ったパンにしては上出来の部類だろう。

 発酵がうまくいかず、ぺったんこで、火加減が強すぎたせいで少し黒く焦げていたとしても、パンはパンだ。

 「うん、良い香りだ」

 オレは出来立ての熱々パンを一つ手に取る。

 「師匠が最初だ!」

 クレイがオレからパンを奪い取り、ステアに渡した。

 「うむ、いただこう」

 ステアは一口かじり「うむ?」と首を傾げる。

 「不味い?」

 クレイが不安そうに聞いた。

 「昔食べたものと全然違う」

 「昔って、どこで食べたんだよ?」

 「昔、とある国の王が晩餐に招待してくれたんだ。そこで食べた」

 「王のコックとクレイの腕を比較すんじゃねえよ」

 「なぜだ?作り方は同じだろう?」

 「レシピは同じでも、料理は経験がものを言うんだ。ワインも同じだろうが。その道10年のプロと、初心者が作ったものじゃあ、まるで出来が違う」

 「た、たしかに……そうか、レシピさえあればいいと思っていたが、違うのか!」

 ステアはオレの言葉に、目を丸くする。

 クレイは不安そうな顔をしながら、オレ達を見て、パンを口に運んだ。

 「!」

 一つ目をぺろりと平らげ、二つ目に手を伸ばす。パンの熱さも気にならないのか、口いっぱいに頬張っている。

 「おいしいか?クレイ?」

 ステアの言葉に、クレイは何度も頷く。

 オレも一口食べてみた。

 全然柔らかくないし、もそもそしているし、焦げくさい。

 しかし、身がぎっしりと詰まっているし、小麦粉が良いせいか甘く、美味しかった。

 「うん、美味い。初めてにしては上出来だ」

 「これが、初心者の味か……」

 ステアも納得したように食べている。

 「魔法でパン造りをするのはもう少し先にしよう。もっと練習すれば、もっとおいしくなるはずだ。魔法を使うのはそれからで良い」

 ステアの言葉に、クレイはこくりと頷いた。

 ステアには人間の子育ての他に、もう一つ目標ができたようだ。目が燃えている。

 目玉焼きも、野菜のスープも十分においしかった。

 クレイもやる気を見せ始めた。ステアに料理の本を読ませてくれとお願いしていた。

 ただ、一つ問題があった。

 クレイは文字を読めなかったのだ。 


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