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ジルバーン公爵様の発言により、バルディウス殿下とルナリー様が正式に婚約された。これは非常にめでたいことで、食堂にいる誰もがにこやかな顔つきになった。
「バルディウス、ルナリー嬢婚約おめでとう。二人が正式に結婚するためには、宮廷の許可を得なければならないが、そちらには私が手を回しておこう。おそらくそれで特に問題となることもなかろう」
ジルバーン公爵様はどうやらバルディウス様とルナリー様の結婚に力を貸してくれるらしい。こんなに心強いことはない。
「父上、お手数ですがよろしくお願いします」
バルディウス殿下がそう言った。ルナリー様は顔を輝かせている。よほどうれしいようだ。
「二人の婚約を記念してとっておきのワインを開けよう」
ジルバーン公爵様がそう言い、使用人に命令すると使用人は樽を持って来た。そして樽を開けて中身のワインを全員に配った。このワインは出来が良く当たり年と呼ばれた年に作られたもので、非常においしいものらしい。
「二人の婚約を祝して新ためて乾杯しよう、乾杯!」
ジルバーン公爵様がそう言い皆それぞれのグラスに口を付ける。口をつけた瞬間皆があまりのおいしさに表情を変えた。それほどおいしいワインなのか。僕は殿下の後ろに立って控えているだけでワインを口にすることはできない。おいしそうに飲むみんなを眺めているだけである。
おいしいワインに豪華な食事と婚約してめでたい二人という話題もあって晩餐会はつつがなく進行していった。そして料理もあらかたたいらげワインの樽も空けて晩餐会は終了ということになった。
「ドレイク殿、今後は親戚づきあいとなる。よろしく頼む」
「公爵閣下、こちらこそよろしくお願いします」
別れ際に二人はそう挨拶をしていた。
「ルナリー、あなたを婚約者にできて今日は人生最良の日です」
「バルディウス様、私もです」
「名残惜しいですが今日はこれでお別れです」
「また会える日を楽しみにしています」
一方殿下たちは甘い雰囲気を作りだして別れを惜しんでいた。
こうして公爵邸で行われた晩餐会は無事に終わった。バルディウス殿下とルナリー様は晴れて正式に婚約を結ぶこととなり公爵邸はお祝いムードとなっていた。
僕達は晩餐会も終わり公爵邸の離れに戻ってきた。殿下はお茶の用意を頼み椅子へと座った。
「バルディウス殿下、ご婚約おめでとうございます」
ジルバーン公爵様やお客様であるドレイク様やルナリー様がいる前では口を開けなかったが、離れに帰ってきた今ならようやくお祝いの言葉を言うことができる。
「ありがとう、サモンド、アルベルト君。二人の協力があってこその婚約です。いやあ、本当に嬉しいですね」
殿下は本当に上機嫌でそう言った。
「協力してくださったエルドリッチ子爵様にもお礼をしなければなりませんね」
「ところで殿下、住むところはどうするんですか?今は公爵邸の離れに間借りしていますが、結婚してもそのままここに住むのですか?」
「確かに私は既に独立をしていて、さらに結婚するのにこのまま公爵邸の離れに間借りしたままだと外聞が悪いですね。結婚を期に新居を探すべきですかね」
「お金がかかりますね」
「リバーシの売り上げの一部と、ドラゴンレース実行委員会の副会長としての役職料と収入は独立したての頃より増えてはいますが、それでも余裕が十分にあるとは言えませんからね。新居探しは大変でしょうね」
「どうするんですか?結局このまま公爵邸の離れに住むのですか?」
「ルナリーの意見も聞いて二人で考えてみましょう」
「そうですね。奥様となるルナリー様の意見も重要ですね」
翌日、早速殿下はルナリー様へと面会を申し込んだ。面会要請はすぐに通り、ルナリー様と面会できるようになった。
「こんにちは、ルナリー。今日も会えてうれしいよ」
「こんにちは、バルディウス様。今日はどのようなご用でしょう?」
「実は、ルナリーとの結婚を機会に今住んでいる公爵家の離れから出ようと思うんだ。それで、ルナリーと住むことになる新居を探そうと思ってね。それでルナリーの意見も聞こうかと思って来たんだ」
「まあ、そうなんですか。確かにいつまでも公爵邸の離れに住んでいるわけにはいきませんものね。わかりました。一緒に新居を探しましょう」
「まずは王都の貴族街に空いている物件がないか物件を管理している王城の部署に行って訪ねてみましょう」
「では、お出かけになるのですね。支度をしますので少々お待ちください」
ルナリー様が出かけられる支度をするのを待って、僕らは一緒に王城へと出かけた。貴族街の物件を管理している部署に行き、空きのある物件はないか尋ねてみる。担当者は書類を調べ、いくつか空きがある物件があることがわかった。
「空きのある物件を実際に見てまわりたいのですが……」
殿下がそう言うと物件を管理している担当者が言った。
「いいですよ。ではこれから案内いたします」
「まずはこの物件からですね……」
案内されたのは立派なお屋敷だった。
「随分立派なお屋敷ですね。なぜこんな立派なお屋敷が空き家となっているんでしょう?」
殿下が疑問を口にすると案内してくれている担当者が言った。
「このお屋敷の所有者はもともと羽振りの良かった貴族の一族でしたが、ある時を境に金回りが悪くなりこのような大きなお屋敷を維持できないと言ってこのお屋敷を手放しました」
「これだけのお屋敷となると家賃も相当になるんじゃないのか?」
担当者に尋ねてみるとやはり高すぎて維持できない金額だった。
「もっと安い所を頼む。とてもじゃないがそんな金額は払い切れない」
「まあ、そうだと思ってました。次に案内するのは手ごろな金額ですよ」
そう言って案内されたのはさっきとは違い、手ごろな大きさのお屋敷であった。
「殿下のような役職持ちで格がある方にはぴったりの大きさのお屋敷だと思います」
始めからこっちを案内しろといいたいくらい理想的な大きさの屋敷だった。
「ルナリー、どう思う?先ほどのお屋敷と比べてちょうど良い大きさだと思うのだが」
「ええ、バルディウス様。良い大きさのお屋敷ですね。家賃の方はどうなんでしょう」
担当者に家賃聞いてみると無理なく何とか払えそうな金額だった。
「他の物件はこれ良い手狭な、役職を持たない平貴族用の物件しかないですね」
つまり実質これ1択である。
「ルナリー、ここに住むことになるけどいいかい?」
「ええ、バルディウス様」
そういうわけでめでたく新居は決まったのだった。




