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 殿下とルナリー様が王都内を散策するデートの当日がやってきた。殿下は入りすぎなほど気合が入っている。よほど今日のデートが楽しみだったようだ。


 「殿下、肩の力を抜いてください。もっと自然体でリラックスしてください」

 「そんなに力が入っていますか?リラックス、リラックス……」

 「では、ルナリー様を迎えに車を出します。殿下乗ってください」

 この日のために公爵様からドラゴンとドラゴンで曳く車を御者付きで借りてきたのだった。まずはルナリー様を迎えにルナリー様のお宅へと向かう。道中何事もなくルナリー様のお宅へと着いた。呼び鈴を鳴らし出てきた使用人にルナリー様へと取り次いでもらう。しばらくすると、美しく着飾ったルナリー様が出てきた。


 「ルナリー殿今日も美しいですね。服装も大変似合ってらっしゃいます」

 殿下が顔を赤らめながらルナリー様を褒める。

 「あら、殿下女性を褒めるのがお上手なのですね。うれしいですわ」

 ルナリー様はそう言って頬を上気させる。

 「ではこちらの車にお乗りください。今日は王都内を見てまわりましょう」


 殿下はルナリー様を車へと導いた。車は4つしか席がない。殿下とサモンドさん、ルナリー様とその侍女が座れば席がいっぱいとなってしまう。僕は御者席へ移って御者のおじさんの隣へと座った。車の中から時折声が漏れ聞こえるが、はっきりと何を話しているかまでは聞こえない。車内はうまく話が盛り上がっているだろうか?僕は心配をするのだった。


 そうこうしているうちに車は貴族様のお屋敷が並ぶ住宅街を抜け、中央区の市場へとやってきたのだった。ここで車を止め、市場を見てまわることになった。殿下たちが車を降りる。僕も御者席から飛び降り、殿下のところへと行くのだった。御者のおじさんは勿論留守番である。

 「ルナリー様は市場へは良く買い物に出かけられるのですか?」

 「いいえ、市場へ出向くことはほとんどありませんわ。今日は市場を回って見れるのですね。とても楽しみです」

 「それは良かったです。市場にある物はピンからキリまで様々のものがあります。掘り出し物が必ず見つかるとは限りませんが、見てまわるのはきっと楽しいですよ」

 そう言って殿下はルナリー様をエスコートしながら市場を見て歩いた。ルナリー様は市場を見るのが珍しいためか、目をキラキラと輝かせながらそれぞれの露店を見てまわっている。

 「市場っていろいろな物が売られているのですね。見ていて飽きませんわ」

 「そろそろお昼時です。昼食を食べに行きませんか?いい店があってそこを予約しているのです」

 「確かにお腹がすいて来ましたわ。殿下お勧めの店に行ってみましょう」

 「それではまず車のところまで戻って車で移動しましょう。そのお店は高級店が並ぶ通りにあるので……」


 再び車に乗り、殿下が昼食を予約しているお店へと向かった。そこはエルドリッチ子爵様からお勧めされた高級店であった。お店へと着いてみんな車から降りる。そこはきれいな店構えをしていて、いかにも高級店らしい気品さにあふれたお店だった。バルディウス殿下はルナリー様をエスコートしてお店に入っていった。


 「いらっしゃいませ」

 「本日予約を入れているバルディウスですが……」

 「はい、伺っております。ただいま席へとご案内します」

 こうして昼食は始まった。席へと案内された殿下たちの前にはおいしそうな食事が用意されたのだった。パン、サラダ、スープ、そしてメインは食肉用の家畜ドラゴンのお肉のいい所だけを使った赤ワインの煮込み料理であった。食肉用の家畜ドラゴンはまだあまり世間に広まっておらず、美味しい割にその数が少ないことから物凄く高級な食材である。見るからにうまそうな食事を殿下とルナリー様はたいらげていった。出されたものすべてを食べ終え、食後のお茶を飲みながら殿下はルナリー様へ尋ねた。

 「ここの食事はお口に合いましたか?」

 「ええ、とてもおいしかったですわ。特にドラゴン肉の赤ワイン煮込みは絶品でした」

 「それは良かったです。食肉用の家畜ドラゴンは出回り始めたばかりで、その数はまだ少なく限られた場所でしか口にできないのだそうですよ」

 「まあ。そんな貴重なものをいただけたのですか。殿下には感謝の言葉もありませんわ」

 「ルナリー殿に喜んでいただけるなら何よりです。午後はよろしければこの辺りのお店を巡ってみませんか?」

 「はい、殿下へお任せしますわ」


 こうして午後は高級店が立ち並ぶ通りを見た歩くこととなった。一軒一軒店を見てまわっては品定めをしていく。

 「何か気に入ったものがありましたら買って差し上げましょうか?」

 「いえ、殿下。それでは殿下に悪いですわ。それに見てまわるだけでもとても楽しいのです」

 「楽しんでいただけているなら何よりです。興味がある者を見つけたら遠慮なくおっしゃってください」

 「ありがとうございます、殿下」


 殿下とルナリー様は高級店をみてまわっていたが、次第に日も傾き始めた。ルナリー様を遅くまで連れ歩くことはできない。そろそろお別れの時間となった。

 「そろそろルナリー殿をお送りする時間となりましたね。今日も楽しかったです」

 「私のほうこそ楽しかったです、殿下」

 「私のことは殿下ではなくバルディウスと呼んでくれませんか?」

 「では私のことはルナリーと呼び捨てにしてください」

 「わかりましたルナリー。さあ車に乗ってくださいお宅までお送りしましょう」

 「ありがとうございます、バルディウス様」

 

 ルナリー様のお宅まで車でお送りすると、バルディウス殿下は別れの言葉をルナリー様に言った。

 「今日はこれでお別れですね、ルナリー。寂しく思います」

 「私もです、バルディウス様」

 「今日の記念にこれを受け取ってください」

 サモンドさんが殿下がこの日のために買っておいたブローチを差し出す。ルナリー様の侍女がそれを受け取り、ルナリー様へとお渡しした。

 「まあ、美しいブローチですね。ありがたく受け取りますわ、バルディウス様」

 「では、本日はこれにて失礼いたします。ルナリー、またお会いしましょう」

 「ええ、さようなら、バルディウス様。またお会いしましょう」


 今回のデートは無事に終わることができた。お互いを名前で呼ぶという進展も見られて、僕たちも非常に嬉しかった。後は婚約まで話が進むかどうかである。殿下の前途に幸あらんことを僕は願った。

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