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建国400年目の記念式典のドラゴンレースも終わり、平穏な日々を過ごしていた僕らであったが、今日はドラゴンレース実行委員会の招集があった。そのため僕らは、エルドリッチ子爵様のお屋敷へと集まったのであった。
「来年のドラゴンレースはいつやるのかという問い合わせが貴族からも平民からもたくさんあるらしいのだ。そこでみんなの期待に応えるためにも、少しでも早くから準備を進めようと思い本日は実行委員会のメンバーを招集したのだ」
エルドリッチ子爵様が今日の召集の理由を話した。
「そうですね。みんなの期待が高いのならそれに応えられるように早めに準備を行うことは重要でしょう。今回のドラゴンレースが大成功だった証ですね。喜ばしいことです」
「うむ、その通りですな。それではまず、今回のレースと次回のレースで大きく異なる点として、一つ目としてレース数が増えることが挙げられます。牡牝混合のブレウワルド国王杯と牝限定レースであるブレウワルド王妃杯の二つのレースを行うことが予定されています。これについてバルディウス殿下から説明を……」
「まず牝ドラゴン限定のレースが追加されることになりました理由を説明します。牡牝混合でレースを行う場合、牡ドラゴンのほうが牝ドラゴンより競走能力が高い傾向があり、牝ドラゴンが不利となります。そこで競走能力の高い牝ドラゴンを選出するために牝ドラゴン限定レースを開催することにしました。血統制を採用し能力の高いドラゴンを生み出すこともドラゴンレースの本義でありますので、能力の高い雄ドラゴンだけではなく、牝ドラゴンも選出する必要があるわけです。以上の理由により、牝ドラゴン限定レース王妃杯が行われることになりました。」
「殿下、説明ご苦労様でした。レースが増える件はこれでいいですか?では次に、レースへの参加を振興するために着順に応じた賞金を出す賞金制の導入の件ですが……。ウェスカー殿?」
「今回のドラゴンレースの収益をもとに賞金額を考えておきましょう。ところで来年のレースは予選から観客を動員して投票券を売るということで間違いないですね?」
「はい。来年からは収益確保のため予選レースは公開して行われます」
「わかりました。それも踏まえて賞金額の算定を行いましょう」
「レースの開催日はいつになるのか決まっているのですか?」
「春に予選を順に行い、夏の初めに本選を行う予定です。他に何か意見はありませんか?なければ次ですが、レース開催日にレース場に出店したいという陳情がありました。いかがいたしましょう?」
「レース場は王都郊外にあって周りに店などありませんからね。店があると観客にとっては便利でいいかもしれませんね」
「それでは出店店舗と出店料を入札を行い決めましょうか。ウェスカー殿これもよろしくお願いします」
「わかりました。お任せください」
「レース場の整備やレース当日の警備ですが、次回も今回と同じく王都軍の兵士に担当してもらいます。ブロンクス殿よろしくお願いします」
「承知しました。次回も問題ないよう取り計らわせてもらいます」
「今回の議題は以上でしたが何かほかに意見はありませんか?ないようならば、以上でドラゴンレース実行委員会の会合を終了します。皆様ご苦労様でした」
「ご苦労様でした」
こうしてドラゴンレースの会合が終わった。今回の会合の議題では、牝ドラゴン限定のレースの追加といい、着順に応じて賞金が出る賞金制といい、僕が理想とするドラゴンレースの在り方にまた一歩近づいた。僕はとても喜ばしい気持ちでいっぱいだった。
「アルベルト君、機嫌がいいですね?何かいいことでもありましたか?」
「はい、バルディウス殿下。ドラゴンレースの事業が順調に前へ進んでいるのがうれしいんです。来年のドラゴンレースもきっと大盛り上がりになるでしょう。今から楽しみです」
「そういえば、ドラゴンレ-スはアルベルト君が考えたものでしたね。ドラゴンレースが順調に進んでいるのは発案者としてはうれしいことでしょう」
僕と殿下はそんなことを話しながら家路についた。
屋敷の離れにつくと、侍女のアンジュさんが出迎えてくれた。
「バルディウス殿下、お館様がお呼びでした。帰り次第訪ねるようにとのことです」
「わかりました。では、本邸のほうへ参りましょう」
ジルバーン公爵様からの呼び出しである。何事だろうかと僕らは思いながら本邸へ向かった。使用人にジルバーン公爵様から呼び出されていることを告げ、取り次いでもらう。間もなく公爵様がいる部屋へと通されたのだった。
「急に呼び出してすまないな。ドラゴンレース実行委員会の会合の方はどうだったんだ?」
「牝ドラゴン限定レースの追加、賞金制の導入、レース場へのお店の出店が決まりました」
「牝ドラゴン限定レースに、賞金制の導入か……」
「急にお呼びになったのは本日の会合の内容を知りたかったからですか?」
「いや、それもあるが、実は我が領地でもドラゴンレースができないかと考えてだな……」
「公爵家の領地といいますと、シルバスタッドの近郊でドラゴンレースを行うのですか?」
「ああ、そうだ。ドラゴンレースを見た家臣たちに面白かったと評判でな。是非公爵領でもやってみてはという意見が出てな。バルディウス、お前はどう思う?」
「まず、シルバスタッド近郊にレース場を作る費用はどうするんですか?王都よりシルバスタッドのほうが人口が少ないですがきちんと収益を上げられるのですか?」
「その辺のことは計算済みだ。最初は赤字になるが十分に元はとれる手はずになっている」
「元が取れるというのならばやってみてもよろしいのではないですか。ただし、王都で行われるドラゴンレースも始まったばかりで人気がどこまで続くか先行きが不透明な部分はあります。リスクがあることは覚悟していおいた方がいいかと思います」
「なるほど、わかった。お前の言っていることも考慮しよう」
「それにしても王都以外でもドラゴンレースを開催するのですか。父上以外にも同じことを考えている人がいるかもしれませんね」
「そうかもしれんな。正式に我が領内でドラゴンレースを開催すると決まったあかつきにはお前にも手を貸してもらうぞ。話は以上だ」
「わかりました、父上。それでは失礼いたします」
こうして、ジルバーン公爵様のお話は終わった。僕は降ってわいた王都以外でのドラゴンレースの話で期待に胸が膨らむのを感じた。




