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3度目の模擬レースが行われることになった。かなり本番に近い形で行うことになっている。観客席に王都軍の兵士たち100人ほどが詰めかけている。観客の代わりである。
まずは、建国400年目を祝う陛下の言葉からだが、陛下がいないのでそれは省略した。次はドラゴンレース開催の言葉だ。エルドリッチ子爵様がステージの上に登壇し宣言する。
「これから第3回目のドラゴンレースの模擬レースを行う。本日やってきている王都軍の兵士諸君は大いに楽しんでいってくれ」
兵士たちから歓声が上がる。歓声が冷めやらぬ中、エルドリッチ子爵様だ降壇する。次はいよいよレースに出場するドラゴンの入場だ。楽隊がマーチのような曲を演奏しそれに合わせてドラゴンが入場してくる。
1番目のドラゴンの名はヴァイエルといって年齢は7歳。任務で何度も長距離伝令の役目についたこともある王都軍のベテランドラゴンである。
2番目のドラゴンの名はディムといった。年齢は4歳で今が伸び盛りの時期である。主だった王都軍の役についたことはないが、若さで勝負である。
3番目のドラゴンはウンタークンフトという名である。5歳と充実した年齢であり、騎乗は今年ドラゴンの騎乗兵へと採用されたばかりの新人である。
4番目のドラゴンはアムスタンデンという。同じく5歳という年齢で、短距離を駆けるなら王都軍一という評判だ。
5番目のドラゴンはスチフという名で8歳になる。バルディウス殿下の愛用のドラゴンだ。サモンドさんが騎乗する。ドラゴンレース実行委員会のメンバーは会則によりドラゴンレースに出場できない。本番には出せないがせっかくの機会だから今回の模擬レースで出してみようということになったのだ。
6番目のドラゴンはウィッセンという名で7歳になる。ウェスカー様のドラゴンだ。ウェスカー様本人が騎乗する。
7番目のドラゴンの名はヴィエルグラックといって8歳になる。エルドリッチ子爵様のドラゴンで
子爵様の従者が騎乗する。
8番目のドラゴンの名はジェノンメンといい、7歳である。ブロンクス様のドラゴンで本人が騎乗する。
9番目のドラゴンの名はファッケルといい、6歳である。王都軍一ドラゴンの扱いがうまいという兵士が騎乗する。
10番目のドラゴンはグラウビジェンという名で7歳である。このドラゴンも王都軍の役目で何度もいろいろな場所に走った実績がある。
以上の10頭が今回の模擬レースを走るドラゴンである。入場が続いているうちにバルディウス殿下が王太子殿下に話しかけた。
「どうです?当日に民が実際に投票券を買うのと同じように投票券を買ってみませんか?今回はあくまで模擬レースなので買う振りですけど」
「面白そうだな。どこで買えるのだ?」
「こっちです。あらかじめここにいる王都軍の兵士の皆さんも練習のため買う振りしてもらいました」
殿下が投票券の販売所に案内する。そこではドラゴンの名前と倍率が掲示され、大声でそれを読み上げてい者がいた。王太子殿下には今日走るドラゴンの詳細をあらかじめ伝えてった。どのドラゴンにするか王太子殿下が悩んでいたが、やがて決めて投票券を買った。
「よし、9番のファッケルにしよう」
「投票券には騎手がかぶっている帽子の色と同じ色が塗っております。レース中はその色を目印としてください」
王太子殿下が投票券を買い終えると楽隊の演奏はやみ、各ドラゴンがスタート位置へと向かい始めた。
「王太子殿下、観覧席に戻りましょう」
すべてのドラゴンがいちについてレースがスタートする。うまくスタートで飛び出したのは2番のディムと7番のヴィエルグラックだ。後はやや遅れて団子状態となっている。
第一コーナー、第二コーナーと過ぎて4番のドラゴン、アムスタンデンが先頭に出てきた。続いて2番のディム、6番のウィッセン、7番のヴィエルグラックが並んでいる。
第三コーナー、第四コーナーを回っても先頭は変わらない。間もなく1周目が終わり2周目に入る。観客席の前をドラゴンたちが通り歓声があがる。先頭は4番のアムスタンデン、二番手は2番のディム、三番手には9番のファッケルが上がってきた。
二度目の第一コーナー、第二コーナーと過ぎて、4番のアムスタンデンはばてたのか順位を下げてしまった。先頭は2番のディム、9番のファッケルが並んで走っている。3番のウンタークンフトが追い上げて三番手についている。以下1番ヴァイエル、10番グラウビジェンと続いている。
第三コーナー、そして最終コーナーである第四コーナーを過ぎた。ゴールに近づいてきたことで歓声が大きくなる。先頭は9番のファッケル、2番のディムはいっぱいになったか下がり始めている。反対に3番のウンタークンフト、1番ヴァイエルが追い上げてきている。
ゴールまでの短い直線に入った。歓声は最大限に大きくなっている。先頭は9番のファッケル、3番のウンタークンフト、1番ヴァイエル、10番グラウビジェンが追いすがる。
だがしかし、最初にゴールに飛び込んだのは9番のファッケルだった。2着に3番のウンタークンフト、3着に10番グラウビジェンと続いていく。
優勝したファッケルはもう一度コースを回り観客の声援を一身に受ける。そしてコースを回り終えた後はステージ上で騎手が記念品を受け取った。再び大きな歓声に包まれる。
こうして、3回目の模擬レースは終了した。
「やった、予想が当たったぞ」
王太子殿下が喜びの声を上げる。
「最終オッズは5.2倍でしたね。本番だったら掛け金の5.2倍の金額が投票券と引き換えに払い戻しがあることになります。それよりも今回の模擬レースはどうでしたか?本番にかなり近い形で行ったのですが……」
「うん、前回とはかなり違っていたな。これなら建国400年目の記念式典としてふさわしいだろう。宮廷には良い出来だったと報告しておく。皆のものご苦労だったな」
王太子殿下から労いの言葉をかけられ、ドラゴンレース実行委員会のメンバーは安堵する。
「どうやら無事に本番を迎えられそうですな」
エルドリッチ子爵様は笑ってそう言った。
「レース参加希望の登録者は結構な数になりました。本番前に予選が必要ですよ」
ドラゴンに乗ったままウェスカー様が言った。
「では、予選の組み合わせの抽選と日程の決定をしなくてはなりませんね」
そうバルディウス殿下が言った。
「それは後日に行いましょう。今日は無事に模擬レースが成功したことを祝いましょう。私のドラゴンは残念な結果に終わりましたがね」
「私のもです。やはり、狭い王都の屋敷で飼っているドラゴンは、いつも訓練をしている王都軍のドラゴンにはかなわないみたいですね」
「まあ、そういうことなんでしょうな。それはともかく模擬レースがうまくいったお祝いを私の屋敷でやることにしましょう」
エルドリッチ子爵様のその言葉で3回目模擬レースは終わったのだった。




