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 「おはよう、アル。朝だよ、起きて」

 僕を起こしてくれたのはいつものようにリカルド兄さんだったが、目覚めた場所は自分の家じゃなかった。収穫祭で、はしゃぎつかれて眠くなった子供たちは、広場の近くの家に集められて雑魚寝をするのだ。

 「家に帰るぞ、アル」

 「おはよう、リカルド兄さん。家に帰ろう」

 周りにはまだ眠っている子もいる。僕らはそっと家から出た。広場を通って僕たちの家に向かう。広場には、酔っぱらってそのまま寝てしまっている人たちがいるのが見えた。


 「ただいま」

 家に着くと、母さんが朝食の準備を始めていた。

 「おかえりなさい。収穫祭は楽しかった?」

 「とっても楽しかったです」

 僕はそう答えると、リカルド兄さんも頷いた。

 「朝食はまだちょっと時間がかかるわ。二人は水汲みに行ってちょうだい」

 「わかったよ、母さん」


 リカルド兄さんと二人で水汲みを終えて朝食をとる。昨日の収穫祭のご馳走とは比べ物にならない質素なものだが、母さんが一生懸命作ってくれやものだ。ありがたく味わっていただく。

 

 「今日は開墾するぞ、リカルドは手伝え」

 父さんが言った。開墾とは農地でない所から石や草木を取り除き耕して農地に変える重労働である。開墾して畑が増えるとその分収穫が増えるので、重要な仕事だ。村のどこの農家も少しでも畑を広げようと頑張って開墾している。広い畑がないと、次男以降の息子に畑を分け与えることができない。そうなると次男以降の息子は婿に行くか、村を出て働き口を探さなくてはならない。だが、婿に行ける人数には限りがあるし、田舎村の農家の子供ではうまく働き口を探せることなどめったにないのだ。だから僕は少しでも有利な立場になろうと一生懸命教養を身に着けようとしているのだ。


 「僕は収穫祭の後片付けを手伝いに行くよ」

 まだ7歳と幼い僕は重労働である開墾であまり役に立たない。だからできることをしようと思ってそう言った。

 「ああ、しっかり手伝って来い」

 父さんが頷きながら言った。


 僕が広場に着くと、既に後片付けが始まっていた。村長の息子のパーゼル兄さんが指揮をしているようだった。僕はパーゼル兄さんに近づいて挨拶する。

 「おはようございます、パーゼル兄さん。後片付けの手伝いに来ました。」

 「おはよう。手伝ってくれるのは助かるな」

 パーゼル兄さんはそう言うと、僕に広場に散らばっているごみを拾い集めするよう指示を出した。僕は指示に従ってごみを拾い集めていく。昼頃までかかってあらかたごみを拾い集め、パーゼル兄さんに報告して僕の片づけの手伝いは終了した。


 片付けが終わると閑散とした広場が残った。昨日の収穫祭の喧騒が嘘のように静まり返っている。僕が収穫祭の余韻に浸っていると、ガラガラと荷車を引いてくるドラゴンの姿が見えてきた。馬車ならぬドラゴン車だなと思っていると、御者をしていたホアンさんと目があった。

 「やあ、坊や」 

 「こんにちは、ホアンさん。もうお帰りになるのですか?」

 「収穫祭も終わってしまったからねぇ。帰って次の商売の支度をしないと」

 「この村に来た甲斐はありましたか?」

 「儲けは多くないがいい商売をさせてもらったよ。定期的には無理だがまたこの村に来ることにしたよ」

 「そうですか。それは良かったです。また会いましょう」

 「ああ。坊やも元気でな」

 そう言ってホアンさんはシルバスタッドへ帰っていった。僕はその姿が見えなくなるまで見送った。




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