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行商人のおじさんは村長と一緒にいた。行商人のおじさんは村長が呼んだ客人だから、村長が接待しているらしく、たくさんのご馳走が並べられていた。僕は、話しかけるタイミングを逃さないように二人の様子を窺う。すると、僕に気づいた村長がいった。
「アルベルト、何か用か?ご馳走はもう食べたのか?早く食べないとなくなってしまうぞ」
「ご馳走はいっぱい食べたよ。僕は行商人のおじさんからシルバスタッドの都の話を聞きたくて来たんだ」
「シルバスタッドの都の話か。村から出たことがないなら興味があるか。ホアンさん話してやってくれますか?」
村長が行商人のおじさんに尋ねてくれる。
「ええ。いいですよ。約束もしてましたしね」
行商人のおじさん、ホアンさんはそう言って応じてくれた。
ホアンさんはシルバスタッドに店を構えるオーゲンロレン商会というところで働いているらしい。オーゲンロレン商会はジルバーン公爵家がまだ伯爵家だったころからの老舗で、シルバスタッドを中心に公爵領のあちらこちらで商売をしているらしい。この村は、何の特産品もない村なので今まで来ることがなかったが、村長の熱心な誘いと、収穫祭があって浮かれている村人なら財布のひもが緩むのではないかという目論見があり、試しに行商しに来たそうだ。
僕が儲かったのか尋ねると、トントンだと答えた。
僕がホアンさんと話していると、村の外からの人が珍しいせいか、他の村人も集まって話を聞き始めたようである。いつの間にか多くの人に囲まれていた。僕は聞きたかったシルバスタッドの都の話を尋ねた。
シルバスタッドの都は大きな石壁に囲まれたとても大きな町らしい。うちの村は木の柵で囲まれていて大きな石壁なんて見たこともない。どれくらいの大きさかを聞くと人の背の何倍もだという。さらに都の広さはとても広いらしい。何千もの人が住んでいるという。僕は驚いた。うちの村を見て、あまり文明が進んでないと僕は思っていたが、もしかするとうちの村が田舎なだけで、思っていたより文明は進んでいるのかもしれなかった。
そして、シルバスタッドの都の話は続いていく。大勢の人々で毎日にぎわう市場の様子や、とても大きくて立派なジルバーン公爵様のお城の話など、どれも今までに見たことも聞いたこともない話をホアンさんは酒を片手に次々と話してくれた。
それにしても、ホアンさんの話でシルバスタッドの都とこの村では生活の様相がまったく違うことがわかった。これはちょっと僕の予想外のことだった。都といっても村よりちょっと店が多いくらいだと思っていた。自分がまだまだ世間知らずであることに気づかされた。ドラゴンレースを開催するために教養を身につけようと思っていたが、このまま村の中で学ぶには限界があるかもしれない。ちょっと人生設計について考え直す必要が出てきた。
僕がいろいろと考えている間に、日も傾き、収穫祭の宴はいよいよもって盛り上がっているようだった。ホアンさんも酒で顔を真っ赤にしながら周りの人達に話を聞かせている。周りで話を聞いてるみんなも顔を赤くして酔っぱらっている。僕は酔っ払いに絡まれないようにそっとその場を離れる。子供は酔っ払いに絡まれないように子供同士で集まるのが収穫祭の常であった。僕が子供たちが集まってる場所を探していると、ターニャ姉さんが声をかけてきた。
「アルベルト、こっちに子供たちが集まってるわ。いらっしゃい」
呼ばれたほうへ近づくと、子供たちが集まっていた。小さい子の中にははしゃぎ疲れたのか寝てしまっている子もいた。
「アルベルトは見かけなかったけど何をしていたの?」
「行商人のホアンさんからシルバスタッドの話を聞かせてもらっていたんだ」
「ふーん。アルベルトも聞いたのね。私も聞かせてもらったわ。一度でいいからシルバスタッドの都に行ってみたいものね」
「僕も行ってみたいなぁ」
「まあ、まず無理ね。都に行く用事なんてめったにないもの。今回、お父さんが行って来たのは特別よ。それより、収穫祭を楽しみましょう」
こうして僕は子供たちの輪に加わり、収穫祭を楽しんだ。




