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41. 私の愛馬は凶暴です?

 昼食に家の洋食屋の隠しメニューである冷やし中華を堪能し、ルンルンとご機嫌でログインしたものの、そこで待っていたのは元気に駆け回るウォーセの上で正座し続けると言う罰だった。

 

駆けるばかりかぴょんぴょんくるりんと跳ね回る動きは、落ちる事はないとはいえなかなかの怖さなんですが。


 ねぇウォーセ、ちょっと落ち着いて? 酸っぱいのが出そうだから。いや違うの、ローリングは要らないの。


「次は第三大陸のエルフの村か、サクラなら場所知ってんじゃねーの」

「私は運営ではありませんわ」

「お願いだからもう許してぇぇぇ!」

「「あと十分」」


 この鬼畜共め、もう十分だっての!


 そんな悲鳴混じりの駄洒落披露したのが効いたのか、あっさりと終わった罰の苦痛を癒すように、キボリに埋もれクロとしーちゃんを抱きしめる。


 はぁ、このもふもふがすり減った心を癒してくれるよ。


 そして十分に癒やしを補充した後、街を解放するため第三大陸にあるロマンの街へ。


 そこは中世ヨーロッパの雰囲気あふれる綺麗な町で、中心に構えるコロッセオにも見える豪華なコロシアムがこの街のシンボルみたい。

 

 ちょっと中を覗いてみようかな? あんな目にあったんだし、多少の寄り道は許されると思うんだよね。こうして何時も通り、タクシーの様に使われてもいるのだしさ。


 早速中へ入ってみるとプレイヤーらしき人は一人もおらず、受付のお姉さんが暇そうにテレビゲームをしているだけだった。


 街の中にはプレイヤーが数人ほど居たみたいだったし、もしかしたらと思ったけど、みんな街の外の探索へと行ってるんだろうね。


 何せ、この大陸は一番ロールプレイングゲームらしい場所だという話だから。


 設定としては、この大陸は一夜にして何者かによって他の街との連絡が途絶えてしまった。


 そこでプレイヤーが大陸を巡り、他の街の様子を探りながら原因を突き止めると言う物。未知なる地を巡り、未知なる敵と対峙するなんて、なんかロマンがあるよね。


「すいませーん」

「はい? あっえっわわっ、すいません! な、何かごようがおありですか!?」


 しかしながら、私が興味あるのはこのコロシアムの方。


 話を聞こうと受付のお姉さんに話を聞こうと話し掛けたものの、すっかり気を抜いていたらしいお姉さんは慌ててテレビゲームを終わらせ、どもりながらも自分の仕事を再開させようとしていた。


 いや、それにしても慌てすぎじゃない?


「何のゲームしてたんですか?」

「き、気にしないでください。ええ、ち、ちなみに年齢は? 画面は見えてました?」

「大丈夫ですよ、裏からは画面見えませんから」


 まぁ、その慌て具合で何となくどんなゲームしてたかは予想が付くよ。


 そんなお姉さんだけど、落ち着いてしまえば仕事も出来る女なのか、ゴーレムコロシアムについて詳しく教えてくれた。


 先ずゴーレムコロシアムは二つのリーグに分かれているそうで、一つはプレイヤー同士が対決し、勝利数の上位者がトーナメントで争う物。これはPリーグと呼ばれているみたい。


 もう一つは運営が用意したゴーレムと戦うMリーグで、十二人の刺客を倒すとチャンピオンに挑む事ができ、チャンピオンを倒すと自分が次のチャンピオンとして君臨出来るんだそう。


 うん、なんかどこかで聞いたことがあるような仕組みだよね。


「Mリーグは何時でも参加出来ますが、Pリーグの場合は登録が必要です。登録して頂くことでプレイヤーの参加状況や、トーナメントの際のお知らせもメールでお送りさせて頂きます」

「あ、じゃあお願いします」


 いざPリーグに参加しようとしても、対戦相手が居ないんじゃどうしようもないしね。


 よし、登録も終わったし次は冒険者ギルドに行こう。寄り道した分、エルフの村の情報くらいは仕入れておいた方が良いかもだしね。


 街を散策しながらマップで確認した神殿のような外観の冒険者ギルドに向かい、空いている受付へと向かう。


 少ないけどそれなりにプレイヤーがいるみたいだけど、私と同じように情報収集を行っている人達なのかな?


「あの、エルフの村について聞きたいんですけど」

「エルフの村ですか。……分かりました。浮き世離れな人になら、特別にお教えしましょう」


 おお、こんな所でこの称号が役に立つんだね。持っていて良かった称号に感心しつつ、聞き逃さないように念の為メモを取りながらしっかりと話を聞いておく。


 教えて貰ったエルフの村は、この南側の先端に位置するロマンの街の反対側、北の先端に広がる森の中にあるらしい。


 うん、ここまで分かれば神速通でサクッと行ける筈だよね。


「ありがとう、お姉さん!」


 善は急げと、お礼を言ったら直ぐに神速通を使用して教えられた場所へと移動する。


 すると現れた場所は森の中にある農村のような場所で、田んぼには案山子が刺さり、道には山羊や牛などが自由に歩き回っている長閑な所だった。


 なんというか、随分牧歌的な雰囲気だね。眺めているだけでも心が落ち着くようだよ。


「おや、もう来た人がいたと思えば君だったか。うーん、残念だ。徒歩じゃなきゃボーナスは貰えないんだけどな」


 そんな和んでいた私に、こちらに気付いた一人のエルフが話しかけてきた。


 チラチラとこちらを窺っている様子は、欲にまみれた感じがありありと感じ取れる。だけどね、悪いけど他を当たった方が早いと思うよ?


「ここに来ればレベルが分かるって聞いたんですけど」

「プロフの魔法だね。はい、この魔導書を読めば取得出来るよ。その魔導書一冊で五人まで取得出来るからね」


 えっと、なんかあっさり貰えちゃったけど良いのかな? それにこれ、……漫画だ。え、魔導書って漫画なの?


「あと、この村はチーズ料理が名物なんだ。良かったら買って行くかい?」

「うん! ピザとかある?」

「勿論だとも」


 うむ、情報だけではなく名物も魅力。みんな大好き一度はおいで、って感じの場所だよね。


 さて、目的も達成したことだし、一度みんなのところへ戻ったらゴーレムコロシアムのMリーグにでも参加してみようかな。


 そうして戻ったログハウスにて、手土産と旅先での思い出話を披露していると両手にピザを持ったヨーナが愚痴を言い出してしまった。


「肩すかしも良いとこだよな。冒険したかったぜ」

「怠惰なヨーナさんらしくありませんわよ」

「そうだよ、文句ならせめてその手に持つ物を離してから言おうよ」

「腹の虫に言ってくれ」


 まったく、楽が出来て嬉しい癖に口は達者なんだから。まぁ、大陸なら冒険なんていくらでも出来るのだし、今は大人しくピザでも食べさせておこう。


 てか、私の分まで食べないでね?


「それで、ゴーレムコロシアムには誰を連れて行きますの?」

「やっぱりフィナかな? あんなに張り切ってるしさ」


 私のゴーレムはみんな強い。だから誰を連れて行っても良いんだけど、この後ゴーレムコロシアムに行くと告げたときからフィナは鼻息荒くスクワットを繰り返しているの。


 そんなやる気を見せられたら、連れて行くほかないんだよね。


 本当はフィナ達が合体した姿も見たかったけど、もちはともかく小豆が動きそうもないのが悔やまれるよ。


 とは言っても今はまだピザを食べる時間。張り切るフィナを落ち着かせながら、三人で満足するまでピザを食べ、お腹が一杯になったところでフィナを連れてゴーレムコロシアムへ。


 腹ごなしには丁度良いよね! と、思ったけど私は体を動かす必要はなかったっけ。


 タッグで戦えたら良かったのになぁ、と心の中で文句を言いながらもMリーグの受付をしようと思ったところ、Pリーグで丁度今、登録して対戦待ちをしている人がいるらしい。


 丁度メールを送ろうとしていたところだったそうなので、折角だからその人と対戦をしてみようか。


「私達は観客席で見ていますわね」

「サクッと終わらせて漫画読んじゃえよ、私達も読みたいから」

「せめて魔導書って言ったげて」


 サクッと読めそうな漫画でも、中身はちゃんとした魔導書なんだからね?


 そんな突っ込みを送りながら観客席へ移動する二人を見送った後、係の人に案内されて転送ポートへと進む。どうやらリーグによって場所が別になっているみたい。


 舞台があるフィールドに着くと、石畳の舞台を挟んで反対側に対戦相手らしい男の子が既に待機していた。


 随分余裕そうに腕を組んで待っているし、私も観客席で手を振るサクラとヨーナに応えて余裕を演出しておこうか。


「はーっはっはっ! お前か、命知らずの挑戦者とは! そんな小物のゴーレムなど、俺様のゴールドスマッシャーの敵ではないな!」


 うわぁ、関わりたくないような人だ。フィナもなんだか嫌そうにしてるよ。


 ルールは単純に、どちらかのHPが無くなるまでのガチンコ勝負。別に親バカという訳ではないのだけど、……フィナなら余裕だよね? いいかいフィナさん、一発で終わらせなさい。


 そんな意味も込めて頭を撫でて舞台へ送り出すけど、其処へ上がるゴーレムは本当に対照的な姿をしている。


 私のフィナは座敷わらしがベースのため小さな女の子だけど、相手のゴーレムは大きく金色に輝く醜悪な顔。トロールでも融合させたんだろうね。


 そしてお互い中央に向かい合うと、開始までのカウントダウンが聞こえ始める。


「いいか、ゴールドスマッシャー! 開始早々押しつぶしてやれ!」


 そして鳴り響く開始の合図と共に、私は一筋の流星を見た。その場から消え、後ろの壁にめり込むゴーレム。舞台に佇む看板を掲げたフィナの姿。


《必殺! ゴールデン龍星拳!》


 あの一瞬で拳を放ったらしい。でもね、そのネーミングセンスは私の心にも響くよ。もしかして私のダサい感じ、うつっちゃった?


「くそっ! 何だよカッコつけやがって! 覚えてろよぉ!」


 試合終了のブザーが鳴り響く中、抜群の小物らしさを発揮しながらゴーレムを石に戻して逃げ去る対戦相手を見送り、そのまま観客席の方へ目を向けると呑気にピザを食べている二人が見えた。


 うん、要求通り早く終わったのは良かったんだろうけど、見応えのないバトルでごめんね。


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― 新着の感想 ―
[一言] ( ̄□ ̄;)!!流星じゃなくて、龍星拳 ペガサスじゃなくて、ドラゴン つまり、せ~やじゃなくて、紫龍……………だっけ?老師の弟子←どんな覚え方だよ
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