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40. 荒野の怪鳥

 何時もと変わらないすがすがしい朝。


 そんな朝から満面の笑みを浮かべ、ひたすらスプーンを口に運ぶもちの姿には流石の私も困惑してしまう。


 なんせ、これで五杯目になるジャンボパフェなんだよ? ラーメン丼を器にこれでもかとふんだんに盛られたフルーツや生クリーム、アイスの数々。それを五杯も食べているんだよ?


 そろそろ、まん丸に太ったもちをイメージ出来るようになるかもしれない。


「見てるだけで胸焼けしそうだよな」

「スベガにフードファイトがあったら良いですわね」


 まぁ、あったら参加させてみたいとは思うけど、果たしてもちは甘味以外を大量に食べるのかな? 


 そもそもこんな事になったのはタツミがお菓子づくりを始めたからなのだし、日頃のことも含めて、甘いものにしか反応しない気がするんだよね。


 そんなタツミはまだ初心者の為、先生からひたすらパフェを作るように指令を出されているの。


 お陰で、こんな風にもちに嬉しい光景になってしまったって訳。


 多分、これからお菓子のストックを作るための時間稼ぎの意味もあるんだろうね。先生は癒やしを求めて私の尻尾を抱えて幸せそうにしているし、ごめんねブラックな家で。


 そんな、何時もの朝に起きているちょっとした変化に包まれたこのログハウス以外にも、ちょっとどころか大いに変わっているところがある。


 それは掲示板の海洋系と、ドラゴン関連のスレッドの賑わいがかなりのものになっているらしいことなの。


「そう言う情報はまだなの?」

「速すぎて目で追えませんの。それにそう言う話よりも移動手段ですわね。大陸までに飛行便はない所為か、そこに商機を感じている人達が多いそうですわ」


 サクラも言う移動手段について、何故そこまで注目の目が向けられているのかというと、プレイヤーが社員から聞いたと言う大陸の詳しい情報がアップされたから。


 そんな情報の中で、第二大陸で火器の作成が可能になるという点が一番の理由みたい。


 あの大陸のテーマは、荒野開拓とガンマン。西部劇に憧れる人達も多いく、自力ではまだ行けないけど、早く行ってみたいという声が多いって訳だね。


 勿論それだけじゃなく第一大陸や第三大陸を目指したい人も多く、そんな私も第三大陸にあるというゴーレムコロシアムに興味深々なのです。


「アオイがゴーレムコロシアムに行きたいって言うのも分かるけどさ、私も皆でどうしてもやりたいことがあるんだよな」

「馬に乗ってカウガールにでもなるんですの?」

「馬じゃない、車だ! 格好良い車で荒野を爆走したいんだよ」


 何その格好いいの。何だろう、私の移動手段にもなっているフィナには悪いけど、凄いやりたくなってきたよ。


「良いんじゃないですの? どうせ今からゴーレムコロシアムに行っても、それ程賑わって無いと思いますわ」

「そっか、それならもう少し後の方が良さそうだよね。けど、ヨーナは車の運転出来るの?」

「出来ねーよ、そこはモンスターに任せれば良いんじゃないか?」


 いや、出来るのかな? ……うん、先生の無言の視線を見るにみんな出来るみたい。まったく、スペック高いなぁ、モンスターは。


 まぁ、そうと分かれば善は急げか。張り切った様子で玄関を開き出て行くヨーナについて行くと、そこはお洒落な感じ漂う玄関。


 どうやらアトラに買った家みたい。ここの家屋メニューに車が保管されていて、好きな物を自由に使えるそう。


 そんな説明を受けながらも、ヨーナは早速車選びに夢中になっていた。


「やっぱり四駆だよな。それで屋根も無くて頑丈そうなやつ」

「それもう決まってるじゃん」

「だよな! じゃあこれに決めたぜ」


 車も決まったみたいだし、運転手として一番だと紹介されたタツノを連れ出しスベガへ向かう。


 転移系の魔法やドラゴンの所有者か、ちらほらカジノの方へと向かう人がいる中、逆方向の街の出口へ向かい荒野へと出ると、ある種の感動が待ち受けていた。


 そこは見渡す限りの広大な荒野で、草木一つ見当たらない。風にまう砂埃は雰囲気たっぷりで、なかなか風情があると思う。


 あれ、こう言うのも風情っていうのかな?


「んじゃ、行くか。タツノ運転よろしくな」

「え、いや何これ!?」


 しかし、そんな風情たっぷりの空間にヨーナが出した車は、私の期待と予想を大きく裏切ってくれる物だった。


 私の思い描いていた車とは似ても似つかないその車は、いつ変形してもおかしくないようなデザインのトラック。


 多少改造され、屋根の部分は切り取られたうえに座席も後ろに増えたそれは人数的には丁度良いだろう。でもね!


「私、羊にあんな名前を付けたんだよ! ちょっと期待してたんだよ!」

「だって爆走するならトラックだろ?」

「このトラック女郎が!」

「まぁまぁ、良いじゃないですの。乗ってしまえば同じですわ」

「それより早よう行くぞ、お主は助手席な」


 くそう! この恨みいつか晴らしてやる!


 なんて、思い通りに行かない世の中を恨んだこともありました。

 

「やっはーっ! 凄い迫力だね!」

「だろ? 最高だよな!」


 うん、トラックを甘く見てたよ! 高い視点でこんなに速く動くのって凄いね。空を飛ぶのとは違った爽快感なのです。


 後ろのサクラが呆れた目で見ているけど、気にしてなんかいられないね!


 それにこの爽快感と共に楽しめるのは、周りの景色。そう、気分はまるで動物園なの。


 荒野にいるモンスターには性格の違いでもあるのか、襲って来るものと来ないもので分かれているみたい。


 なので、ちょっとしたアトラクション感覚でも楽しめるからか、余計テンションが上がってしまうんだよね。


 詳しく観察もしてみたけど、ビミブルより一回りほど大きな体の牛型モンスター、バッファナイトの群れは迫力はあるものの襲ってくることはせず大人しいモンスターみたい。


 そして襲ってくる代表格が、ライオン型のライオンカイザー。同じモンスターであるバッファナイトにも頻繁に襲いかかっているし、かなり好戦的なモンスターのよう。


 まぁ、そのライオンカイザーも短刀の投擲で一撃だし、心配はないと思うけどね。


 あと、こういう時念動力が使えるととても便利だと判明したの。投擲したままだと武器は一定時間経たないと自動帰還しないから、自力で帰還させられるのは途轍もないメリットだよ。


「ライオンカイザーも一撃か、レベルの問題か?」

「そうじゃな。いくらオリハルコン製の武器でも大陸のモンスターは一撃では無理じゃ。もしレベルの事が知りたいなら第三大陸へ行くと良い。何処かにあるエルフの村で教えて貰えるはずじゃ」


 お、それは良いこと聞いたよ。これで次の目的地は決まりかもね。


 一撃で倒せそうな奴が実は高レベルのモンスターだった、なんて展開は危険だし、レベルが分かれば戦い方を変える目安にもなるしね。


「次の事は後ですわ。それよりタツノさん。これはどこかに向かってらっしゃるの?」

「うむ。どうせならボスの出る所へ行こうかと思っての」


 いや、なにその急展開。今乗っているのはトラックだよね? ジェットコースター並みのスピード感なんですが。


「なあ、ボスってあれか? あの遠くに見える飛んでる奴」

「気付きおったか、あれはコンドリオン。その速さも厄介じゃが、風魔法も強力じゃ。このままトラックで走りながら戦うからの、ヨーナは奴が寄ってきたときに攻撃じゃ」


 ふむ、それは無闇に飛んで戦わない方が良いって事だよね。接近戦は大丈夫みたいだし、一撃離脱を心掛ければ大丈夫かな。


 いや、あれ? なんか尻尾がざわつく? 


「さぁ、来るぞ。しっかり掴まっておれっ!」

「「「ぎゃぁぁぁ!?」」」


 これがざわつきの原因かと、急激なドリフトに振り落とされそうになるのを必死に耐えていたら、ふと後ろの方に裂けるように亀裂が入った地面が目に映った。


 なる程、こっちが本当の原因で、タツノの言う風属性の攻撃か。


 急なドリフトもあってか攻撃は全く見えなかったけど、確かに感じることは出来た。でも、ちゃんと集中していないと避け損なうかもしれない程の速さだね。


「アオイさん、あなたは注意を引いてきてくださいまし! 私が援護しますわ!」

「分かった! タツノはあんまりムチャな運転しないでね!」

「聞けんな!」


 いや、激しい攻撃を避けることが必要なのは分かるけど、顔色悪そうにしているヨーナも気遣って上げてね。


 はぁ、これは時間を掛けない方が良いのかな?


 改めて相手をしっかりと確認すると、前に突き出た角が前方からの攻撃に強そうなイメージを持ってしまう。


 しかしその反面、巨大故か背中は案外無防備みたいだね。それならばと、その上に飛び乗り一太刀浴びせたところ、再び尻尾にざわめきを感じた。


 しかし、一度トラックへ戻り様子を窺ってみるも、別に先程のような風魔法が飛んでくる様子でもなく、特になにかが起こった訳でもないみたい。


「下手に近づくと風圧が飛ぶからの、気を付けるんじゃぞ」

「そっか。ならあんまり長い時間張り付けないんだね。あ、そうだ。コンボって一人じゃなくても出来るの?」

「うむ、出来るぞ。ただし、威力が上がるのは称号を持った者だけじゃがの」


 ふーん、それなら魔法の方はサクラに期待しようかな? よし、サクラの魔法を挟みつつ斬る事に専念しよう。正直こうも揺さぶられる車内に居たくないしね。


 それに、種が割れてしまえば怖くはない。


 来ると分かっている分避けやすい風圧は躱しつつ、サクラの魔法と交互に斬撃を与えていく。


 偶にトラックへ向けて自慢の角による突撃もあったけど、そんな時はヨーナの頑張りもあって引き離すこともでき、コンボの効果もあってか思いの外早く倒すことが出来た。


 それでも十分程、暴走トラックに揺られていたヨーナとサクラは気分が悪そうだ。酔い止めとかないかな?


「お前は良いよな、こんな思いしなくて」

「そうですわね。一人だけ高みの見物ですもの」

「おお! 上手いこと言うね!」

「「……」」


 手を出す元気も無さそうだ。後が怖いパターンだから気を付けておこう。


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― 新着の感想 ―
[一言] 壁]_・)トラックほど、移動に適さない乗り物は無いのよ つかまる所は無い 衝撃はダイレクトにくる 椅子も無いから、鉄板に直に座るので安定しない 無駄にスペース(荷台)だけはあるから、体は揺…
[一言] ( ̄□ ̄;)!!ジープじゃない
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