本当の意味での黒船(その1)
###
4月1日午前12時6分、草加駅に姿を見せた佐倉提督を見て驚いたのはアキバガーディアンの女性提督RJだった。
RJはあくまでもコードネームの類であり、本名ではないのだが。
「こちらとしても芸能事務所に関しては調べているが、そちらの方は既に決着したというネットの情報がある」
「なんやて?」
RJは佐倉提督の一言を聞き、別の意味でも驚いた。超有名アイドルの芸能事務所絡みの事件は解決したというのだ。
「この動画、見覚えないのか?」
佐倉提督がタブレット端末に表示した映像、それは某テレビ局の報道バラエティー番組である。
動画は再生されていないが、サムネイル表示だけで何処のテレビ局なのかは特定出来るだろう。
「こちらは、いちいちまとめサイトと化したような報道バラエティーにツッコミを入れている余裕は――ないんやで?」
RJはチラチラとタブレット端末を見るが、興味はありつつもアキバガーディアンとしてはまとめサイトのテレビ版に劣化した番組に興味はない。
しかし、今回の真相に関係する事と一連の事件が決着したという佐倉提督の言う事も一理ある為、一応はチェックしようと考える。
「本来であれば、こちらの事件が全て解決した段階で遊戯都市に乗り込めれば――と考えていたが」
佐倉提督は補足として、自分が遊戯都市へ行くきっかけは花江提督の話だけではないと付け加えた。
日付は3月29日、番組名の言及こそはなかったものの、テロップの表示や中継のアナウンサー等を踏まえると、あのテレビ局か――と断定できる。
放送時間としては午後1時台の番組だろうか。他のテレビ局では情報番組やドラマの再放送、映画――といった具合だ。
『我々は今、都内某所の芸能事務所に来ております。ここで、本日行われる予定だった新アイドルのお披露目が中止になった件について、謝罪会見があるようです――』
実際はメッセージと言うより、あるワイドショー番組の一部だった。男性アナウンサーらしき人物が、秋葉原にあるビルの前にいるように見える
このビルは場所の完全特定は不能だが、オタクストリート的な場所ではなく、パソコンの部品等を扱うビルに近い場所であり、客足もまばらと言う事か。
この時間帯だと昼間に該当し、一定の観光客も店に足を止めているが、このビルに立ち寄ろうとは考えていないようだ。
それに、マスコミが騒いでいるという事でアキバガーディアンも駆けつける危険性があり、それを警戒しての取材という可能性も高い。
『既にマスコミ宛てにFAXが送られていますが、その文章によると、一連の不祥事に関しての謝罪を行うという趣旨の文章に見えますが、不祥事の内容には一切触れておりません』
『しかし、別の芸能事務所はここの芸能事務所が所属するアイドルに対しての風評被害を拡散していると――裁判を起こす準備をしていると噂されています』
アナウンサーが話している途中、何人かの記者がビルの内部へ突入するような様子が――。
『見てください! 既に一部の暴徒化した記者がビルへの強行突入を行っている模様です。そして――』
まさかの展開である。何と、他局のアナウンサーをカメラで写し、その様子をモラルの崩壊したフーリガンや超有名アイドルファンの様に報道していた。
映像は、ここで途切れてしまっている。時間にして、わずか5分弱だ。
その後の内容は今回の事務所から取材拒否をされたのではなく、別の芸能事務所側から撮影を停止するように指示された物だと言う。
おかしくはないだろうか? 事件を起こした芸能事務所が取材拒否をした訳ではなく、別の芸能事務所が取材停止を呼びかけるとは。
「この動画には続きがあるのだが、その半数以上が芸能事務所側で削除申請を行い、受理されたのだと言う」
「それはアカン! 特定芸能事務所が言論弾圧をするような構図に――」
「だからこそ――その問題を何とかする為に、サバイバー運営が動いたのだ」
「その後の真相は、映像の続きは?」
「それを見つける為に、草加市にあるアカシックレコードを探している捜索班が――」
佐倉提督は既に他の提督がアカシックレコードを探している事をRJに話すのだが――。
「何だと――」
佐倉提督に伝えられた事実、それはあまりにも衝撃的過ぎる物だった。
『RJ、何処かにいれば急いで谷塚駅に向かってくれ』
RJのインカムからは柏原隼鷹の声が聞こえた。どうやら、向こうもこちらも同じ状況らしい。
「こっちは一足先に向かわせてもらうで!」
RJが駆け足で草加駅へと向かい、電車で谷塚駅へと向かう事になった。
「こちらはビスマルクの動向を見極めてからか。もうすぐ、ゴールに到着するはず」
佐倉提督はタクシーで移動を考えたが、まずはビスマルクの動向待ちとなっている。




