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パルクール・オブ・シティフィールド  作者: 桜崎あかり
ステージ5

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82/95

榛名対ビスマルク(その6.7)

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 4月1日午前12時5分、例の誤報から数分後に改めて運営サイドに報告が入る。今度こそ、本当にシティフィールドの先頭グループが来るらしい。


『あの姿は――まさかの展開が起きました!』


 少し前までは榛名はるな・ヴァルキリーが先頭グループだったのだが、いつの間にかビスマルクが先頭になっていたのである。実況の太田さんも情報を改めて確認し、カメラからの映像でビスマルクだと確認をした。


「ビスマルクが先頭だと?」


「どんな手段を使ったのか?」


「にわかには信じがたい」


 周囲のギャラリーからはビスマルクがチートを使ったような発言が目立つ。しかし、チートが発覚すれば失格になるのはルールでも決められている。


 それに、レース前にはチートチェックも行われているのだが――100%駆除できないのは一部観客からは不満の種になっていた。


「しかし、チートを使った事で失格になった選手は既にいるはずだ。これ以上の失格者が出れば、レース不成立も――」


 ある男性は別のARレース競技でフライング失格によるレース不成立に触れ、シティフィールドでも同様のケースがないとも限らないと言う。


 ARゲームでなくても、彼の言うフライングや失格に夜レース不成立は実際の競技等でも採用されている。


 それを踏まえての発言だったが、ある人物はあっさりと彼の発言を否定した。


「さすがに、シティフィールドで失格者続出で不成立はあり得へんやろ? レース参加者全員が失格、八百長を仕組んでいたとなれば話は別やけど」


 コーラのペットボトルを片手に男性の目の前に姿を見せたのは、アキバガーディアンのRJというイニシャルの女性提督だった。


 男性の方はアキバガーディアンに対しては不満を持っており、提督服を見ただけでも――という状態である。


「八百長? ARゲーム自体が八百長その物では――」


 男性がARウェポンのショットガンでRJを撃とうとするのだが、引き金を引いても散弾が飛ぶような事はない。


「今はシティフィールドが展開されてるんやで? 他のARゲームで使用するARウェポンが作動すると思っていたら――」


 RJは巻物型のタブレット端末から零戦を呼び出そうとしたが、それをするまでもない展開が目の前で起こるとは予想外と言える。



 白衣の女性が姿を見せたと思ったら、次の瞬間には相手のショットガンを腕に装着されたパイルバンカーの一撃だけで消滅、更には男性を無力化した。


 これだけの事が、わずか10秒足らずで行われたとはにわかに信じがたい。しかし、目の前で起こった事はドラマの撮影でもなければヒーローショーでもない。


「お前は――」


 RJの方を振り向いたのは、眼帯を付け忘れた佐倉さくら提督だった。提督服にボロボロのマントが特徴的なだけに――眼帯がないと逆に別人だと感じられる。


「誰かと思ったら、サバイバーの運営か。目的は、大方の予想では超有名アイドルの神化阻止と言ったところか?」


 しかし、RJの一言に反応する事はない。目的が別にあると言う訳でもないのだが、サバイバー運営としては――。


「それを聞いて何になる? まとめサイトにでもロハで拡散するか?」


「冗談や、冗談――こちらとしても、あんな芸能事務所に資金を提供するような連中に手を貸すようなことは――」


「こちらとしても芸能事務所に関しては調べているが、そちらの方は既に決着したというネットの情報がある」


「なんやて?」


 RJは佐倉提督の一言を聞き、別の意味でも驚いた。超有名アイドルの芸能事務所絡みの事件は解決したというのだ。

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