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第4話 その精霊の名は


「絶対に部屋を覗かないこと」

「……どうしてですか?」


 ウルルが疑問を浮かべて首を傾げた。


「……絶対に、部屋を、覗くな」


 少し語気を強めると、にんまりとウルルが微笑んだ。


「……嫌です。カイル様もお年頃だとは思いますが、その御身に何かあってはいけません」

「ダメだってば……あと変なこと言うのやめて」


 鶴の恩返しを思い出すな。

 『絶対に部屋を覗かないでください』って言っていた鶴の気持ちがよく分かるよ。


 俺が会おうとしているのは良い精霊ではない。

 ウルルが真剣な面持ちで、はっきりと俺を見た。


 凄い凛々しく、カッコいい女性だと思った。

 

「このウルル・バルハザードは国を三度も救った元剣聖です。カイル様のお傍で御身を守りすることが、今の元剣聖に務められる役目かと」


 むっ……そう言われると、俺も強くは言い返せない。


 てかなんだよ、めちゃくちゃカッコいいじゃん! 思わず惚れそうになるよ!

 確かに、俺の身に何かあればウルルは責任を問われる立場だ。


 だが……。


「……禁煙できたら、いいよ」

「どれほどですか?」


 俺は静かに指を一本、立てた。


「一時間も!?」

「一日だぞ」

「い、一日……だと……」


 どうしてほんの一時間だと思うんだ。

 ……わが師ながら不安になるよ。


 まぁ、たった一日だ。

 個人的にはかなり譲歩したし、ウルルにとっても健康を考える良い機会になるはずだ。


 借りにも元剣聖だ。彼女が元気になれば、今よりももっと強くなるはずだ。

 

「分かりました。同行は諦めます」

「……」


 こいつ……。

 速攻でヤニが勝ちやがった。


 ウルルはここ数年、自堕落にしていたせいか、剣の腕はかなり衰えている。

 原作でも全盛期なら作中トップクラスだし……タバコをやめて健康的になれば、かなりの戦力になるはずなんだが……そこまで無理強いはできない。


「ですがカイル様。今のカイル様なら心配はしておりませんが……影でお守りすることはお許し願えますか」

「……好きにいいよ」

「感謝致します」


 ……おそらく、同伴を願い出たのも俺を守るためなのだろうな。

 

 カイルは、いずれ世界を破滅させる精霊と会おうとしていた。


 その名を────『ノクス・レイ(深影の精霊龍)』。

  





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