82:聖女フェリーネと領主カリオス
結婚式の為に上京するまでに、新郎新婦のカリオスとフェリーネはそれはもう忙しかった。
辺境騎士団の移転に、セイラの修行に付き合って、噂が広がれば患者も切れずにやって来る。食事になればその話ばかりしていた。
――ある気持ちを抱えたままで。
だから、ふたりとも気が付けば結婚の準備のために、首都、ロスト・ミューの街に舞い戻る日時になってまっていた……。
◇
「「ようこそお越しくださいました」」
格式高げなウェディング専門店の扉を開ければ、ふたりの女性がすぐに現れる。
フェリーネはカリオスが初めてしつらえてくれた衣装を着て、カリオスはオーソドックスな中に、細部に刺繍などさり気ないこだわりのある衣装を着ていた。
そして高級そうなソファとテーブル、そしてそこに座るセルジオス殿下がいらっしゃった。
「よく来てくれた」
足を組み、紅茶を嗜みながこちらを向く殿下。
小皿には剥かれスライスされた、瑞々しい桃がのっている。
そこでセリオスに、彼女はアイコンタクトをしようとした。
しかし隣に立つカリオスは擬音で例えると、ゴォゴォゴォ……、もしくはすん……と見下ろしてる表情と驚き表情が混在している。
『何故ここに殿下が?』と言いたげ表情に変化をし、威嚇と迫力さえほ出てきた。ここまで表情を彼が変えるのは珍しい。
そこでフェリーネは方針を変え、彼女から挨拶りする。
「カリオス、セルジオス殿下わざわざ私どものために、ここへまで足を伸ばしての来てくださるなんて、光栄ですね」
「ああ、そうだな」
そう言って、彼はフェリーネの手を握る。
――どうしてして、しまったのカリオスは?
セルジオスに促され、ふたりは柔らかなソファへ座れば、それを皮切りにセルジオスは、静かな笑顔を浮かべ話を始めた。
「大丈夫。花嫁衣裳の試着の際には、俺はかかわらない。二人で楽しめばいいよ。まぁ、デザインはこちらで指定したものだしね。しかし有名デザイナーによるものだから心配ないさ」
「あぁ、ありがたいと思っている。聖女の結婚だ。ちゃんとしなければならないと思っていた」
「では、フェリーネはセリファスの名前を継がないか?この前の事件のせいで、教会の仕組みも変わることになったが。
そして蜘蛛の糸の様に、カシオペア様を神と崇める教会たちと、領主の連携に重きをおかれる仕組みになり、聖女の患者の救済をわかりやすくした。
そこに資金はが使われてはいるが、それでもなくなったわけでないよ」
セルジオス殿下の言葉を聞き、カリオスは癒しの間を管理するフェリーネを見た。
「いえ、今はローリエの教会に、患者の管理なのどをお任せしている状態ですので、あの教会所属でいようかと、今いろいろ相談させていただいているところなのです」
「あぁ……、司祭レリオットを頼るのか。それにしても……彼、忙しそうだよね」
そう司祭を思いだしている頃、とてもプロポーションの良い女性がやってるくる。
「ようこそ、私、デザイナーをしております。ユリナと申します。この度は私の制作したドレスを、聖女様に着ていただき、大変な名誉に胸を熱くしておりますわ」
「カリオスだ。よろしく頼む」
「フェリーネです」
フェリーネはセイラの言葉を思い出し、立ち上げり、カーテシーをして見せた。足を引き、腰を落としてうつ向くだけだが、流れる様にまでは難しい。
「私は貴族ではないわ」そうセイラには言ったのだが、「聖女は、格上の貴族のようものなのよ」と言われ覚え込むことになってしまった。
「着てみてわかっただろうが、結婚式で使わなかったウエディングドレスは、縫製を少し変えて、聖女の衣装と作り変える事になっている」
「そんなあんなに素敵なドレスを、衣装をローリエで着る為だけにですか?」
「いや、手に持てるほどの大きさの額縁に入れた絵画として、各教会へ飾ろうかと思っている。その為、画家も連れて来た。それを君の家に飾るといいよ。必要だろ? 残るものが」
フェリーネは「ご遠慮させてください」と話しの腰を折らない所で言おうと思っていた。しかしカリオスのベッドに飾られた絵を思い出し、それを言う事ができなかった。
「あのセリジオス殿下、そろそろよろしいでしょうか?」
「ああ、いいよ。よろしく頼む」
そうデザイナーの彼女が言った事により、場所を移動することになるらしい。
細く短い廊下を隔てて「では、こちらになります」そう言われ案内された奥の部屋は、教会の礼拝堂ほどの大きさ衣装室だった。
そこに、数多くの純白のウエディングドレスが並び、その一つ手前のポールにフェリーネがシーチィングの布を使い仮縫いしたデザインのドレスが並べられている。。
「カリオス様、まず、どれから試着なさいますか?」
「俺が……、選ぶのか?」
「大丈夫ですよ。私が説明いたしますから……まず、プリンセスドレス可愛らしいお姫様をイメージしたドレスなんですよ……」
そう、デザイナーの彼女が話し出せば、彼は真剣に相づり聞き始める。
◇
そして一番最後に、着るよう彼が指定し、「聖女のイメージにそって、デザインいたしました」とデザイナがそう作ってくれたその一枚をあわせた時。
カリオスが目を輝かせ、ワルツをするようにフェリーネの手をとる。
「フェリーネが良かったら、聖女のイメージであるこのドレスがいいと思うのだが、どうだろうか? 好みのがあればそちらで十分いいのだが」
「さっきのお姫様のようなイメージのドレスも似合っていて可愛いかったわよ。今回は冒険をしてみない?」
そうデザイナーの彼女も選択肢のヒントをくれたけれど……。
「私も聖女ための、このドレスイメージでお願いします。それがセルジオス殿下の戦略にも合いますし、やっと聖女になれましたし……」
胸元を飾る、素晴らしい刺繍を指先で確認するように触れ、そしても一方の手はそのスカートを広げ、そのやわらかな生地を楽しむようにうっとりと眺める。
「憧れだったのね」
「憧れ? ……、ええ、そうでした。聖女に憧れて、でも、理想は……笑顔で治療の痛みをやらげられる。そんな聖女になれると思ってました。けれど、それは憧れといってしまっていいのか思える程遠いもので……」
「わかるわぁ……、近づけば遠のくのよね。そしてどんなに難しいわかる。仕事を理解すれば、するほど、本当に無限に理想から離れていくのよね……。でーもー近くに見てくれる人が、いてくれるようになるんですから、大丈夫とはいえないけど、マシに……なるといいわねぇ~」
そう言われて、彼女はカリオスを少しだけ見てた。
けれど、デザイナーに、カリオスの前にぐぃっとだされ、「カリオス様、私からもどうぞ、聖女様をよろしくお願いいたしますわー」そう言われてしまう。
彼は少し慌てていたフェリーネを見つめ、力強くうなずく。
けれど、追加援護で「私の居ない時は、ちゃんと口で伝えてあげてくださね」そうカリオス様は言われてしまっていた。
そこで、カリオス様は口を開く前に――。
「私のウェディングドレスを着た方には幸せになって貰いたいので、偉そうに言ってすいません」
それだけ言うと、フェリーネを一緒にまた、着替えの為に小さな部屋へと入って行く。
◇◇
ウェディング専門店をでて、馬車によってふたりはセオラ中央教会へ辿り着く。
ライストファーだったら散歩程度の距離だったが、特長的な身なりのふたりという事でセルジオス殿下のが手配してくだったようだ。
以前は、人の絶えない教会だったが、長い間封鎖されてせいで人の姿は無かった。
ここもどうなるかわからない。セイラが引き継ぐ事になるが、しばらくは何かにしばられなくてもいい。そう思ってしまうほど二人の中は、ジェームスによって近付いた。
けれど……、セイラはいつか、ここへ戻っていくのだろうか?
戻ってこれば、きっとおばあ様は喜んでくれる。
だって、お婆様の視線の先には、セイラもいたのだから。
◇
――居るのに、セイラにはお母さんが、それに……。
そう昔、密かに思った。
そして祖母の癒しをおこなう手の、温かさを求めて掴み握りしめる。
そうすれば、視線がこっちへ向けられることを信じて。
「あら……」
「……えっと、聖女様の勉強したくなちゃいました」
「あらあら、フェリーネは勉強熱心なのね……」
「うぅ……、そんな事ないわ」
気を引きたいだけのだったので、罪悪感がわいてでるから……。
「じゃー……、修道院へ野菜を見に行かない? 運が良ければ収穫させて貰いましょう」
すべてを見通すように、一緒に居てくれた。
◇◇
「あっ、まずこちらからいいですか?」
「そっちは……」
「はい、修道院ですが、頼み込み。私の騎士ということで、なんとか許可をいただきました。私たちが通った壁の抜け道を見ておきたくて……。行きましょう」
悪戯を誤魔化すような笑いを浮かべ、フェリーネは鉄柵の門を開ける。
「懐かしい……、雨の日……君用とミリア用の雨具も買って帰ろうか?」
「私は、黒い雨具で大丈夫ですよ」
そう言ったところで、私とミリアの小さな畑のあった壁の前に出る。
「あっ……、これはミリアが植えたのですよ」
そこには、もう収獲を終えたとうもろこしが、成長した姿で植わっている。
「あの時は、なぜここに畑が? と思っていたが、そうなんだな……」
「そうなんです。食材にいろいろ作ってたんですよ。
修道院で、ミリアが種を貰って来てくれるので。
……もちろうん、ちゃんと食材は貰ってました。
でも、そうですね……。とうもろこしが育ってしまうほど、私はカリオスの土地で生きたのですね……」
そう言って振り向けば、カリオスが、フェリーネを切なげ眼差しで見下ろしている。
「フェリーネ……、俺と……」
「私から……、先に言わせてください。いつもカリオスからですし……」
彼女は笑顔で唇に人差し指を当て、『静かに』そう言いたいように、彼を見つめ、赤い瞳を煌めけせわらっている。
「雨の日の夜、この場所で、毒の紫のもやと、それによる肉体のダメージの黒いもやを身に纏った男性が立っていました。
本当に来てくれた。不安だったんですとても、けれど、貴方は来てくれた。
私とミリアを迎えに、ここへ」
彼女は視線を地に落し、懐かし気に語っている。
けれど、視線はカリオスへと移り、溢れる程の笑顔とちょっぴりの感傷の涙を浮かべている。
「けれど、治療では思わず声をあげてしまうほどの毒です。
雨に当たってしまえば、辛いでしょうに……ここで、カリオス、貴方が待っていてくれました。
迎えに来てくれてありがとう。どんなに嬉しかったかわかりません。
だから、結婚しましょう私たち、これはプロポーズで……順番は逆ですね。」
彼女は、カリオスの両手を握りしめる、あの時には思いもよらなかった、温かな水滴が彼らの手に流れて、落ちる。
「フェリーネ……」
「はい……? あっ、それ以外にも理由は……」
カリオスの親指が、フェリーネの唇に触れた。
「かっこをつけて、騎士の誓いを君に捧げたい。そう思った。
けれど、俺は、俺だ。騎士ではなく、今、領主をやっている。
だから、君にだけ贈る。俺の誓いを聞いて欲しい。
俺の言える事は俺は全力で生きる。どんな苦境でも生を諦めたりしない。
だから……君も最後まで俺と生きて、幸せな老後を生きてくれないだろうか?
ローリエの君の祖父母の様になれるように、俺は絶対生きて帰るから。
そして彼らの様に、夫婦としての幸せを見つめて行う……」
「……カリオス……、はい、もちろんです」
そう言うと彼は静かに目をつぶる。長い睫毛にみとれてしまう。
――でも、表情に陰りが……。
目をパチパチと瞬かせ、ついついカリオスの体の様子を観察してしまう。
――もうこれは職業、変わらないかもしれない。
「すまない。一生分喋った気分だ……」
「あら、無理はしないでいいですが、もっと話していいんですよ」
そう口角をあげて、フェリーネ笑えば――。
「その感じはマーサー様に似ているなぁ……」
「そうですか?」
そう思わず、頬に触れれば、その手の上にカリオスの手が触れて、カリオスの顔が近づいてくる。
彼の顔が近づくのを、目を見開いてフェリーネは見ていた。
けれど、それを彼が見て少し笑う。
そして柔らかさに触れると、彼が目を閉じたのて、フェリーネも目を閉じた。
唇が離れ、ふたたび頬に、柔らかさが触れる。
「フェリーネ」
そう名前を呼ばれ、眩しい様に目を開ける。
「今度は私からですね」
「……そういうものなのか? ………………いや、今の言葉は忘れて欲しい」
カリオスは珍しく赤い顔をして、髪をかきあげ。
「どうでしょう? それではこの教会のカシオペア様に会いましょう」
「初めてお会いするな」
そう言い、もとの道を戻っていく。
「教会が集まる時、君も王都で通うのか?」
二人の間に、つながれた手が揺れている。
「それはですね。安全対策のために、辺境騎士の代表が上京する時と、一緒らしいので、カリオスが出向く時は一緒に出向こうかと……」
「そうしてくれると安心だ」
そうカリオスが穏やかに笑う。それに合わせてフェリーネはニコニコと笑って歩いていく。
このふたりの目の前に、泊まらせて貰っている宮殿で別れたみんなが揃ってたっていた。驚きと、とても、とても恥ずかしい。
「フェリーネ様!」
「サラ!?」
以前の修道服を着たサラが鉄柵の扉を開けてやって来て、目の前に立つ。
いつまにか、カリオスの手は離されていて、二人は手をかたくつなぐ。
「フェリーネ様、よくご無事で……」
「ごめんなさい心配かけてしまったでしょう?」
「それは……けれど、フェリーネはいざとなれば冷静です。きっとどこかで元気でやっていると信じておりました」
そう彼女は目に、涙をためて言ってくれる。
「さっ、まず、教会へはいりましょう?」
そう言うセイラを、フェリーネが見つめた。
「けれど、ここは修道院よ」
「けれど、私が引き継ぐ事になったのよ。早くしないと、おいてくわよ! 師匠」
セイラとの新しいつながりで、呼ばれてうなずくと、サラが玄関の鍵取り出し開けにいく。
残ったフェリーネは、最後にカリオスに腰を抱かれ、みんなの後に続き教会へ入っていく。
逃げたいと思っていた彼女が、居場所ができたことを報告するために。
終わり
見ていただき、ありがとうございました。
マーク団長なんですが、王都に通う中、昔の恋人と会うのですが、彼女は今独り身で金髪の青い瞳の女の子が居るんです。それで昔の恋人はギルドのレストランで働いてて、あっ……これ昔食べた味だ。
私は頑張っている女性に弱くていかん……。と思いつつ結婚します。
ありがとうございました




