第三十話 奥に進もう
アビスが偵察に行ったのを信じて進んで行く。エリサが上級生一人にこの先の地形を聞きだしてきたのでその情報を頭に浮かべてみる。
まず目の前の横幅5mの道は50m程続いていてその先は緩やかなカーブが10m程続くとかなり広い広場に出るそうだ。
広場から出て来なければまた考えるしか無いか。
先ずは視界に入っているカーブの手前から全体を深さ3m程にして掘り始める。横は通路一面に広げるが長さは10mあれば十分だろう。
「ねぇどうやって向こう側に行くつもりなの、まさかこの中に入るんじゃないでしょうね」
「そんな訳ないだろ、俺達だけの安全な道を作るんだ」
数分後にプールが完成すると幅1mの俺達だけが使える道を作りだして慎重に進んで行く。まだ1歩踏み出しただけなのだが慌てた様にディルクが肩を叩いて来た。
「あのさ、やはりこの作戦は無謀じゃ無いか全然ゴブリンが姿を見せないじゃないか」
「カーブの中も掘って行くんだよ。その内にゴブリンは出てくるだろ」
出来れば早くゴブリンが気が付いてくれた方がいいが、まずは穴を掘る事に集中しなければならない。
すると後ろから上級生たちがやって来たがその対応はディルクとカミロが俺の代わりに説明をしてくれている。
煩わしな、危ないからもうすこし安全地帯の道を広げた方がいいな。余計な手間になってしまうが落ちてしまったら怪我をしてしまうだろうし救助の為に階段を作らなくてはいけないのでそうならないようにやるしかない。
今の状況は徐々に奥に向かってプールが広がって行き、その真ん中に道が出来ている。堀を作った経験をいかしてちゃんと固めて作ってあるので一度下に落ちてしまったらそう簡単いは這い上がる事はできないはずだ。
『君は随分と面倒な事をしているな』
『お帰り、それよりどうだった?』
『そうだな、魔法陣からゴブリンが生まれているな、ただ私は魔法陣は詳しくないから良くは分からん』
『やはり入口以外に入る方法があるって訳か』
『さぁだがあいつらはようやく君達の存在に気が付いたようだぞ』
まだ広場は見えていないがその前にゴブリンが姿を見せ始めた。
「おい君、これじゃ戦えないぞ、どうにかしたまえ」
「さっきディルク達が説明したんじゃないですか。ディルク、俺に話し掛けさせないでくれ」
「あぁごめん」
理解出来ていない様なので本当だったら俺の口から説明したかったがそんな暇は無い。穴を見つけたゴブリンは立ち止まるのでは無くてその中に飛び込んだ。
すると理解したのか先輩方が後ろで気合を入れている声と音がする。
「みんな分かったな、近くに寄って来たら飛び込んで戦うんだぞ」
馬鹿な声が後ろから聞こえてくる。
「おいっディルク、何してるんだ」
「先輩、だから下からじゃ無くて上から討伐するんですよ、じゃないとこれの意味が無いじゃないですか」
「けどここには弓を持っている奴は少ないぞ」
「だったら石でも何でもいいじゃないですか」
馬鹿な連中を無視して前を見るとゴブリンは3mの高さから飛び降りても無傷のようだ。先ずはその連中の太もも辺りまで埋め戻す。
上手い具合に足止め出来たゴブリンをそのままにしてそこから逃れたゴブリンには顔に【ファイア】を当てていくが、命中率が思ったよりも悪い。
「くそっやはり動かれるとこれか」
『あいつらの動きをよく見るんだ。ちゃんと予測しなさい』
「分かってるよ、ファイア、ファイア、ムーブ……」
安全地帯の道に取り付かれないようにちゃんと10Mの距離は保っていたのだが思うように討伐出来ずに足元の壁にゴブリンがへばりつき始めた。だが指を掛かられる場所が無いので簡単には登る事は出来ない。
「くそっ上手くいかないな、だったらこれなら」
ゴブリンの動きは奇妙なのでどうしても当てにくい。もう先読みとかはどうでも良く、【ファイア】連射でどんどん撃ちまくる。
「みんな、一斉に石を落とすぞ、いいな」
「なぁ、手が空いた者はもっと拾ってきてくれ」
上手い具合いに下にいる数匹のゴブリンを倒しているようなので俺は奥にいるゴブリンをこれ以上来させないように集中する。
『無駄撃ちは止めてこうするんだ』
アビスが俺の手を持ってゴブリンに狙いを定めると簡単に当てる事が出来る。
『流石だね』
『そんなお世辞は良いからこの感覚を早くつかみなさい』
アビスのおかげでこの戦い方に慣れてきてプールの中には焼け焦げたゴブリンの死体が転がっている。徐々に数も減ってくると穴の中に埋めてしまう事も容易になってきた。
「先輩方、これで大分数が減って来たので向こうと繋げますよ、そこからは任せても良いですか」
「あぁ分かった。任せてくれ」
数匹はまだ下にいるがその討伐も任せて向こう側に道を繋いでいく。
『早く魔法陣を何とかした方がいいな、まだ増えるんじゃないか』
『だったら早くしないと』
このまま諦めて戻ったらこれまで倒したことが無駄になってしまう。此処は一気に行くしかない。
「あの、もし多かったら戻って来て下さい。その為の準備はしておきます』
「「「おおおお~~~~~」」」
繋がった瞬間に勢いよく走り出していく。俺はそれを見ながら下にいてまだ動いているゴブリンにとどめを刺した。
『人間てのはやはり好きに慣れんな』
『どういう事だ? ゴブリンじゃないのか?』
アビスは姿を消したままなのでその表情が見えないが、吐き捨てるように言ったその言葉が胸に突き刺さる。




