第二十九話 ゴブリン退治
慎重に進んで行ったがゴブリンと遭遇する事も無く下に行く階段を発見した。クロードはその階段を覗き込んで嫌そうなを顔をしている。
「なぁ本当に下に行くつもりなのかい」
このダンジョンの中ではリーダーであるディルクがそれに答える。
「発見したんだから行くに決まっているだろ」
「あのさ、下の階段が分かったんだからこれで地図が正確に読めるじゃないか、それにこの下は本来は私達が言って良い場所じゃないんだよ」
クロードはゴブリンが怖いのかそれとも先生が怖いのか分からないが4階層に行く事をためらっている。
「ゴブリンに襲われて下に逃げたことにすればいいだろ、もうそんな議論は止めようぜ」
「でもさ……いてっ何をするんだねカミロ、頭突きは止めてくれよな」
「お前がごちゃごちゃ言うからだろ、もう行くんだよ」
エリサとクロードには中央に入って貰い、残りの3人で三角の形になって階段を降りていく。
下に下りるとまたしても風景は変わっていて、まるで人の手で作られたような通路が続いていた。
「この階層の地図はあるんだよね」
エリサがディルクに声を掛けると、先頭のディルクは振り向かずにそのまま答える。
「それが無いんだよね、だってさ僕達は入ってはいけない場所だろ地図は貰えていないよ」
その時にアビスから指示が聞こえたのでそのまま伝える。
「そこを左に曲がると3匹いてさらに先に進むと5匹だってさ」
「えっ、あぁそうかアビスだね、だったら僕とカミロだけで戦ってみようか、それで少しでも苦戦するなら諦めるよ、クロードはそれでいいよな」
「まぁそうだね、いいかい苦戦したら駄目だからね」
曲がり角の手前で息を潜めるようにして待っている。ゴブリンの腕が見えた瞬間に姿勢を低くしたままディルクはその腹を切り裂き、そのカミロを捕まえようとしたゴブリンをカミロは1匹を蹴り飛ばし、もう1匹は片手斧を頭に垂直に下ろした。蹴られて壁にぶつかったゴブリンは振り返った瞬間にディルクが喉元を貫く。
「ユリアスみたいに綺麗とは言えないけどね」
流れてもいない汗を拭きとる様な仕草をしながらディルクは言ってくる。カミロは油断する事なくその先を見つめている。
「まだ終わってねぇぞ、俺とお前だけでやるんだろう」
「そうだね、やるしかないか」
今度は奇襲が出来ずに正面から5匹のゴブリンと対峙する事になったが、自信にあふれた2人は危なげなく討伐してしまう。
2人は自慢げに振り返ったが、戦っている時にアビスから聞いた情報を告げるとディルクから笑顔は消えた。
「本当かよ、次は30匹だって言うのかい」
「そうだね、アビスが言うには固まっていて動いていないみたいだけど」
「さぁ君達はもう充分だろ、いくら何でもその数は私達ではどうにも出来ないさ、せめてもっと人数がいれば止めないけどね」
クロードはもう撤退を考えている。だが、カミロはまだやる気に満ち溢れていた。
「いや大丈夫だろ、あいつらの武器は棒ばかりだぜ、無傷と言う訳にはいかないだろうがやれるはずさ、なぁ今度はユリアスも魔法を放ってくれ」
「それは構わないけどさ、けど固まっているっておかしくないか、これまでの奴らは動いていたのに」
するとエリサが閃いたとばかりに意見を言ってきた。
「動いていないんだったら埋めちゃえば良いんじゃない。それなら簡単でしょ」
エリサはどうやら俺の魔法を過信している。いくら何でも30匹を一気に埋める程の穴は一度には作れない。
『どうやら此方に向かっている人間がいるぞ、姿を消さないといけないか』
「えっやはりいたんだね、良かった~」
エリサが声を上げたとほぼ同時に血だらけの先輩達が此方に向かって走って来るのが見えた。
それは9人いて彼等は俺達の前で立ち止まる。
「君達はもしかして2年生か、こんな場所で何をしているんだ。余計な事をしていないでダンジョンから出なさい」
本来ならディルクが言うべきなのだが、嘘がつきたくないのか俺の方を見て来たので代わりに答える。
「上で襲われてやむを得ず下に逃げて来たんです。それよりこの先にゴブリンの集団が固まっている気配を感じたのですがどうしましょうか」
「この先? それはどっちだ」
アビスから聞いた方角を指さす。
「何でそんな場所に居るんだ?」
「そうよだってそっちは行き止まりの広場でしょ」
「もしかしたらそこに隠れていた誰かが襲われているのか」
俺の話を聞いた途端に先輩達だけで話し合っている。俺が気配でゴブリンを感じる事が出来るとなっている設定はどうでもいいようだ。
「どれぐらいいるんだ?」
「私が分かる訳にでしょ、あの子に聞いてみなよ」
俺に意見を求めて来たので答えると再び先輩達で話し合っている。
『何をこいつらはしているんだ? 君らも含めれば余裕じゃないか』
『そうかも知れないけど見てみろよ、傷だらけじゃないか』
『あんな連中にやられたのか、こいつらは虫けらだな』
『止めてくれよ、それは言い過ぎだって』
『だけどな、こんな話をしている間にまた増えているぞ』
「え~ゴブリンが増えているの」
「ちょっと静かに」
アビスの言葉だけを聞いたエリサは何処まで理解をしているか分からないが、ゴブリンが増えている事に過剰に反応してしまった。
俺が魔力で探った事を説明し、何故かゴブリンが増えてしまった事を告げるとまたしても9人の話し合いが始まってしまった。
何だよ埒が明かないな、そういや行き止まりの広場か、だったら試すのもありかな。
ちょっとした案が浮かんだのでされげなくディルクに耳打ちするとそれは直ぐにカミロにも伝わった。
「それなら良いんじゃねぇか」
「そうだね、無理なら引き返せばいいしね、だったらユリアスに任せるか」
そっとその場所に3人で向かって行くとクロードもエリサもついて来た。
「私達を置いて行くなんて酷いでは無いかね」
「そうよ、黙って行く事ないでしょ」
俺のせいだと思っているらしいので答えるしかない。
「先輩達と残っていた方が安全かと思ったんだよ、アビスだっているんだからさ」
「あのね、アビスちゃんは信用できるけどあの人たちは決断力が無いから信じられないの」
確かにそう思うけど少しエリサの言動が辛辣すぎる。
『増えているくせに何で動かないんだ』
『あのさ、そう思うなら見に行ってくれないかな』
『見るだけだぞ』
雑魚だと言うならアビスが全部倒してくれても良いんだけどな。




