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第二十七話 ダンジョンの中での異変

 虫型の魔物しかでない1階層と2階層を順調に進んで行き、3階層に入ると直ぐにネズミのような魔物が出て来たのでまたしても【ムーブ】で埋めてしまうと何故かディルクは浮かない顔をしている。


「あのさ、その魔法は良いんだよそんな風に使いこなせるなんて本当に素晴らしいんだよ、だけどさ、どう考えてもダンジョン向きの魔法じゃないよね」


「んっ、ダンジョン向きだと思うんだけど」


「いやいや、あの程度の魔物だから倒した後に落ちる魔石は大したことないけどそれでもダンジョンの醍醐味は魔石でしょ、それを持ちかえらなければ一銭にもならないんだよ、だったら何の為にダンジョンに入るのさ」


 すっかりと忘れていた。そうだよな、ゲームじゃないんだから下に行けばいいって訳じゃないのに。


 すると今まで暇そうに歩いていたカミロが意見を言う。


「だったら俺とディルクが討伐すれば良いんじゃねぇか、ユリアスには俺達だけでは無理だと判断したらやって貰おうぜ」

「そうしてくれると嬉しいな」

「分かったよ、しっかり後ろから見ているからな」


 三人の話し合いで方向は決まったが、エリサにとってはこの決定は不満だったようだ。


「ねぇそれじゃ私は何なのかな? 何の為に入ったか分からないんだけど」


 俺達には無かったその答えをディルクは持っていた。


「エリサちゃんは俺たち以上に冷静に見ていて欲しいんだ。目の前の敵が全てじゃないし俺達が怪我をしたら直ぐに回復魔法を掛けて欲しいんだよ」

「そうだったら良いんだけどさ。分かった頑張ってみるね」


 エリサは騙されたか、それともディルクが本気でそう言っているのだろうか? 俺達が下に行って良いのはここまでで、あの程度の魔物しか出ないと言う事を。戦闘で怪我するよりも転んで怪我をする方が確率は高いのに。


 するとずっと存在を消していたクロードが不満気な声を上げる。


「君達は楽しそうでいいね、それでこの私の役目は何なんだい。それがあるから無理やり連れて来たんだろうからね」


 その答えを用意していなかったのかディルクは無言のまま歩いているし誰もクロードの問いかけに答えようとはしない。


「ちょっと待ちなさい、何で無視をするのかな、いいかい私はダンジョンなど興味は無いと君達に告げたよな、それなのに無理やり連れて来たという事は大事な役目が待っているから何だろうね」


 カミロが肘でそっとディルクを突くと、作り笑いを浮かべながら振り返る。


「いや、まぁその、それはカミロが言うよ」

「あっズルいぞ、あのな正直に言うから怒らないと約束してくれるか」

「それは聞いてからだね、言わなければ確実に怒るけど」


 俺とエリサは少しだけ距離を空けて様子を見る事しか出来ない」


「そんな大した事じゃねぇんだけどよ、お前が嫌がるからそれが面白くてな、ほらっノリってやつだよ」

「そんなくだらない理由で連れて来るなよ、そもそも君はね……」


 クロードの怒りが爆発しそうになった時に言葉を遮るように上級生のパーティが俺達の横を勢いよく通り過ぎていく。


 そして最後尾にいた男が立ち止まり息を整えながら真剣な表情で言ってきた。


「君達も早くこのダンジョンから出るんだ。俺達は先生を呼び行くところなんだよ、急げよ」

 

 意味が分からないしそんな理由で出れないと思ったのかディルクが代表として先輩に尋ねる。


「何が下であったんですか」

「説明している時間は無いんだ、早くしろ、分かったな」


 その言葉を残して先輩達は走り去ってしまった。この3階層は迷路のようになっているし正解の道もいくつもある為に他の道からも人が走っている音が聞こえる。


 戸惑うディルクに俺はその肩に手を置いた。


「君はリーダーなんだろ、どうするのか決めるのは君だよ」


 初めてのダンジョンでリーダーを任されたディルクに全責任を負わせるのは少し可哀そうだがそれがリーダーの役目だから仕方がない。


『何を騒いでいるのかね、たかが下で魔物がいるだけだろ』

『アビスは分かるのかい』

『当たり前だ。この私を誰だと思っているんだね』


 するとまたしても他のパーティが走って来たのでディルクはその中の一人から詳しい話を聞きだした。


「みんな、僕達も直ぐにダンジョンを出るよ」

「先輩は何て言っていたんだ?」

「下の階層でゴブリンが出たんだってさ、それもかなりの数だそうだよ」

「ゴブリンッてダンジョンの中にもいるんだ?」


 てっきりゴブリンは森の中にだけ生息しているのだと思っていたのでダンジョンでも生まれるとは知らなかった。


 俺の質問にはディルクではなくクロードが答えてくれる。


「そんな事は聞いた事が無いね、それにこのダンジョンは学校に中にあるんだよ、そんな危険なダンジョンなら訓練場にしないで破棄するはずさ」

「ダンジョンを破棄するって?」

「君は……まぁ去年教わった事だから知らなくても仕方が無いか、いいかい……」


 クロードが俺に対す講義を始めたら直ぐにディルクが大声を上げた。


「君達は何を冷静に話しているんだい。そんな話は此処を出てからにしてくれよ」


 そう言って走り出したディルクを俺とクロードは顔を見合わせてから後を追いかけた。


 そうだよな、ゆっくり話している場合じゃないよな。


 先頭をディルクにして進んでいると、何故か先輩のパーティが正面から走って来た。


「おいっ君達は何処に行くんだ、そっちじゃないぞ」

「あっまた魔物が出たじゃない」


 俺達のせいで魔物が出た訳じゃ無いが、カミロとディルクが戦っている間にそのパーティは先に行ってしまった。


『ゴブリン程度であの騒ぎか、馬鹿な連中だな』

『しょうがないんじゃないか、もっと戦える連中だったらこんな初級ダンジョンでは満足しないと思うしさ』


 あのマティアスですらつい先日このダンジョンに入って簡単に最下層まで行ったそうだ。それも2人というのだからその程度のダンジョンなのだろう。


 再び俺達だけで走り出したが行き止まりにぶつかってしまい。ディルクは壁を叩いて悔しがっている。


「何で此処が行き止まりなんだ。ちゃんと地図を見ながら走っていたのに」


 多分、出だしから違うんだよな、じゃないとあのパーティと向かい合って出会う訳ないんだから。まぁ初めてだから仕方がないのか。

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