第二十六話 いざ、ダンジョンの中へ
初めてダンジョンに入るせいで門番から説明を聞かされたので先輩達が先に入り俺達は一番目に並んだのに最後に入る羽目になってしまった。
ようやく入ったダンジョンは入口を抜けるとかなり明るく広い空が広がっていて床も舗装されているかのように平らになっていた。
「何で私がこんな場所に来なければいけないんだ」
「もういい加減に諦めろよ、ちょっとした冒険を楽しもうぜ」
片手斧を肩に乗せながらカミロは軽い口調で言っている。
『何を慎重に歩いているんだ? 雑魚しかいないぞ』
『初めてだから仕方が無いんだよ』
最初の説明でこの階層と2階層には虫型しかいなく3階層に進んでようやく小型の魔獣が出てくるそうだ。
すると先頭を歩いているディルクが声を上げた。
「みんなそろそろ出てきそうだから注意して、ユリアスは後ろから指示してくれよ」
「あのさ、リーダーはディルクがした方が良いんじゃないか、その練習の為に此処に来たんだろ」
「そうだけどさ、僕で良いのかな」
「「おぉ~」」
俺とカミロは声を上げて景気良く行こうとしたが、エリサとクロードは冷めた目で俺達を見ている。
そんな目をするなよな、分かっているってたかが虫なんだよな。
「ほらっ出てきたよ、僕は左を倒すからカミロは右を倒してくれ」
「あいよ、任せろや」
俺達の目の前には50cm程の毛虫が大量に壁に張り付いている。倒す必要は無いと思いうがディルクはショトソードで突き刺し、カミロは片手斧を振り回している。
いやいや何なんだよ、どう考えてもやり過ぎだよな。
「あぁもうやだっ」
俺の前にいるエリサが嫌そうな声を上げた。
「どうした? 何かあったのか」
「何かじゃ無いわよ、ちょっと止めさせてよ」
エリサは新調したばかりのローブの裾をつまんで俺に見せるとそこにはミノワームの体液がべっとりと付いていた。
カミロが大きく片手斧を振り回しているのでちぎれたミノワームの身体が後ろに飛び散っているし、ディルクも突き刺した後は適当に振り落としているので後ろの事など全く考えていない。
「後で洗い流すけど、もう少し離れようか」
俺達が距離を空けてからものの数分で壁に張り付いていたミノワームを倒し終えた2人はやり終えた感満載の笑顔で振り向いて来た。
「出だしは好調だな、もっと歯ごたえが欲しかったぐらいだぜ」
「僕も良い感じで討伐出来たよ」
勝利で喜んでいる彼等に苦言を言うのは可哀そうだがここは年長者として上手く言わなければならないだろう。
「あの……」
「ねぇ、あんた達は馬鹿でしょ、無抵抗の虫にあそこまでやる必要があるの? それにさ後ろに人がいるんだからもっと考えてくれないかな? それともそんなに余裕が無い程の強敵だとでも言いたいのかな、それにさ……」
エリサは怒りを抑える事が出来ずにずっと文句を言い続けた。
いくら周りには俺達以外はいないとはいえ流石に可哀そうになってきたの助けてあげる事にした。
「もうその辺にしてあげたら」
「駄目だよ、だって全然わかってないんだよ」
そこまで言われるとカミロはようやく頭を下げた。
「悪かったって、俺の攻撃が当たるのが久しぶりだったんでな」
「僕はもしかして冒険者にも向いていないのかな」
ディルクは予想以上に落ち込んでしまったので今度はエリサが慌て始めた。
「あぁもう、私が言い過ぎたんだってば」
「だったらこの話はこれでおしまいだね、じゃあ汚れを落とそうか」
これ以上空気が悪くなるのも困るので会話を止めさせ、エリサ達の服にどんどん【ウォタ】を掛けていく。かなりびしょ濡れにしてしまうが、体液で汚れたままよりかはマシだろう。
カミロは顔も洗い始めたが、ディルクは遠慮がちに俺の手を掴んだ。
「もう魔法は唱えなくても良いよ、まだ入ったばかりだと言うのにそこまで魔力を使う必要は無いって」
そうか、ディルクは知らないんだよな。
俺が言うと自慢しているように聞こえてしまうので口籠ってしまうが代わりにカミロが答える。
「気にするなよ、ユリアスの魔力はけた違いなんだからこれぐらいじゃ何ともないさ、お前も顔にかけて貰ったらどうだ」
「そうさ、だから遠慮しないでよ」
「そうなんだ、じゃあ」
みんなの服の汚れを落としているうちに、先程まで転がっていたミノワームの死体はダンジョンに吸収されていた。
『あのさ、どうしてダンジョンで死ぬと吸収されるのかな』
『ダンジョンだからな』
その意味が知りたかったのだがアビスにとってはそれが常識らしく、いくら違う聞き方をしても全て『ダンジョンだから』で返されてしまう。
その後もミルワームは壁に張り付いていたがその横を素通りしても攻撃はして来なかった。それなので1階層はそのまま終わるのかと思ったが、俺達の進攻を妨げるように1匹の甲虫が飛んでいた。
「あそこのクランビートは誰が倒す? 希望者がいなければ僕がやるけど」
クランビートは小さい甲虫の魔物だが、近づくと勢いよく体当たりしてくるのじゃなり痛い。本当だったら盾師が防げば簡単に対処できるのだが、このパーティの中には誰も盾を持っていない。
「俺の片手斧が盾代わりになるんじゃねぇか」
カミロが一歩前に出るとクランビートは地上に降りて小さいながらも前足を持ち上げて威嚇をしている。
それだったら俺の出番かな。
「ちょっと待って、ここは俺が戦ってみるよ」
俺がカミロの肩を掴むとエリサが驚いたように声を上げる。
「止めた方が良いんじゃない。アーロンさんにまるで歯が立たないんでしょ、強さは比較にならないけど無理しない方が良いと思うよ」
そうだとしてもアビスより小さなクランビートにやられると本気で思っているのだろうか。もしそうだとしたら悲しすぎる。
「いいから見ててよ、行くよ、ムーブエンムーブ」
クランビートの足元を掘って落として直ぐ埋め戻す。ただそれだけで視界からクランビートは消えて行く。
「「「えっ」」」
「驚いてないで先に進もうよ、埋めたただけだから出てくるかも知れないからね」
クランビートを埋めた場所を通り過ぎてから少し様子を見ていても地面から出てくる気配は無い。
『おっダンジョンに吸収されたぞ』
『まさか窒息したのか』
『生き埋めか』
『その言い方はちょっとやだな』




