判定後の晩餐
夕食は豪華だった。昨晩から目が覚めたはずなのに過去の自分が知っていることは分かるようだ。ヴェルのことも覚えていて、事あるごとに話さない俺の面倒を見てくれたり、少し年齢が上の子たちからも守ってくれていた。ヴェルは優秀で狩りも大人と一緒に行っていたのも覚えている。容姿は大人になると美人系になると思われる。ちなみに、彼女の父は鬼人で母がダークエルフというハーフだ。
「さて、リヒト。判定した個性の確認だが、火魔法レベル1、剣術レベル1でいいかい?」
グウェンの顔は他に思うところがある様子だった。
「父さんの言っているとおりだよ」俺はソツなく嘘をつける人生レベル17歳+エルフ歴6年。
「では、確認するが『金髪』が入っていないのはおかしい。他に隠しているのは無いか?」
グウェンの雰囲気がいっぺんして周囲に圧力が増えた。正直、6歳のエルフっ子の全身には鳥肌が立ち、逃げたい気持ちしかわかない。悲鳴をあげるのを堪える。
「これでも声を漏らさないか。流石だな」とグウェンは感心した様子で圧力が霧散した。
「父さん、ごめんなさい。金髪はあります。これって外見だから皆それぞれ判定されないの?」
「いや、『金髪』はダークエルフでは存在しない。リヒトだから言えるが、正直、存在が不安定だ」
「リヒト、グウェンが言いたいのは、言い伝えくらいしか『金髪』が無いのよ。だから村中がリヒトのスキルが気になっていたの。だから正直に答えて欲しいのよ」童顔ダークエルフ母は俺の席の横に来て目線を合わせる。
「母さん、火魔法レベル1と火魔法適性はセットじゃないの?僕は火魔法を使ったことがない」
「適性を一緒に考えていたのか。ということは、剣術適性もあるのか?」とグウェンが納得顔で言う。
「そうです。剣術適性、火魔法適性があります」
「グウェン、これからリヒトはどうなるの?」
シュエルの質問は俺がいちばんグウェンに聞きたかったことだ。
「まず、リヒトに選択権がある。1つ、魔族としての地位を確立し生活を送る。これは訓練をしつつ、他の魔族との競争となる。上手く推薦できるレベルになれば魔族学校に入り、その上を目指すことになるだろう。2つめは、このまま村に残ると言う方法もある。剣術と火魔法があるから、近郊までの護衛警備は命じられるかたちになる」
「ねぇ、父さん。そのふたつ以外に他に方法はないの?」俺は努めて笑顔で確認をする。そして、精一杯の気持ちをグウェンに注ぐ。
「・・・ないわけじゃない。というか始めから知っているかのようだな。3つめは外に出ること」
「グウェン、それじゃリヒトともう会えなくなるじゃない!!」シュエルの声が響く。
「そうと決まったわけじゃないし、外に出たって戻れないわけじゃない。それに『金髪』はダークエルフでは不穏となる。村に残っても他の子に邪魔されたり、シュエルと俺だけじゃ安全を確保できないことだってあり得る。ただ、選択はいまじゃない」
グウェンも少し寂しそうだ、誠実さが伝わってくる。少なくとも俺をどうにか利用するという気がないように見える。ダークエルフは狡猾・残虐・知的向上が高いイメージが前世ではあったが違うようだ。両親だからかもしれないが、ヴェルにも誠実なものを感じるから余りイメージでいかない方が良さそうだ。
「父さん、ありがとう。でも、まだ分からないことだらけだから、僕は訓練をしたい」
「それなら母さんが教えてあげる!!魔法ならグウェンより上だから」とシュエルがにこやかに笑い、グウェンはまだ俺に確認したいことがあったようで諦めた表情で食事が始まった。