09
「妖の成長は早いからなあ。あの時代にカメラがなかったことだけが悔やまれるけどね」
犬っこは、「くそが」とワケわからない捨て台詞を吐いて教室から出て行った。嬉しいのやら悲しいのやら、色々せめぎあっているんだろう。
「斎火様!?」
「放っておけ。落ち着いたら戻ってくるだろうよ」
「…ちょっと待ってや?そしたら、タマは何歳になるん?」
「肉体年齢は17歳だけど、実年齢は犬っこより5つ歳上になるかしら。もう数えるの止めたから、詳しいことは知らないけど」
「斎火さんより歳上…」
「ババアじゃねぇか、お前」
驚いた声が上がるなか、やっぱり一宮は一宮だった。ババアだとは認めるが、それは中身の問題であって、外はピッチピチの17歳だ。
「どうやって、生きてこられたん?」
「保護者である神様の領域に居たわよ。花嫁が見付かるまでの代理巫女として。花嫁が見付かったら、影武者巫女としてね」
「よし、規格外」
「…まあ、規格外といや規格外なんだけど、一宮にそう言われるとムカつくわ」
「タマちゃん、だから物知りだったんだねぇ」
「やっぱり、ひよは可愛いわ」
「昔、お化けから助けてくれたもんね!」
ニヘラと笑う日和。なんで一宮の花嫁なんだろう、解せぬ。「どうや俺の嫁、可愛いだろうそうだろう」と私を見て言う一宮はウザい。一睨みして、私は話を最初に戻すために咳払いをした。
「話がかなり逸れましたが、酒呑童子が来たら多分、鬱憤が溜まったであろう犬っこが戦前に立つかと思うので、私はサポートと女の子たちの護衛に務めます」
「あぁ、良いだろう」
「お酒に関しては、まあ来たら良いかなの気持ちでよろしくお願いいたします」
その後の話をしておこう。
犬っこから、もっと話はないのかとせがまれた。実のところ、忘れかけているのでまた後日と逃げた。朔夜の名前自体を忘れていたのだ。場面なら兎も角、そんな細々とした話を覚えているわけがない。実家に置いてある日記を、|譲羽さんに送ってもらわなければならなくなった。終宵様にバレたらからかわれるし、譲羽様なら大丈夫だと信じたい。
お蝶ちゃんからは、頭を下げられた。私こそでしゃばってしまったから謝ったけど、あれから自室で御先さんに淡々と怒られたそうだ。私に謝ることでもないのになあ。
他の女の子たちからは、なんか色々と頼られている。何故か私に恋愛相談しに来たりする。私に恋愛相談したって、私、恋愛未経験者なんだけど。恋愛相談されたって、妖側の一般的な意見しか返せない。恋愛相談ってだけで、他のクラスの女の子にも声をかけられるようになった。
それは、女の子たちだけじゃなくて、妖男子からもだった。解せぬ。誰かが、終宵さんの奥方の恋愛相談にも乗っていると吹聴したらしく、多分それだ。女の子もそれを聞いたらしい。確かに、譲羽様の恋愛相談もといノロケを聞いているが、それは単に私が譲羽様より終宵さんとの付き合いが長く性格を理解した上で、である。
それでも、私が相談を聞くのはそういう性格なんだろう。我ながら厄介な性格をしている。昔から巫女で、仕えていた人間だ。お節介にもなるし、世話焼きにもなるだろうさ。




