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時が流れるのは早いもので、皐月になり、桜の木も花びらを散らせ、新緑の葉を生き生きと生い茂らせている。待てど暮らせど、目的の酒呑童子は姿を見せない。被害だけが拡大し増加していた。
「ーーもう何回目だろうな、これも」
「煌希、また元老院かいな」
「捕まえろと」
生きる屍の様な顔をした御先さん。度重なる元老院からの召集に、疲れきっていた。お蝶ちゃん曰く、元老院は呼び出す時間を考えておらず、突発的なんだそう。そりゃ疲れるよねぇ。おちおち休めもしないわ。
「何かないのか、タマ」
「何かって言われても…」
御先さんにまでタマ呼びをされるようになった私は、うーんと考える素振りをする。もうこのやりとりも何回目になるのやら。考えて、考えて、それでも出て来なーーー…いや、ないこともないし、もうそれも必要もないな。
「念願の奴さん、やっと来ましたよ」
「え?」
「あぁ、確かに来たようだな」
ハッと鼻で笑った御先さん。犬っこは、目を閉じていて余裕さえも感じられる。一宮や他の妖男子たちは違う。殺気立っていて、まるで親の仇を見るかのように外を睨む。
「タマちゃん…」
「大丈夫、私が守るから。あぁ、他のクラスの子達も此処にひと集めしてしまおう。どこにどう被害が出るか分からないしね」
「では、僕たちが呼んできます」
「お願いします」
3人の妖男子たちが教室から出て行ったのを見て、私はスペース確保のために、机や椅子を後方に集めるべく動き始めた。
「大丈夫なんですか、煌希様…」
「蝶子、何も案ずることはない。堕ちた鬼なんぞには負ける気はない」
「どうかご無事で」
死にに行くんじゃあるまいし、と思ったが強敵は強敵だからそんなものなんだろう。私が助太刀に入っても、どれだけ役に立てるか分からない。長年武道派の巫女をしてたって、相手は極悪非道の酒呑童子。どうにかなる精神で戦ったら負けそう。
「花嫁たちの避難は完了しました。妖たちにも通達してます」
「よし。教員共は?」
「はい、時雨先生に会ったところ、傍観に徹すると。校舎の破損等には目を瞑ってくださるとのことです」
「傍観に徹するんなら、当然の措置やな」
「それでも教師か、って感じだけど。元老院共々役に立たねぇ集まりだな」
「いつもより口が悪いな、朔夜」
「長いこと待たされたんだ、当然だろ」
「みんな苛立ってたんだねぇ」
のんびりと日和が呟く。手掛かりもないし、今か今かと待ち焦がれていたのだ。苛立ってもおかしくはない。特に元老院に突っつかれていた御先さんは。恨み辛みも沸々と沸き上がってくる頃だろうなあ。
「タマちゃん、本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫だとは思うけど、酒呑童子がどれだけ強いか分からないしねぇ」
「えぇっ、そんな…」
「無責任?でも、伝承でしかアイツを知らないし、私に期待されてもちょっと応えれるかどうか」
「ーータマちゃんは、あくまでもひよたちの護衛だよ」
日和の言葉に皆が黙った。そりゃ、サポートにも入るかもしれないけど。あくまでも護衛。護衛じゃなかったら、最初から戦闘要員だよねー。日和もたまにキツいこと言うからなあ。私のためだと思えば可愛いけど。
「…そうですわ。タマちゃんは、わたくしたちを守ってくださる。ならばわたくしたちは、無事を祈るだけです」
「…蝶子ちゃん、でも」
「あら、自分の旦那様が信用できないの?斎火様や煌希様、一宮様と御三家が揃ってるんですのよ。それに、死ぬ前には帰ってきますとも」
死ぬ前にって。死にに行くんような素振りで、話をしていたのは誰だろうね。日和とが合ったけど、あえて黙っておこうと言外に告げた。お蝶ちゃんは、周りの女の子を宥めてくれただけだし。
「とにかく、私たちは此処で待機です。願いや祈りが具現し九十九神を生んだように、それは神に通じます。無事を願ってください。成功を祈ってください」
「…うん」
「負けません。誰も死にません」
手を組んで祈り始めた女の子たちを見て、お蝶ちゃんも祈り始めた。此処が戦場になるのは初めてなんだろう。妖男子たちが全員狩り出されるのは初めてなんだろう。だからこそ、不安と恐怖が大きくなる。
不安は、妖男子たちも抱いているだろうけど。私が何を語ると言うわけでもないけどねえ。
私も気合い、入れ直さないとなあ。




