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三話

 善正さんの話だとこうだった。


 何でも昨年の夏頃にお堂を見に行ったら。白いワンピースを着た透けた女性がいたらしい。もちろん、善正さんは腰を抜かすくらいには驚いたとか。陽一兄ちゃんは嵐月様と一緒に考え込んでいる。月華様も難しい顔だ。


「……成程。その女性の霊は去年からいるんですね」


「はい。どうにかできないでしょうか?」


「わかりました。除霊は本堂でします。今夜は一泊させていただけないでしょうか?」


 兄ちゃんが重々しく言ったら。善正さんは「そうですね」と言って考え込んだ。あたしはどうしたもんかと兄ちゃんを見た。


「……わかりました。本堂にお泊まりになるとは聞いていますしね」


「あの。もしよろしければなんですが」


「はい。何でしょう?」


 善正さんが不思議そうな表情をする。兄ちゃんは申し訳なさそうに言った。


「……こちらの近くにスーパー銭湯とかありますか?」


「ああ。すぐ近所にありますよ。わかりました。私がご案内しましょう」


「すみません。無理を言って」


 善正さんは笑いながら「気にしなくていいですよ」と言ってくれた。こうしてお風呂の件は解決したのだった。


 その後、昼間の内にと本堂に案内してもらう。だが何とも言えない嫌な気が肌を刺すように感じた。兄ちゃんや嵐月様達も同じように思ったらしい。その表情はいずれも険しいものだ。


「……本堂のあちらの辺り――北側の隅によく現れるんですが。私がお経を唱えてみても我関せずといった感じでしてね」


「……成程。横野さんがお経を唱えても効果はなかったんですね」


「はい。何度か試しましたが。なかなかに渋とくて。それで光村さんに依頼をする事にしたんです」


 横野さんはそういうと苦笑いした。あたしは兄ちゃんの着ているジャンパーの袖を引っ張る。


「……あの。横野さん。あたしからも一ついいですか?」


「……ああ。いいですよ。どうしましたか?」


「このお堂に入った時から嫌な気配がするんです。刺すような感じというか」


 あたしがはっきり言うと善正さんは目を少し見開いた。驚いたらしい。


「嫌な気配ですか。実は私もあなた方程ではないかもしれませんが。刺すような視線らしきものを感じています」


「やっぱり。兄ちゃん。これは早めに退治した方がいいね」


「だな。横野さん。僕達が除霊をやっている間はお堂には入らないようになさってください。何か危険な事が起こるかもしれませんから」


「……そうですね。光村さんの言うようにしましょう。家内にも伝えておきます」


「お願いします」


 横野さんは頷く。こうしてあたし達は本堂にて夕方まで待機する事になった。


 けど、兄ちゃん達の提案もあり先にお風呂や夕食を済ませる事になった。まず、善正さんも一緒に五人でスーパー銭湯に向かう。着替えやタオル、シャンプーなどお風呂セットを洗面器に入れて歩く。月華様や嵐月様も一緒だ。二人もあたしや兄ちゃんで用意したお風呂セットを持っている。五分くらいして善正さんが言った。


「……あ。ここが昼間に言っていたスーパー銭湯です。私もよく使っていましてね」


「へえ。そうなんですか」


「でしたら。私は入口近くで待っていますから。ゆっくりとしてきてください」


 善正さんはにこにこ笑いながら言った。兄ちゃんが「なるべく急ぎます」と答えると。「まあそう言わずに」と言って先に入ってしまった。

 後を追ったのだった。


 あたしは月華様と二人で女湯に行く。場所は入口で聞いた。脱衣場で着替えをロッカーに入れる。鍵がついた紐を手首に着けた。服を手早く脱いでいく。月華様も意外と慣れた感じだ。その後タオルや洗面器、シャンプーにリンス、固形石鹸などを持って大浴場に入った。まずは段積みしてある椅子を持ってずらっと並ぶシャワーヘッドの一つの前に置いた。椅子に座ってタオルなどを取り付けてある鏡の下に置き、蛇口を捻ってぬるま湯を出す。そうしてから髪や身体を濡らした。お湯を止めてシャンプーの小瓶を手に取り蓋を開ける。中身を適量出して泡立てた。髪に塗ってゴシゴシと擦る。しばらく泡立てて洗い、お湯をまた出してすすぐ。リンスも同じようにして再びすすいだ。タオルで水気を拭いたら。顔を洗顔フォームで軽く洗う。お湯で泡などを流したらタオルに固形石鹸を擦りつける。何度かしたら泡立てて身体も洗った。

 お湯で洗い流したら石鹸の泡がついたタオルをすすいだりして後片付けをする。そうしたら浴槽の近くに行き、洗面器にお湯を汲む。二、三回そうしたら浴槽に入った。


「あー。いいお湯だわ」


 おっちゃんみたいな言葉が出たが。本当にそう思った。遅れて月華様も入ってきた。


「……ふう」


 良いお湯だと思ったのか月華様も笑顔で息をつく。あたしは隣でお湯に浸かる月華様に話しかける。


「月華さん。今日は緊張しますね」


「そうね。けど。頑張りましょう」


「うん!」


 頷くと月華様はあたしの頭を撫でた。外見年齢は変わらないが。実年齢は何倍も生きているからか月華様はあたしを子供扱いする。まあ、不思議と嫌じゃないけど。しばらくはたわいない事を話したのだった。

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