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二話

  翌日、あたしは月華様と陽一兄ちゃん、嵐月様の4名で近所のお寺にお参りしていた。


  あたしは弓を持って陽一兄ちゃんも片手剣を鞘に収めた上でカバーに入れている。弓はあたしのズボンのポケットに片手剣は兄ちゃんが肩から()げていた。


「……優花。今日は住職さんから依頼があってな。寺の本堂に幽霊が出るから退治してくれだって。だからお給料も出るぞ」


「やった。母さんから半分くらいもらえたら。ケーキ屋さんのプリンが買える!」


「お前なあ。今は仕事に集中しろ」


  陽一兄ちゃんはそう言ってあたしの頭を軽く小突く。「ごめん」と謝るが。兄ちゃんはちょっと不機嫌そうだ。


「陽一。女性にはもうちょっと手加減してやれ」


「いーんだよ。優花は頑丈だから」


  嵐月様が兄ちゃんを窘める。嵐月様は綺麗なまっすぐの金色の髪に琥珀の瞳のクールビューティーな美男子だ。もう神々しいといえる。性格はちょっと冷たく見えるが優しい神様だ。隣には妹さんであたしの守護龍である月華様がいた。まっすぐの銀色の髪に淡い綺麗な翡翠色の瞳の超がつく美少女の神様だ。


「……優花さん。大丈夫?」


「うん。大丈夫です」


  あたしが答えると月華様は苦笑していた。ちなみに嵐月様も月華様も普段のチャイナ服ではなく現代の洋服だ。嵐月様は黒のジャンパーにグレーのズボン、スニーカーという出で立ちだった。髪は後ろで一つに束ねている。月華様も深みのある藍色のコートに青のロングスカート、ショートブーツという出で立ちだ。二人とも日本人離れした外見だからかモデルさんみたい。陽一兄ちゃんもグレーのジャンパーにジーンズにスニーカーであるが。やっぱり雰囲気負けしている。あたしもだ。服は普段通りのオレンジのジャンパーにジーンズ、スニーカーという格好だった。まあ、皆も動きやすさ重視だからこの格好にしている。


「月華様。今日はお寺に泊まり込むんですよね?」


「そのようね。陽一さんの話だと本堂に泊まらせてもらうと聞いたわ」


「……成る程。それで着替えとか用意しろと言われたわけだ」


  納得していると嵐月様があたしの方を見た。ちょっと困ったような表情だ。


「……優花。陽一はいいとして。君は女性だしな。私と一緒の部屋でも大丈夫か?」


「え。今更ですよ。嵐月様」


「それでも着替える時や風呂の時は言ってくれ。私は陽一と外にいるから」


「……はあ。ありがとうございます」


「じゃあ。これで交渉は成立だな。月華となるべく一緒にいておくれ。その方が安全だからな」


  頷くと嵐月様はあたしの近くに来た。ポンと肩に手を置かれた。ひんやりとした体温が伝わってくる。


「……今日はよろしく頼む」


「わかりました」


  嵐月様は肩から手を離す。4人でお寺の住職さん宅に向かったのだった。


  寒い中ではあったが。天気は晴れて気持ちが良い。住職さん宅の玄関先で呼び鈴を押した。ピンポンと鳴り人が出てきてくれる。


「……はーい」


  ガラッと引き戸を開けたのは女性だ。年齢は五十代といったところか。にっこりと笑ってあたしの方を見た。


「……あの。こちらは横野 善正さんのお宅でしょうか?」


「ええ。そうですけど」


「僕は光村 陽一といいます。今回、横野さんのご依頼で来ました。本堂の件なのですが」


「……ああ。うちの主人から聞いています。あなたが光村さんなの」


「はい。右側にいるのが妹で優花といいます。左側の方が唐 嵐月さんと妹さんの月華さんです。中国の方々なんですが。一緒に退治屋をやらせてもらっています」


  すらすらと陽一兄ちゃんが説明する。母さんや父さんと話し合い、嵐月様と月華様は中国人であたし達の同僚ということにした。二人もこれには同意済みだ。一応、説明はしてある。


「あら。そうなんですか。今、主人はお墓の手入れに行っていましてね。もうちょっとしたら戻ると思うんですけど」


「構いませんよ。また、連絡をさせていただきます」


「……でも。今の時期は寒いでしょ。外で待つのも何だから。中で待っていただいても構いませんよ」


「……すみません。そうさせていただいてもいいでしょうか」


「ええ。ではどうぞ」


  女性--奥さんは陽一兄ちゃんやあたし達を家の中に入れてくれた。客間に通されて奥さんは4人分のお茶やお菓子を用意するために台所に行く。あたしは暖かい室内に入れたのでほうと息をついた。


「……月華さん。奥さんが納得してくださって良かったですね」


「本当ね。疑われたらどうしようかと思ったわ」


「でもまあ。本当の事は言えないし」


「そうね。せっかく優花さんの服を借りたのだから。有効活用できなかったら嫌だしね」


「まあ。言えてますね」


  2人で雑談していたら奥さんがお盆に緑茶とお饅頭を4つ乗せて持ってきてくれた。蓋付きで驚く。さすがにお寺だ。


「……ごめんなさいね。主人が帰ってくるまでお茶でも飲んで待っていてくださいねえ」


「……すみません」


「謝らなくてもいいわよ。主人から話は聞いていますから」


  ニコニコと奥さんは笑う。しばらくはお茶を飲みながらお話をさせてもらったのだった。


  その後、20分ほどしてご主人で住職さんの横野 善正さんが帰ってきた。髪を剃って青い作務衣を着た穏やかそうなお坊さんだ。奥さんと同年代くらいだろうか。


「……ああ。すみませんね。あなたが光村さんですか?」


「はい。ご依頼を頂いたので来ました」


  言うと善正さんは困り顔でふうとため息をついた。そして説明を始めたのだった。


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