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17.銀級昇格

最終話です。

金熊討伐から一月経った。

わたしは上下赤熊装備になり、見た目だけは銅級卒業した。

ケンは、角兎の上衣に赤熊のズボン。

2人で赤熊1匹しか用意できなかったんだろうと思われている。


ケンの上衣を作るつもりで鞣してもらった赤熊革で、靴を作ってもらった。

靴屋は武器屋とは別にあった。

靴はそんなに長く保たないから、良い素材で具足を別に作ると良いだろうとガイさんに言われて短靴にした。

ちゃんとした靴はやはりいい。


具足には、蟲の甲殻がいいらしい。

蟻とか蜘蛛とか。

でもこの辺にはいないそうだ。


金熊探して森の奥に入ることはもうしていない。

あの1匹で作る装備でさしあたって十分だ。


牙猪を売ろうと冒険者協会に行ったら、ケイさんに声を掛けられた。


「お二人にお話しがあります。今時間ありますか」

「なんだろ?」

「はい。大丈夫です」


「お二人は、銀級に昇格です」

「え。何か早いね」

「腕前は言うまでもないことですが、お二人は、町での評判がとても良いのです」

「へー?」

「孤児院のお世話をしていると聞いています」

「うーん。ありがとうございます」


(お世話されているのはこっちで、そのお礼に肉を提供しているだけなんだけどなー。…言わないけど)


「こちらが銀級の冒険者証です。銅級のと交換になります」

「じゃあ、これ」


指にはめていた青銅の指輪を外して渡した。

銀色の指輪を受け取る。

内側に彫られた名前と生年を確認してからはめた。


脚なしの牙猪を売って外に出た。


「これからどうしますか」

「特に思い付かないから、ハナが独り立ちするまでここにいようかな」

「すると、少なくとも今年はここにいるということですね」

「うん。ケンはどうする?」

「では、一度家に帰って報告してきます」

「あー。じゃあ、負担じゃなければ、アンガミ領ピノ村に、手紙届けてもらえないかな」


手紙は、冒険者協会間は月2回集荷の定期配達網が一応あって、国内なら銀貨1枚で届く。

そして、最寄りの冒険者協会から依頼を出して各家に届けられる。

そんな訳で、銀貨2枚出せば国内なら大体の家に届けられる。

黒狼2匹分くらい。

あるいはパン200人日分。

あの村で、そんなお金出せる家はない。


「はい。街道から少し入るだけですから良いですよ」

「ありがとう」


ケンには、普通に手紙出すのと同様の銀貨2枚を渡そうと思う。


「半年は掛からずに戻るつもりですが、ここを長く離れる時は、行き先を伝えていってください」

「わかった」


孤児院でエリさんに今後の予定を伝えた。


「では、少し相談したいことがあります。よろしいでしょうか」

「はい」

「ハナが、攻撃魔法をもし修得できたら、1人で冒険者できるでしょうか」

「はい。できると思います」

「ハナが、お湯を出せることをこっそり教えてくれました。

 魔法の素質があり、また、何を秘匿すべきか判断できます。ハナに、魔法の手ほどきをお願いできないでしょうか」

「いいですよ。わたしはのんびり狩りをするつもりでしたし」

「ありがとうございます」


「エリさんは、魔法を教わらなくて良いのですか?」

「……では、ハナが教わったことを、ハナから聞いても良いでしょうか」

「はい。大丈夫です」

「ありがとうございます。

 私はあまりここを空けられないので、ハナに教わります」

「お察しかとは思いますが、わたしの魔法はここらの常識とは違うので、内緒にお願いします」

「わかりました」


ハナのところに行って聞いてみた。


「ハナは、冒険者になって将来何したい?」

「温泉地に行ってみたい気はありましたが、おかげさまで毎日お風呂に入れるようになったので、それはもういいです」

「うん」

「見習い神官になって、エリ姉さんと交代で旅に出られたらな、と思います」

「エリさんって、旅したがってるの?」

「聞いたことはなくて、わたしが勝手に思っているだけです。

 でもそうしなければエリ姉さんは、文字通り死ぬまでここを離れないでしょう。前の神官様がそうしたように」

「なるほど。エリさんと話してみよう」


ハナと2人でエリさんのところに行って話した。

エリさんはじっと考えてから言った。


「ありがとう、ハナ。何年か、ハナの言葉に甘えましょう。でも将来的には、ハナはここを離れて大丈夫ですからね」

「ありがとう、エリ姉さん」

「では、ハナの神官着を用意しますね。神官になるのに必要なのは、資格ではなくて町の人の信任ですから」


エリさんは、傷んだ神官着を詰めてハナ用にしてくれた。

ハナは、膝下丈の神官着に、わたしのお下がりの角兎のズボンと短槍で冒険者になった。

町中では常に神官着を見せてアピールしている。

森の中では、その上から黒狼の尻当てを着けている。

座っても神官着が傷まないように。


そんな中、ケンは金熊の外套を着て故郷に向けて旅立った。

…金熊装備は見るからに凄い。


わたしは金熊のケープに、笹穂な短槍。

ハナの師匠として、見るからに銀級な格好をあえてしている。

一応筋力も付いたので、これくらいの槍も振り回せる。


ハナが森に入るのは週1なので、それ以外は1人で赤熊とか牙猪を1匹狩ってのんびりしている。

黒狼はおびき寄せたりはせずに、襲ってくるのだけ狩っている。

たまにエリさんを連れ出して角兎や茶熊を狩る。


このペースでも、ハナは半年掛からずに銀級になれるだろう。

魔力操作の練習はどこででもできるので、石魔法は既に習得している。

実地訓練は週1で十分だ。

その頃にはケンも戻ってくるので、3人で蟲を狩りに黒森行くのもいいかもしれない。

まあ、2人でもいいけど。

それで、ハナに教えることはなくなるだろう。


ハナが卒業の時には鞄を贈ろう。

ハナはソロだから、1級だな。

ここは師匠としての見栄だ。

中古なら赤熊7匹分だから大したことない。

のんびり遠出して赤熊狩りを楽しむことにした。


(おわり)

最後までお付き合いくださりありがとうございます。

最後の2話は話が降りてこず、一月くらい寝かせてました。

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