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閃き輝く異世界無敵語り  作者: 横山剛衛門
「勝利の女神の塔」編
8/16

3.危機との遭遇

 次の階は、これまで進んできた階とはまるで様子が違った。

 まず、階段を登りきった途端に魔物が群れをなして襲ってきた。まるで来るのを分かっていて、待ち構えていたみたいに。

 一匹一匹の強さも下の階とは桁違いで、他所では見たことのない奇怪な種族だった。

 なんとか片付けた後、経験豊富なヴィエイラが語ったところによれば、ナックラヴィーという水妖だそうだ。

 それから進んでいった先々で、首なし騎士の亡霊デュラハン、大型の鬼オーガ、残忍な小人レッドキャップといった、極めて危険な攻撃力を持つ魔物ばかりが出没した。

 とはいえ、俺はここでもやはりほぼ戦闘に参加せずだったので、消耗は俺以外の三人に積もっている。

 幸いと言うべきか罠や奇襲はほとんどなく、そこでも俺の出番はなかったため、ついにアメリアの堪忍袋の緒が切れた。


「お、お前……そろそろ、手を貸したら、どうなんだ」


 今まさにオーガとの戦闘を終え、息も絶え絶えのアメリアが俺にそう言ってきた。

 気持ちは分からんでもないが、俺にもおいそれと参加したくない理由がちゃんとあるのだ。


「これだけは言っとくが、単にサボってるわけじゃないんだ。みんなまだ余力はあるだろ、がんばってくれ」


 俺はそう言ってすげなく断るも、そう簡単に引き下がるアメリアではない。


「今さらお前の実力を疑っているわけではない。だからこそ、ちゃんと力を貸せと言っているのだ。理由があるというのなら、それを説明してみろ」


「あー、それも答えはノーだ。俺としてもなかなか難しい問題でな……いや、理由自体は簡単だ。俺が戦闘に参加すると、ここの攻略が失敗に終わる可能性がある」


 まあ、これだけ言われても何のことか分からないだろう。案の定、アメリアはなおも食ってかかってくる。


「そんな訳があるか、もっと分かるように言え! それともその剣は飾りか? そうだ、魔法は大したものかもしれないが、あんな曲芸まがいの技を見ただけでは、本当の剣技のほどは分からないものな!」


 曲芸とは、ギルドの修練場で行った最初の試験の時の話か。確かに、あれと実戦の技は違うと思うのも無理はない。

 実戦で役立つ技といえば、質実剛健で泥臭いものに限るという考えは根深いからな。


「俺は、こいつは剣の腕も相当なもんなはずだと思ってるけどな。しかし、ここで話してたってラチはあかねえ。次に魔物が出たら、ちょっと戦ってみりゃいいんじゃねえか」


 ヴィエイラの提案に、ホンダも無言で頷いている。三対一の劣勢じゃどうしようもない。が、俺としても、少なくともこんな所で剣を抜く訳にはいかない。

 結局、俺は魔術での援護で参加するという折衷案で、納得してもらったのだった。


 ***


「ヴィエイラ、『火の力』行くぞ」


 デュラハンの群れにめがけて突進していったヴィエイラに、赤魔術をかけてやる。

 即座に効果が現れ、ヴィエイラの攻撃力は大きく跳ね上がった。その結果、凄まじいタフネスを誇る重鎧姿のデュラハンを、たった一撃で派手に吹き飛ばしている。

 続いて、ホンダが斬りかかったレッドキャップに向けて青魔術『反対呪文』を唱え、発動寸前だった魔術を阻止する。打つ手を失った上に隙だらけの姿を晒すレッドキャップは、そのままなす術なくホンダに斬り捨てられた。

 最後に残ったオーガが、破れかぶれに突撃してくる。俺は緑魔術の『迷霧』を張って迷わせることでそれを防ぎ、同時に、アメリアが引き絞った弓に黒魔術『猛毒の息』を吹きかけた。

 放たれた矢はオーガの頭に突き刺さり、即座に全身を巡った毒が、生命力の強さでならすこの魔物に速やかな死をもたらした。


「終わったな。誰も怪我してないか? 『治癒の光』をかけてやるぞ」


 そう声をかけるも、幸い誰も一人かすり傷すら負っておらず、この戦いは俺達の完全な勝利で終わった。


「いやー、楽チンだな! あれだけ抜群のタイミングでフォローしてもらえるとありがたいぜ」


「まったく、最初からこうしていればよかったものを」


「……見事」


 ヴィエイラ、アメリア、ホンダがそれぞれ労ってくる。約一名の言葉は、労いと言えるか分からないが。

 しばらく進んできたところ、この階での戦闘も無難に勝てるようになってきた。三人は俺のフォローのおかげと考えているようだが、単純にこいつらが慣れてきたのも大きい。

 特に、ヴィエイラの戦いぶりは頭一つ抜けていた。こいつの実力は冒険者ライセンス的にも今のB級、俗に一流プロフェッショナルと呼ばれるランクの範疇を超えて、その上のA級、超一流ワールドクラスのはずのアメリアを凌駕する活躍を見せている。

 さすがは、伝説級レジェンドと呼ばれるS級まで上り詰めた魔人・カルロスの"後継者"といったところか。

 ホンダもムラこそあるものの、そんなヴィエイラによくついていっている。

 これならじきに例の槍も見つかるだろうーーそんなことを考えていた俺の警戒網に、これまでにないほどの危険を訴える感覚が届いた。


 この反応……⁉︎ まさか、こんなところで……?


「どうした、また魔物か⁉︎」


 俺の表情から状況を察知したのか、アメリアが小さく叫ぶ。

 そのアメリアの体を、俺は両腕で抱きかかえ、思いっ切り横に跳んだ。


「な、何をする!」


 真っ赤になって焦るアメリアだが、さっきまで自分が立っていたところに槍が突き刺さる甲高い音を聞くと、今度はその顔を真っ青にする。


「お、お、惜しい! も、もうちょっとでブ、ブチ抜けたぜ」


 通路の遥か遠くから槍を投げつけてきたのは、長身のモヒカン男だった。黒肌の上半身には何も身に着けておらず、強靭で無駄のない筋肉を見せつけている。


「おい何しやがる、この"悪童"が! 噂通りのアブねえ奴だな」


 激しい怒りを含んだ声でヴィエイラが叫ぶ。そうか、こいつが"悪童"マリオか。

 冒険者随一のトラブルメーカーながら、とんでもない身体能力を生かした圧倒的な戦闘力でA級にまで駆け上った危険な男。

 その後ろには、マリオに負けず劣らずのプレッシャーを放ってくる剣士がいる。

 おそらくは、マリオと同じクラン「火と死」に所属し、"狂犬"の二つ名で知られるジェンナーロだ。


「お前ら、どういうつもりだ?」


「どうもこうもなかろう。今のは警告だ。聖杯は俺達が手に入れる。邪魔者には容赦はしない」


 俺の問いかけに答えたジェンナーロの横には、さらに"問題児"マルコと"虎"カリムの姿もある。こいつらもこの塔の攻略に来ていたのか。

 それにしても、とんでもないパーティだな。四人が四人とも、悪い意味で名の売れた凄腕のA級冒険者とは、始末が悪い。

 今のマリオの行為にしても、はっきり言って正気とは思えない。というのも、こんなに殺伐とした世界ながら、一般的に殺人は最大級の禁忌とされているからだ。

 しかし、その理由は地球とは大きく違う価値観からなのだが、それについては置いておこう。

 とにかく、もし殺人を犯そうものなら、表世界で生きていくことは不可能となる。捕まって死ぬまで牢獄に入れられるか、上手く官吏の手から逃れたとしても、どこかにあるというご同輩が集まる暗黒街しか行き場がない。

 こいつらはそっち側の限りなくギリギリまで片足を突っ込んでいる性格とはいえ、まだ一応は世間的な体面を保っていたはず。

 それに、マリオとジェンナーロ以外は別々のクラン所属のはずなので、こんな奴らが一時的に手を組んだとなると、何か事情があるようだ。


「そ、そ、そうだ。せ、聖杯はお、俺達が手に入れる。わ、わ、我らが"悪王"エリック様のご命令だ」


「おい! 余計なことを言うな!」


 マリオの奴、マルコに叱られてやがる。

 だが、そういうことか。こんな奴らが一緒にいるなんてあり得ない状況にも、今のマリオの説明があれば納得がいく。


「知るか、エリックにはこう伝えとけ。『自分達の実力では塔の頂上に辿り着くこともできませんでした』ってな」


「お、おい、挑発するな」


 あっちはA級が四人と見てアメリアはそう言うが、あんな風に手を出されて黙ってられるか。ヴィエイラも斧を振り上げて、やる気満々のようだし。


「それが遺言か? エリック様には確かに伝えておこう」


 拳を構えたカリムのこの言葉によって、開戦の口火が切って落とされたのだった。

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