2-3
ガルフラウはリオの体調不良に過敏に反応するようになった。彼女が流行り病で死にかけたことがよほどこたえたらしい。
咳のひとつ、くしゃみのひとつでもしようものなら、飛び上がって「熱は!?」「寒気は!?」とうるさく構った。
リオもこればっかりは毒気を抜かれて普通に「何でもありません」と答えてしまう。
何日も寝込んでいた間、彼が自分の看病に明け暮れていたことを知っている。
熱が下がってから、最初に目が覚めた時は、自分の部屋に彼がいることに驚きすぎてタマシイが抜けそうになった。熱にうかされていた間の記憶ははっきりせず、どうしてここに!?と焦りまくった。
よく見たら、アンタこそ病気なんじゃ!?ってくらい酷いカオで、ますます意味がわからなかった。よかった、と抱きついてきた彼が鼻をすすって泣いているのに気づいた時は、混乱して思考を放棄してしまった。
後になって、途中から彼にぜんぶ世話を任せてた、と師匠に聞かされた時には、ざーっと血の気が引いて、またベッドに逆戻りになりそうだった。
ほんとに師匠は酷薄なお方である。便利だから彼を使ったんだろうけど、少しは自分の気にもなってほしかった。
気まずいなんてものじゃなかった。全身の毛穴から何か出てきそうだった。
でもとりあえず、高熱出して意識も飛んで何をされても抵抗できなかっただろう自分に、あやしいことはしなかったようだ。
もちろん普通しないものだが、うっかりでもなく襲ってきて腕を斬られることになったほど見境のない相手なのだ。リオにすれば疑念も湧く。
しかし何事もなく、回復期になっても、妙な手出しはなかった。とっても普通に、果物とかお粥とかを出され、薬を渡されるだけだった。
その辺りのことを契機に、ガルフラウは前ほどイライラと周りにつっかかりまくることがなくなった。
なんとなくガードが下がる。
周りに被害があるからこそ、リオもやたらに殺気立っていたのだ。改心して大人しくなられると、振り上げた拳の行き先がなくなる。
それに病み上がりで体力も落ちていた。
疲れていて、声を荒げる気力もなくて、へらへらとかわしていたら、ガルフラウがふと「なぁあ」と甘えるような声を出した。リオは感心もしなかったが、手酷い拒絶もしなかった。
気をよくした彼はそれから「なあなあ」言って彼女に取り入るようになった。そこから学習して、他の人間にも強硬さの薄れた態度で接するようになって、時にはうまいことリオが居る仕事にもぐり込んでくるようになった。
え、なにそれ、と彼女が警戒心を取り戻したときには、ガルフラウはちゃっかり世間で「リオの犬」の立ち位置を確立していた。まぁまぁ躾の悪くない飼い犬って感じで。マジで「え、なにそれ」である。
そこいらヘンで、リオはいきなり或ることに思い当たった。せいてんのへきれき的に。
……フラウって、もしかして、わたしより年下なんじゃ……?
何だかえらいショックで誰にも確かめられなかった。
そのままの日常が続けば、いずれ彼女がほだされることもあったろうか?
しかし、そんなことになったら、誰もが思うだろう。
それだったら、最初っから受け入れていれば、ガルフラウも腕なんか失くさずに済んだのに、と。
リオだって思う。
そんな罪悪感を背負って色恋沙汰に及ぶことはまずあり得なかった。
どんなに反省したって、懇願したって、取り返しのつかないことはどうしてもある。
ガルフラウは斑紋つきの〈色狂い〉として報われないまま生きるしかなかった。
裁きは下っていたのだから。
それが幸せか不幸せかは、本人の決めることだった。
これで終わりです。ぶったぎりすみません。
エ○パートへ続く時間軸まで書いた・・・という感じです。
あと、一応、先のリオ視点で書いた分では投げっぱだった分、
ストーリーにかかわりそうな部分は回収しました。はず。たぶん。
「ここんとこどうなってんの?」ツッコミあったらヨロシクでござるます。
※ご案内※
続きは「ムーンライトノベルズ」にて公開してます。
18歳以上むにゃむにゃ……になるのでURLは載せません。
「宇佐田」か「魔術師になったなら」で検索してください。
という追記を2013年8月にしてる・・・だと・・・(゜д゜;)
正直イマサラすぎて意味があるとも思えないけど
ケツのすわりが悪いんで一応追記しました(= =;