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吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記(仮)  作者: こぺっと
プロローグ 吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記
7/100

007 ニコさんと氷海火山

2022/08/26 諸々修正しました。ストーリーに大きな影響はありません。


今回は再びコボルトがジュルジュルされます。必要とあらば脳内モザイクをご用意くださいませ。


2022/08/28 ↑を何故かあとがきに書いていたため、まえがきに移動しました。本文に変更はありません。

 五層をタイムアタック気分で駆け抜けた私はなんとか無事に六層へと辿り着いた。


 五層では私の存在が火元にならないか心配したけど、六層は火事の心配もいらないし、環境破壊には気を使わなくてすみそうだわ。だって、最初からぶっ壊れているもの。


 四層からはホント地形の変化が本当に著しい。霧の森にベースボールジャングル。そしてここは氷海火山。

 先の二か所はまだわかる。でも、氷海火山って何よそれ!まだ足を踏み入れたばかりだけど、まともじゃないわよこんなところ!物理法則も無視してるじゃないの!

 目の前に広がるのは部分的に凍っているマグマの海というか池というかや雪の積もった火山とか。暑いと寒いが仲良しこよし、お手々つないでランデブー。一体全体どうなってるの?

 空は雪雲と雷雲がまだらに染め上げている。時折生まれる雷がこのクレイジーな景色を轟音と共に引き裂いていて、時折グラグラと大地が揺れて、火山が黒煙上げて噴火する。なんていうか、世界の終わり感が凄いわ。

 ちなみに通路はある。人間なら三人くらいは横に並べるかしら。そんな道がマグマの海に走る亀裂のよろしく存在しているわ。魔界や地獄なんて言葉がしっくりくるかしら。


 幸いだったのは私が火喰蝙蝠ということで、寒いならともかく暑いなら耐えられる。

 降っているのも雨ならともかく雪なので、きっと私は大丈夫。多分大丈夫。っていうか私は濡れるとどうなるのかしら?……ああ、なんかぐったりするらしい。


 それはともかくこの階層、実はマヤの木という木があるらしい。

 マヤの木の実は神秘の力を見抜く目を授けるとされていて、ありていに言えばマヤの木の実を食べると魔素とか魔力とかそういったものが見えるようになるってことね。

 マヤの木はこの六層のどこかにあるらしいのだけど、こんな狂った環境のどこに木が生えているというのかしら。まぁ、狂った環境だからこそ、どこにあっても驚かないというのはあるけれど。

 でも、パッと見渡す限りは見当たらないのよねぇ。


 マヤの木を探してパタパタと飛んでいると、不意にマグマの海から巨大な生き物が顔を出した。

 一目見て理解する。こいつはヤバい。絶対ヤバい。さすがはダンジョン、階層が進むにつれて危険度も増すのね!?五層も大概だったけど、それでもドラゴンはいなかった!


 そう、マグマの海から顔を出したのはカオスドラゴン。魔法を通さない黒褐色の鱗は物理的な衝撃にも耐性があり、生半可な攻撃は意味を失う。

 防御力もさることながら、攻撃力もヤバいらしい。魔法がまともに効かないくせに魔法を使う上、その魔法は災害レベルの被害をもたらす。悪魔みたいな存在ね。


 そんなドラゴンが何故マグマから出てきたのか?それは私を食べるため?いいえ、どうやら違うみたい。

 ドラゴンの視線の先を追えば、そこには上の階層――洞窟で出会った二人組みの人間がいたわ。え?あの二人ここまで来てたの?


「あ、見て?ドラゴン。超カワウィくない?」

「よし、ちょっと殴ってみよう」

「ウィ」


 二人の人間――ブーメランパンツの男とローブの男なのだけど、ブーメランパンツの男はドラゴンに向かってウィンクすると、地面にクレーターを作りながら飛び出した。もちろんドラゴンに向かって。

 弾丸みたいな勢いで飛び出したブーメランパンツの男はドラゴンの横っ面をブッ叩き、ドラゴンの頭を大きく揺らせた。嘘でしょう?

 ローブの男はそれを見てケタケタと笑っている。なるほど、知ってたけど絶対に関わっちゃだめねー。見なかったことにしましょうねー。

 私はその場から逃げるように飛んだわ。



 それにしても、この階層は不思議な生き物が多いわ。マグマの池で泳ぐ氷を吐くナマズとか一体どういう了見なのかしら?

 ナマズに関してはちょっと食べてみたいけど、いくら火喰蝙蝠でもマグマは多分ダメよね。わからないけど、さすがに試してみようとは思わないし。


 ああ、でもそろそろお腹が空いてきたわ。

 五層では焦げたキノコくらいしか食べてないし、何か私でも確保できる食料はないかしら。


 私がフラフラと飛びながらキョロキョロと辺りに注意してみると、どこかで聞いたような声が聞こえてきた。


「モッテケ、モッテケ」


 あらおかしい、今度はオイテケじゃないのね。


 声の主は霧の森で出会ったコボルトによく似ている生き物だった。どうやらカオスコボルトというらしい。ちなみに霧の森にいたやつらはウィークコボルトというみたい。

 カオスコボルトもウィークコボルトと同じでスリーマンセルで活動している。みんな氷の棍棒で武装しているけど、アレは溶けないのかしら?


 カオスコボルトはどんな環境でも生きていける図太さはあるけど、そこまで強い魔物でもないらしい。一匹になればちょっと齧るくらいなんとかなるかもしれない。


 私は少し考える。さて、どうにかしてアレに勝てないかしら?でも、三匹でいられるとちょっと厳しいわね。

 何かチャンスは来ないものか。そう思って彼らの上空をパタパタを飛んでいると、マグマの海から突き出た尖った氷塊がトプンと沈んだ。

 何事?と思った次の瞬間、そこから巨大なサメが飛び出して、コボルトを一匹丸のみにしてしまった。ちなみに氷塊に見えていたのはサメの鼻先でした。なるほど、あれは近づいたらダメなのね。


 なにはともあれ残された二匹は「アアアアアアア」とか情けない声を上げながら散り散りに逃げっていった。これはまたとない機会だわ。私はそのうちの一匹を追いかけることにした。


 私がロックオンしたコボルトは、通路にある岩場の陰に隠れ、そこで体を休めるようね。

 ふふ、そうはいかないわよ。


 私は油断したコボルトを強襲した。上空から急降下しながらの衝撃波なのよ。

 私が放った衝撃波の直撃を受けたコボルトはあっさりと気絶してくれた。


 ふふっふー。これで空腹を満たせるわ。私はコボルトの首筋に牙をズブリと突き刺した。ああ、久しぶりの生き血、干からびるまで吸ってあげる。


 コボルトの血をすべて飲み尽くすと、私はそういえばと魔石の存在を思い出す。六層の魔物の魔石を喰らえる機会、次はいつ巡ってくるかもわからないし、魔石を喰らえば強くなる。この機会は逃しちゃいけないわね。

 私はコボルトの胸のあたりを執拗にほじくり返すと……、って随分スプラッタな描写になっちゃうけど、それはともかく魔石を体内から取り出した。


 カオスコボルトの魔石は七色に輝く魔石だった。見る角度によって様々な色に見えて綺麗だわ。

 私が倒せてしまうほどの魔物ではあるけれど、過酷な環境に適応するために魔力は非常に豊富なよう。あらゆる属性に対応しているというのはカオスドラゴンにも通じるわ。これは期待していいかしら。


 私は辺りに他の生き物の気配がないことを入念に確認すると、スーハーと深呼吸した。

 これを食べるとどうなっちゃうかしら。ちょっと興奮しちゃうわね。


 私はもう一度周りに危険がないことを確認すると、魔石を一口で飲み込んだ。すると、かつてないほどの熱が全身を焦がす。何が何だかわからないほど荒れ狂う力が私の全身を駆け巡ったのよ。


 私はその衝撃に耐えられなかった。

 あ、ダメ。そう思った瞬間に、私の意識はフツリと途切れた。

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