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吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記(仮)  作者: こぺっと
プロローグ 吸血蝙蝠ニコさんのダンジョン攻略記
8/100

008 ニコさんはギリギリ蝙蝠

2022/08/28 諸々修正しました。全体のストーリーには大きな影響はありません。ないはずです多分。


そういえば、矛盾の実はマヤの木の実という名前がつきました。ギリギリ蝙蝠はベーリーバットではなくベアリーバットに変更です。

 ようやく力を取り戻した。


 さぁ、畏れよ人類。今に見ておれ、この私を陥れたこと後悔させてくれよう。

 手始めに、まずこの氷海火山なるわけのわからんところを、我好みの更地に変えてくれようぞ……。



 おはようございます皆様。ニコでございます。

 カオスコボルトの魔石を食べ、それによって溢れ出た力に耐えきれず気絶した私。どれくらい気絶していたのかはわからないけど、起きてみたら一人称を我にしちゃうなくらい全身に力が満ち満ちていて、ちょっとテンションが暴走しちゃったわ。


 いやぁ、魔石で気絶するなんて初めてだったかしら。さすが、凄かったわ。うふふふふ。


 今の私は火喰蝙蝠を卒業してベアリーバットって可愛らしい名前の種族になったの。ギリギリ蝙蝠なんですって。個人的にはギリギリアウトな蝙蝠だと思うの。だって、手に入れた力も強大で、景気づけに一発衝撃波を放ったら何か衝撃波じゃなくてレーザー砲みたいな感じの光が雲を貫いていったもの。

 今の私は多分蝙蝠型の移動砲台ってところかしら。ああ、今ならカオスコボルトくらいなら何の苦労もなく倒せそう。消し炭よ消し炭。

 でも、私にはコボルトを無駄にいじめている暇はない。それよりもやることがあるわ。そういえば私、マヤの木の実を探さないといけないの。


 今のところマヤの木らしいものは見つからないけれど、気絶から復活するときになんとなくマヤの木は海の中にあるのだと思った。これは多分、集合意識の情報ね。

 海と言うと灼熱の氷海、つまり目の前に広がっている流氷浮かぶマグマの海が思い当たる。もしかして、マグマの海の中にマヤの木があるということかしら。

 もしそうだとしたら、マヤの木の実を取りに行くのは無理ね!マグマの海に飛び込むのはギリギリじゃなくて、完全アウトだもの!

 でも、なんとなくもっと普通の海みたいな感じがしたので、マグマの海ではないのかも。

 さてとどうしたものかしら。


 私は何か手がかりがないものかと海の上を飛び回る。

 相変わらず空はまだらの雲に覆われていて、雪を降らせながら雷を光らせている。海の方はマグマがボコボコと音を立て、時折サメやらクジラ、ドラゴンやらが顔を出していた。

 あー、あのクジラ、潮じゃなくてマグマ噴くんだー。現実逃避気味にそんな光景を眺めていると、高速飛行するペンギンが向こうの空からやって来て、一斉にクジラに突撃していた。

 まるでダーツの矢のようね。ペンギンたちは体をまっすぐ伸ばして飛んで、嘴をクジラの体に突き刺していく。クジラは堪らず海に帰っていくけど、そんなことはお構いなし。一度浮上したが運の尽きとでも言わんばかりに、何匹ものペンギンがクジラの後を追って突貫してく。マグマの海もお構いなしよ。


 やがてクジラは力尽きたのか海の上にプカリと浮かんだ。ペンギンたちはクジラの巨体を囲んで各々好きに啄んでいる。いやぁ、怖いわぁ。何あのペンギン。

 でも、あのペンギンもマグマの海が平気なのね。普通に海中からひょこひょこと上がってくるもの。もしかして、ここのマグマって見掛け倒しなのかしら。もしかしたら熱めの温泉くらいの温度なの?

 実は私もいけるのでは?そう思って高度下げてみたものの……、騙されたわ、ただのマグマじゃない!めちゃくちゃ熱いじゃないばかぁ!




 それからしばらく、私はこの六層を散策した。休み休みだったから結構時間がかかったけど、もう大体のところはまわったのじゃないかしら。

 今いるのは氷海火山の一番奥。カオスクジラの骨の上で羽を休めているのだけれど、ここから見える景色はこの六層の中でもひときわ異色な光景なのよ。


 それは、崖を伝ってマグマが昇る様子。まるで滝が逆回しになったようで、しかも途中からマグマが水になっているの。いやぁ、何かしらこれ。

 私は少し気になったので、このマグマを辿ってみることにした。上へ上へ進んでいくの。


 雪雲の中はまるで霧の森みたいで、視界が全然なくなった。

 エコーロケーションを使って方向を確認しながら雲の中をグングン進む。しばらく上昇していくと、段々雲が薄くなってきて、少しずつ周りも薄ぼんやりと見えてきて、そのうち雲の切れ目が――。



 あれ?急に体が軽くなった?



 雲を抜けると私は急な加速と共に空に落ちはじめた私。今まで後ろに引っ張られてたのに、急に背中をドンッ!って押されたみたい。

 え、何!?そう思って上を向けば、頭上には青い海が広がっていた。私はそこに向かって落ちている。つまり、今の私は海に向かって急降下している!?なんで!?急に世界が変わったみたい!周囲に広がっているのは青い空と白い雲、頭上には日の光に煌めく海!一体全体何なのよ!?


 急加速した私はあっという間に落ちていき、混乱から立ち直ったのはかなり降下してからだった。


 辺りを見回してみると少し行ったところに島があるらしい。白い砂浜と森が見える。

 海は穏やかで波も少ない。私は島に向かって飛びながら徐々に高度を落としてみた。

 海の水はとても透き通っていて、海の中を泳ぐ魚が見える。普通の魚だ。


 ああ、普通って良いわね!私、凄く好きよ!


 島に近づくにつれて段々と水位も低くなり、自然と海の底の方も見えてくる。そこで私は海の中に背の低い木が生えていることに気付いた。それも一本ではなく何本も点在していた。まるで海の中に林があるみたい。

 普通、海の中には木は生えないのではないかしら。塩でやられちゃいそうだけど。そんなことを考えていると、その木々が私の探していたマヤの木であることに気付いた。


 こんなところにあったのね!マグマの中に飛び込まなくて、本当に良かったわ。


 ホッと一息つきながらも、私は恐る恐る海を足で蹴ってみた。

 ただの海に見せかけた危険な何かという可能性を考慮したけど、どうやらその心配はなさそうね。熱くもないし、冷たすぎもしない。そもそもで言えば、私はこの海が普通の海と変わりないことを知っている。


 火喰蝙蝠でなくなった今、水に濡れることも厭う必要がない。私は実をつけたマヤの木を見つけると、大きく息を吸って海中へと潜った。

 泳ぐことは問題なかった。水の中を飛ぶように進めばいいだけだわ。


 丸々と成ったマヤの実を一つだけもぎ取ると、私は一度海面を出る。

 体中の毛がすっかり水を吸ってしまい体が重いわ。しかも、マヤの実が重くて上手く飛べる気がしない。でも、島まではそう遠くない。私は頑張って泳ぐことにした。




 島はまさに南国といった感じだわ。ヤシの木的なサムシングに砂浜を歩く蟹、森の入り口にはハイビスカスみたいな赤い花が咲いている。

 私は熱くなった砂浜を避けるために木陰まで移動すると、しばらくその美しい景色と波の音に心を傾けた。


 さて、ようやく落ち着けるところに来たことだし、マヤの実を食べてしまいましょう。美味しいと良いのだけど。そう思いながら私はシャクリとマヤの実を齧る。

 ニャナの実は酸味と甘みが絶妙だったけど、マヤの実はとても甘かった。皮の部分は潮の味が染みてしょっぱかったけれど、果実の方はまるでよく熟れた桃のような甘さで、頬が落ちるかと思ったわ。

 しかも、その甘みが口とお腹から全身を駆け巡り、体中が甘い痺れに包まれていく。ああ、なにこれ超美味しいじゃない。全身に栄養が染みわたるぅ。


 マヤの実を食べ終わると、私は心地の良い疲労感と満足感に包まれて瞼が重くなってきた。

 ウトウトしていると、なんだか視界に綺麗な光が映り込むようになる。ぼんやりとしてきた思考の中で「ああ、これが魔素の光なのね」と思い、やがて私は意識を手放した。

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