002 ニコさんとゴブリンの石
2022/08/24 諸々修正しました。ストーリーに影響はありません。
前回に引き続き、今回はゴブリンさんがモグモグされます。苦手な人は要注意です。読み進める場合は脳内にモザイクをご用意ください。
地底湖はとても危ない場所でした。
まさかあんなにも大きなお魚が天井まで届く大ジャンプを見せるなんて思ってもみなかったわ。もしもあのお魚が私の方が美味しそうだと思ったなら、私は今頃お腹の中でしょうね。
私は冷や汗をかきながら次のお気に入りスポットを探しに洞窟の奥へと進む。すると普段はあまり見かけない生き物を見つけたわ。
それは緑色をした二本足の生き物。あれはそう、ゴブリンね?何やら三匹で固まって悪だくみでもしてるのかしら?ギャーギャーうるさい声だわ。
ちなみにゴブリンは私たちのコロニーを襲うこともある危険な奴らよ。でも、以前にみんなで噛みついたらすぐに逃げてしまったわ。
いざとなったら噛みついてやれ。そう思ったらちっとも怖くないものね。そう、今の私なら大丈夫!
そう考えた私はもう少し近づいて、彼らが何を話しているか聞いてみることにした。
「ギャーギャー!!」
「ギャー!」
「ウギャギャ!ギャー!!」
うふふ、何言ってるか全く分からないわ。なんだかとっても頭が悪そう!
私が「キーキー!」と笑うと、一匹のゴブリンが私の方を見て指さした。なにやら地団太を踏んで「ギャーギャー」と喚き散らしているわ。
「ギャギャ!ギャギャギャ!!」
「「ギャー!」」
あら、もしかして馬鹿にしているのがバレのかしら?こっちに石を投げて来たわ。
でも、最近調子がすこぶるよろしい私には、彼らのヘロヘロ投石などかすりもしない。ヒラヒラスルリと石を避け、ゴブリン目掛けて急降下。ガブリとひと噛みしてやった。
「ギャー!!」
「ギャギャ!?」
噛まれたゴブリンも見ていたゴブリンも大慌て。フン、蝙蝠だからって舐めないで欲しいわ。
私は仕返しされないうちにその場を逃げることにした。ああ、おかしい。ゴブリンたちの驚いた顔といったらなかったわね!
私が優越感に浸ってパタパタ洞窟を飛んでいると、今しがたゴブリンたちをからかった方から悲鳴が聞こえてきた。
「ギャー!!」って間抜けな悲鳴だったからきっとさっきのゴブリン達ね!一体何が起こったのかしら?
気になった私はこっそりと元来た道を戻ったのだけど、私が目にしたのは驚くべき光景だった。
そこにいたのはゴブリンが大きくなったような生き物で、なんだかゴテゴテ体に固そうなものを付けたヤツらだ。そいつらがさっきのゴブリンを真っ二つにしてた。
ああ、アレは人間ね。
前に一度見たことがある。シリーズ絶対に近づいちゃいけない生き物だわ。うん、あれは近づいたら駄目。絶対に駄目よ。
私がうんうんと頷き逃げ出そうとすると――。
「おい、あそこに蝙蝠がいるぞ?」
「あー、ほんとだ、カワウィー!」
「よし、焼いとくか」
何やら物騒な会話と火球が飛んできたわ!?
ちょっと、ふざけないでよ!本当に物騒な奴ら!いきなりなんてご挨拶?!
私は「キー!!」と一声抗議すると一目散に逃げだした。危うくプリチーな羽が焦げちゃうところだったじゃない!
「あ、逃げた」
「あー、ほんとだ、カワウィー!」
カワウィーならいきなり火球投げなくてもいいじゃない!カワウィーは正義でしょ!?
私はしばらく遠くで身を潜めた。でも、そこまで遠くには逃げなかった。
何故か?私には気になること、というかちょっとした期待があったから。
私は奴らの気配がそこからなくなったことを確かめると、ゴブリンたちが始末された場所まで戻った。
そこには予想通り捨て置かれたゴブリンたちの亡骸があり、思い通りのことに思わず「キーッキキ」と笑いが漏れる。
コレは私の食料だ。
食べれるときに食べておかないとここでは生きていけない。
ゴブリンたちを運ぶことは難しいから安全な場所で、というのは難しい。だから、他のハイエナが来る前に、少しだけ血をいただいたらすぐに退散いたしましょう。
真っ二つになったゴブリンの傍まで行くと、私はとても良いものを見つけた。芋虫のそれよりも少し大きな光る石だ。それは断ち切られたゴブリンの体からほんの少しだけ顔を覗かせていた。
私はひとしきり血をいただいてから、その石をゴブリンの体から一つだけ引き抜いて持っていくことにした。やっぱり全部持っていくのは難しいし、取り出すのも面倒だからね。
光る石を持った私がルンルンと少し浮かれた気分で飛んでいると、凄く嫌な奴に遭遇してしまった。そうよ、アイツ。コロニーをめちゃくちゃにしてくれた大蛇のアンチクショーよ。もう、そんなにギラついた目でこっちを見ないでよ!ああ、私としたことが、少し注意が散漫になっていたのかも。最高の気分が急降下ね。
とりあえず奴の届かない天井まで急いで逃げた私は、少し蛇を観察してみる。
ああ、やっぱり大きいわね。私なんかひとのみよ。
でも、なんだか奴はいつもと様子が違い、私を襲おうとするでもなく、ただこちらを睨みつけてシュルシュルと舌を出し入れしている。
しばらく睨み合いを続けていると、蛇が何やら私に話しかけてきた。
「シャー(おい、お前が持っているそれ、こっちによこしやがれ)」
「キーキー!(はぁ?何言ってるのよ!蝙蝠語で話しなさい!)」
「シャー!!(てめぇが持っててもしょうがねぇものさ。さぁ、俺によこしな。そうしたら見逃してやってもいいぞ?)」
「キー!(何言ってるのか分からないけど一昨日来なさいよ!アンタの顔を見るだけで気分が最低よ!)」
どうかしら、会話になっていたかしら。
お互いに言葉が通じないから好き勝手言わせてもらったけれど、私のか弱いハートはもうドッキドキ、さっさと逃げなきゃいけないわね!
私はひとしきり喚き立てたら蛇に捕まらないよう高い位置を飛んで逃げた。途中、焦りすぎて色々なところに体をぶつけながら洞窟内を逃げ回ったけど、何とか上手く撒けたみたい。
しばらく前に悔しそうな声が聞こえたから大丈夫よね!