~ 24 ~
屋敷の門の前にたどり着いたレイヴァンとブライトは微かに女性の悲鳴を聞いていた。
「レイヴァンの言うとおり、ここが悪魔の根城みたいだな。 小さかったが誰かの悲鳴も聞こえたし、急いだほうが良さそうだ」
ブライトが先に口を開くと、レイヴァンは屋敷を睨みながら声をかけた。
「酔っていないだろうな、ブライト」
「夜中にこれだけ走らされれば、酒も抜けるって! それにさっきまで寝てたから、体力も有り余ってるしな!」
「中がどうなっているのか、どんな悪魔が待ちかまえているのか、一切情報がない。 油断するなよ」
「解ってる」
「場合によっては見殺しにするからな」
「それは勘弁」
レイヴァンは一瞬微笑するが、すぐに気を引き締めた。
「行くぞ」
「了解!」
レイヴァンの合図で二人は屋敷内に向かって駆け出した。
彼らは門から堂々と屋敷に侵入すると、ひたすら奥を目指した。
その間、予想に反して悪魔が現れることはなかった。
「レイヴァン、やけに静かじゃねぇか?」
「静かならそれで良い」
レイヴァンは短く答えると走り続けた。
しばらくして再び屋外に出た。
今までの一本道とは違い、先に見える四方の壁にはいくつもの扉が見える。
二人は行き先が解らなくなり走る速度を緩め立ち止まった。
「でっかい屋敷だな、噴水までありやがる」
「中庭だな…… 目指すなら一番奥の扉が妥当か」
辺りを見渡しレイヴァンが進むべき道を探していると突然視界に黒い何かが入り込む。
彼が剣の柄に手をかけた次の瞬間、一匹の獣が鋭い牙を剥き出しにして飛び掛ってきた。
「さっきの魔犬か」
レイヴァンはすかさず剣を抜くと、飛び掛ってくる魔犬に向かって行く。
そして一気に剣を薙ぎ払った。
不気味な悲鳴と共に魔犬の胴体は二つに斬り裂かれ、不動の肉片となって地面に落ちた。