~ 22 ~
薄暗い部屋から抜けし階段を駆け上がると、視界には華やかな景色が広がった。
長い廊下には赤い絨毯が敷かれており、等間隔に煌びやかな花瓶や壺が置かれている。
それらに興味があるわけではないが、どれも高価な物だということは解る。
きっとどこかの城か屋敷に居ると推察したリルは出口を目指して再び走り出した。
しかし、廊下はあまりにも長く景色も変わらないで迷ってしまい、途中で何度も走るのを止める羽目になった。
ただ、辺りを見渡しても何かが解る訳ではなく、彼女は大好きな主人がこっちに居そうだという感覚を頼りに進み続けた。
リルは散々彷徨って屋外に出た。
やっと外に出られたと安堵の息を吐いたが、辺りを良く見渡すと未だ敷地内だということに気がついた。
遙か先には噴水もあり、かなり広い庭だ。
リルは早くご主人様の所に帰りたいです。
彼女はうなだれた後、再び駆け出そうとするが、前方には何かの気配があった。
目を凝らすと二つの眼がじっとこちらを睨んでいる。
首を傾げた瞬間、先に居る黒い塊は雄叫びを上げ物凄い勢いでこちらに向かってきた。
そこでようやく相手の姿をはっきりと捕えることができた。
「ニャァー!」
リルは目の前に現れた大きな獣に思わず声を上げた。
リルは、犬が大嫌いなんです〜!
慌てて進行方向を反転し一目散に逃げ出すと、魔犬は鋭い牙を剥き出しにして追いかけてくる。
彼女は全力で走り続け再び屋内の廊下へと入ると更に奥を目指し走り続けた。
そしてどこかの部屋へと飛び込んだところで、何かにぶつかった。
「フギャ!」
リルは小さく悲鳴をあげたところ、身体が宙に浮き上がる。
「おやおや、これは珍しいお客さんだ」
リルがぶつかった相手、それは先ほどの老人だった。